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就活生の親になってわかったこと

昨日、娘の入社式がありました。親としては感慨無量の日。尾頭付きの鯛でも用意して盛大に祝いたいところ。ですが、わが娘はお祝い事を嫌がるので、できるだけ波風をたてないよう、平常通りに過ごしました。 この日がくるのを夢見て、なんとか良い会社に就職できるよう、なんとか良い大学に入れるよう、なんとか良い高校(中高一貫)に入れるよう、幼いころからいろんな習い事させて才能を開花させてやろう、わたしもそんな親のひとりだったと思います。良い会社がどんなものか、捉え方は人それぞれですが、娘の場

    • かわいい子には旅をさせよ、とは言うけれど……

      娘を送りだしてしまった。 はじめての海外旅行、はじめての一人旅、はじめてのフリー旅行。 1週間前、彼女が「来週ヨーロッパに行ってくる」と言ったきた。 「そう、行っておいで」とわたしは答えた。 大学生の海外旅行なんて珍しくない。コロナもようやく収束したようだし、 バイトで貯めたお金で行くなら、ひきとめる理由はない、と判断したからだ。 「そうか、ヨーロッパかいいね。楽しみだね。誰と行くの?」 そう聞くと彼女の顔がくもった。まさかのまさか、だった。 まったくの一人旅だという

      • しなやかな強さ、ツバメみたいに。

        ほんまに無力感を覚えた。 人助けをするほど、良い人のつもりはないけど ほんまに良い子を助けられへんかった。 仕事の関係でひょんなことから知り合った彼女はシングルマザー。 10代で妊娠。高校中退して結婚。2人目の子がお腹にいるとき離婚した。 中卒、シングルマザーでどうやっていままで生きてきたんだろう 彼女が離婚してもう10年になるだろうか。 今は介護の仕事をしている。認知症の人たちを預かる施設で日曜日以外休みはない。給与が上がっても、子どもたちがいるから夜勤はしないと言

        • 三百六十五歩のマーチ

          「三百六十五歩のマーチ」という歌をご存じですか? 私の今週はこの歌そのものでした。 娘の大学受験は終わりました。手続き完了です。 彼女は高校受験のときに奇跡を起こしました。塾の先生に「ミラクル合格」と言われました。 そして、また奇跡が起きました。信じられなかったので、発表の翌日、速達が届くとすぐに手続きしました。夢から覚めないうちにさっさとすませておかなければ、と思ったからです。 これがGood Newsです。 Bad Newsもありました。 実弟が命にかかわる病にか

        就活生の親になってわかったこと

          受験生の親の朝

          大学入学共通テスト当日の朝。 いつもの時間に起きて、お弁当と朝食をつくる。 お弁当は見た目はいつもと同じだけど、いつもと違う。ぜったいにお腹を壊すことがないようにしなければ。 だから、普段は冷凍した材料をつかっているけど、できるだけ新鮮なものをもとめて、昨日買い出しにいった。リンゴとイチゴを買ってどっちを入れるか迷ったけど、お腹によさそうなリンゴにした。 朝から白米をたいて、その上におばあちゃんの手作りの梅干しをおいた。これもお腹が痛くならないように。 おやつは昨日ク

          受験生の親の朝

          青い想いと青い鳥

          青い想い 情熱 未来への希望と冷めない夢 一か八かの賭け ほてった頬 憧れ 怖いもの知らず 努力は報われる、という格言 期待と幻想 青臭い計画 青い鳥 気がつくと秋が過ぎ、冬になった。 春には芽吹いて 夏には青々と茂り 秋には実をつけ 冬には葉が落ち やがて…… 青い想い 青春1:何も知らないのに何でも知っている気でいた。 (いまもそうだけど、物理的には少しまし) 青春2:ここではないどこかにいけば幸せになれると思っていた。 (信じてたわけじゃないけど、漠然と思ってた)

          青い想いと青い鳥

          がんばりたくない君へ

          受験を控えた娘が「がんばれ」と言われたくないといった。「がんばれ」といったことはないと思うけど、きっと親は態度で示してるんだろね。 「がんばれ」とは言わないけど、 「もうちょっと志望校高くして見たら」とか、 「小さいころから歴史好きだったからまだまだいけるよ」とか、 きっとこういう言葉が「がんばれ」と自動翻訳されてるんだろね。 親というのはやっかいなものだと思う。 あんたの好きなようにすればいい、なんていっておきながら、 なんとか自分の理想の道に進ませようとしてる。 完

          がんばりたくない君へ

          食をまもるカギは多様性――絶滅の危機に瀕する食料をめぐる世界紀行

          おもしろい本を見つけた。 イギリス人のブロードキャスターでフードジャーナリストのDan Saladinoが書いた『Eating to Extinction』。 昔から食されてきた世界各地の食べ物や飲み物がこの世から次々と消えている。彼は、それをレッドリストの絶滅危惧種に指定された動植物になぞらえて「食の絶滅危惧」と表現する。 この本では穀物から野菜、肉、魚介類、果物、チーズ、お酒、飲み物、お菓子まで31の絶滅に瀕する食が取り上げられている。 それらはイタリア発祥のスローフード

