かわいい子には旅をさせよ、とは言うけれど……
娘を送りだしてしまった。
はじめての海外旅行、はじめての一人旅、はじめてのフリー旅行。
1週間前、彼女が「来週ヨーロッパに行ってくる」と言ったきた。
「そう、行っておいで」とわたしは答えた。
大学生の海外旅行なんて珍しくない。コロナもようやく収束したようだし、
バイトで貯めたお金で行くなら、ひきとめる理由はない、と判断したからだ。
「そうか、ヨーロッパかいいね。楽しみだね。誰と行くの?」
そう聞くと彼女の顔がくもった。まさかのまさか、だった。
まったくの一人旅だというのだ。
現地に知人もいないのに、旅行会社も介せず、航空会社と旅行サイトに直接オンラインで予約する、という。
ヨーロッパに行くことは賛成だけど、ツアーでもなく、女の子一人でまったく知らないところに送りだすなんて……。
OKを出してしまった。後悔しても、あとの祭りだ。
出発前日の夜11時、バッゲージタグが印刷できない!
空港で航空会社のカウンターがわからない!と慌てだしたので、
とにかくターミナルに着けばなんとかなるよ、と言って落ち着かせて寝かせた。
夜明け前、駅まで送ったあと、
娘が乗る電車が出発する時間まで、待機していた。
あの子が小さいころも、よくそうしたものだ。
電車に乗る前に忘れ物に気づくかもしれない。
乗り遅れて困ってるかもしれない。
なにかあってLINEしてくるかもしれない。
まもなく無事に電車が出発したので家に戻った。
やれやれ……。
今は北極海の上空あたりを飛んでるころだ。
機内できっと映画でも観てリラックスしてるだろう。
けど、空から地上に降りたら、
まったくの一人になる。
そのとき、どんな気持ちでいられるだろう。
不安? それとも期待?
だれにでも「はじめて」はあるものだ。
わたしは今日はじめて、子どもを海外に送りだした。
不安と期待のまじりあい。
この気持ちを忘れないようにここに書き留めた。
彼女はこれを機に、どんどん行動範囲を広げて、
文字通り、親元を旅立っんだね。
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