がんばりたくない君へ
受験を控えた娘が「がんばれ」と言われたくないといった。「がんばれ」といったことはないと思うけど、きっと親は態度で示してるんだろね。
「がんばれ」とは言わないけど、
「もうちょっと志望校高くして見たら」とか、
「小さいころから歴史好きだったからまだまだいけるよ」とか、
きっとこういう言葉が「がんばれ」と自動翻訳されてるんだろね。
親というのはやっかいなものだと思う。
あんたの好きなようにすればいい、なんていっておきながら、
なんとか自分の理想の道に進ませようとしてる。
完全に自分とは切り離された、独立した人間なのに、
どこか子宮にいたときの記憶が抜けなくて
自分の一部のような想いが消えない。
彼女は彼女、自分は自分。
受験という人生の大きな転換点で、
親に望むことはなんだろ。
わたしが受験生だったときは今とはまったく環境が違っていた。
女子は高校卒業して就職して二十歳そこそこで結婚するのが当たり前だった。田舎だったこともある。都会では同年代でもそんな話はあまり聞かないから。
わたしは両親に結婚しないからそのお金で進学させてほしいと懇願したのだ。わたしにとって進学は、そんな環境から脱出する手段だった。
だから、娘にとんちんかんなことをいってしまった。
今は大学進学率50%の時代なんだから。そして娘の高校の進学率は100%なんだから。大学進学が当たり前なんだから。
娘が学校に進路を提出することになった春。
娘ははじめ、旅に出たい、と言った。
どこに?ときいたら、お母さんの田舎で暮らしてもいい、と言った。
なんで?ときいたら、自分の将来に興味がない、と言った。
それから色んな大学を調べて
どんな学部があるか色んな本を読んで
仲のいい友達と色んな話をして
ぼんやりと将来像みたいなのが浮かんできて
自分ひとりで大学のオープンキャンパスに出かけ、
自分ひとりで大学の相談会で話をきいてきた。
それでもやる気がでなくて、暑い夏が過ぎていった。
そして、ながながとなま暖かい秋が終わり、
身が引き締まるような寒いの冬が来た。
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