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こどもたちに贈りたいコミュニティ:あらゆるものがぐるぐる回る

中秋の名月。東の空に大きくてまん丸い橙色の月がぽっかり浮かぶ。月明りに照らされた山々の遠くで梟が誰かを呼んでいる。ホーホ、ホッホ……

月は地球の周りをまわっていて、地球は太陽の周りをまわっている、と小学校で習った。海面は一日のうちに満ちたり引いたりするのは海遊びで知っていた(月の引力が関係することは学校で習ったけど)。春・夏・秋・冬と季節が一年周期でやってきて、季節にあわせて桜・ひまわり・萩・水仙が咲いて、カエル・蝉・コウロギ・ミノムシの蓑が現れるのも楽しみにしていた。

そうか、周りの世界はぐるぐる回ってるんや、見えなくなってもまた時が経てば戻ってくるんや、と思うとなんだか安心したものだ。

このコミュニティでもぐるぐる回っているものがいろいろある。食べ物は共有の畑でつくる野菜や果物のほか、山で鹿や猪、兎を、川・海・湖で魚や貝、エビなんかを捕らえたり、はたまた木の実やきのこ、海藻と採ったりしていただく。近所の人たちと一緒にちょっとした狩猟採集トレッキングだ。大切なのは狩りすぎないこと、採りすぎないこと。必要な量だけにおさえれば、また次の年には手に入れることができる。

コミュニティ内にある高原はだだっ広い牧場で牛や馬、山羊や鶏を共同で飼っている。牛や山羊の乳はコミュニティ発行の貨幣「トークン」と引き換えすることができる。このトークンは、衣類や食器や文房具などの日用品も店で引き換えることもできる。

このコミュニティではプラスチックは使われない。昔、プラスチックやビニールでできていたモノはすべて循環できるモノになった。麻や木、竹、貝殻を利用すれば、袋や包装、ストロー、はし・スプーン・フォークなど、工夫すればなんにでも活用できる。自分で作れないものは職人さんからトークンと引き換えに手に入れる。循環できるモノからゴミはでない。最後には自然に戻される。

作るための道具や機械を製造するための資源は「都市鉱山」から調達する。金属は錆びる前に回収されて再利用、鉱石も分解して再利用、ガラスも溶解されて再利用される。

水は飲料水とその他(畑にまいたり、掃除に使ったりする水)に分けられる。洗剤やシャンプー、化粧品には自然界で分解できない化学物質の使用は禁止されているので、家庭廃水は川や海に流されても安全だ。もちろん水も海に流れ、蒸発して雲になり、雨になって循環する。

ここは理想郷じゃない。どれだけ再利用、再使用、再生利用しても、使用量が多すぎると自然は循環してくれない。竹は切ってもすぐ大きくなる便利な資源だ。けれど切って切って切って、たくさん品物を作って使い捨てしたら、最後には大量のゴミになる。循環できる量を循環できる期間で少なく長く使うことがポイントなのだ。



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