こどもたちに贈りたいコミュニティ:山の幸・海の幸
白々と夜が明けて山々のシルエットが浮かびあがる。庭のヤマボウシの真っ赤に実った実をたべにシジュウカラのつがいがにぎやかに会話している。
わたしのうちは丘陵にたっていて、西に港が見渡せ、朝、漁を終えた船が次々と入ってくるのが目に入る。南の窓を開けると淡い朝日に照らされた緑が映える山の斜面に段々畑が連なっている。畑には蜜柑に柿、栗に梨といった果樹もあれば、サツマイモやカボチャ、ラッカセイにブロッコリーが植わっている。
畑はこのコミュニティの共有地で、各家庭が四季折々に収穫できる野菜を植えていて、食べきれない分はお互いにシェアしている。今は秋の味覚が楽しめる、一年で最も食欲がそそられる時季だ。
食欲の秋といえば、海の幸も忘れてはいけない。ここの海は黒潮が流れ、魚介類が豊富だ。今食卓に並ぶのは太刀魚。名前のとおり、刀みたいに銀色でウロコがない。海中でみると海面から差し込む陽の光に照らされて、細長い体がギラギラと輝く神秘的な魚だ。炭火で焼いて、新鮮なら刺身でも食べられる。淡泊で臭みもなく、小さなこどもにもおすすめの一品だ。
もちろん海は誰のものでもない。魚も貝も海草を自由に獲れる。ただし、あくまでも自分たちが食べられる量だけだ。売るための「漁業」をするには当局の厳しい監視下で許可が必要。だから魚を獲りすぎることはない。数十年先には食べられなくなる、というような心配は無用だ。
「食」の持続可能性を守るには、商業依存では成り立たない。過去の単一作物、過剰漁業で第一産業は衰退した。今では農業や漁業だけを生活の糧にしている人はほとんどいない。無農薬・不耕起栽培。来年のために収穫時に種をとる。海で底引き網は限られた期間と場所のみ使用できる。
ここは理想郷じゃない。規則やルールがきちんと整備されていて、住んでいる人はそれらの存在価値を理解している。過去の過ちを繰り返したくないからだ。
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