          食をまもるカギは多様性――絶滅の危機に瀕する食料をめぐる世界紀行

          今日娘が成人した

          娘が今月二十歳の誕生日を迎える。そして今日が成人式。 今年二十歳になる人たちもまた、激動の歴史を経験してきた。 2001年9月11日 米国同時多発テロ――TV番組が突然ニュースにかわり、ワールドトレードセンタービルに飛行機が突っ込むのをライブで見た。わたしは慄き、彼女がいるお腹をさすりながら、この子の将来を案じて涙した。 2011年3月11日 東日本大震災――2分の1成人式(10歳)を迎える年、大地震、大津波、そして原発事故。社会が根本からひっくりかえる大参事に見舞われ

          今日娘が成人した

          『ホモ・デウス』を今朝読了。

          ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス――テクノロジーとサピエンスの未来』(*1)を今朝、読了。 世界的ベストセラーだけあって、書評はいくらでもあるので本の内容は割愛して、思ったことを書き留めておきたい。(内容を知りたいなら、本書の訳者あとがきが一番お薦め) 2018年刊行の本だけど、今読む意味は大きかった。このパンデミックのなかで、ますます「すべてのモノのインターネット(IoT)」に頼らざるを得なくなっているからだ。なのに、すでに当たり前になっているコンピュータ・テクノ

          『ホモ・デウス』を今朝読了。

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:モノとヒトの移動

          満月が西の港に沈む。凪いだ鏡のような海に黄色い月の光の橋が埠頭まで延びる。月明りに照らされたカモメたちの影が海面に浮かんでいる。 しーんと静かな街に響くのが、貨物列車の走る音だ。コミュニティに外からモノを運ぶ手段は、水素を燃料とする列車と船だ。水素は、水を電気分解して作られ、圧縮したり液化したりして貯蔵・運搬され、利用時には水しか排出しない。このコミュニティでは、電気は太陽光や風力などの自然エネルギーを利用しているので、水素を作るときも温室効果ガスを出さないですむ。 コミ

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:モノとヒトの移動

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:あらゆるものがぐるぐる回る

          中秋の名月。東の空に大きくてまん丸い橙色の月がぽっかり浮かぶ。月明りに照らされた山々の遠くで梟が誰かを呼んでいる。ホーホ、ホッホ…… 月は地球の周りをまわっていて、地球は太陽の周りをまわっている、と小学校で習った。海面は一日のうちに満ちたり引いたりするのは海遊びで知っていた(月の引力が関係することは学校で習ったけど)。春・夏・秋・冬と季節が一年周期でやってきて、季節にあわせて桜・ひまわり・萩・水仙が咲いて、カエル・蝉・コウロギ・ミノムシの蓑が現れるのも楽しみにしていた。

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:あらゆるものがぐるぐる回る

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:なくならなくて汚さない暮らし方

          秋晴れの澄みわたった空の下で飛び交う赤とんぼを、南に高く昇ったお日さまがじっと眺めている。その下を渡りのカモの騒々しい一団が通り過ぎていく。 お日さまが眺めているのは赤とんぼだけじゃない。電気をつくるためにあらゆる所に設置された太陽エネルギーパネルもだ。たとえば、家やビルの屋根にのっていたり、貯水池に浮かんでいたり、果樹園を覆っていたりする。果樹園や野菜畑を覆うパネルは角度を調整することができ、真夏には植物の熱ストレスをやわらげたり、真冬にはできるだけ太陽光にあてたりできる

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:なくならなくて汚さない暮らし方

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:遊びは学び

          今日は台風一過。雲ひとつない真っ青な空。乾いた風で柿の木の色づいた葉っぱが舞っている。メジロの団体さんがさわがしげに枝から枝に飛び移る。 近所の公園で、こどもたちの団体さんもさわがしいげに駆け回っている。広大な公園には長いローラーコースターや、木でできたアスレチックの大型遊具、野球場やサッカー場、バスケットコートがあって、よちよち歩きの幼児から、声変わりした高校生まで、耳が不自由な子から小児がんを患っている子まで、いろんなのこどもたちが集まっている。それに公園には遊具のそば

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:遊びは学び

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:山の幸・海の幸

          白々と夜が明けて山々のシルエットが浮かびあがる。庭のヤマボウシの真っ赤に実った実をたべにシジュウカラのつがいがにぎやかに会話している。 わたしのうちは丘陵にたっていて、西に港が見渡せ、朝、漁を終えた船が次々と入ってくるのが目に入る。南の窓を開けると淡い朝日に照らされた緑が映える山の斜面に段々畑が連なっている。畑には蜜柑に柿、栗に梨といった果樹もあれば、サツマイモやカボチャ、ラッカセイにブロッコリーが植わっている。 畑はこのコミュニティの共有地で、各家庭が四季折々に収穫でき

          こどもたちに贈りたいコミュニティ:山の幸・海の幸

          夏の音景色――蝉しぐれ

          夏の一日。 白々と夜が明けると杉林でヒグラシが鳴きはじめる。一匹鳴くとつぎつぎと連鎖し、薄暗い林の中をヒグラシの共鳴音がゆっくりと移動していく。 朝の太陽が照りつけると、山々からクマゼミの大音量の声が鳴り響く。シャンシャンシャン。。。山が鼓動する。シャンシャンシャン。。。森が鼓動する。 桜の木の幹で木陰をめぐって場所取りするニイニイゼミが、チッチ、チッチと喧嘩する。 太陽が南の空に昇りきった。桜の木に潜んでいたミンミンゼミが気持ちよく一斉に声を上げる。近くに並んだひま

          夏の音景色――蝉しぐれ