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こどもたちに贈りたいコミュニティ:なくならなくて汚さない暮らし方

秋晴れの澄みわたった空の下で飛び交う赤とんぼを、南に高く昇ったお日さまがじっと眺めている。その下を渡りのカモの騒々しい一団が通り過ぎていく。

お日さまが眺めているのは赤とんぼだけじゃない。電気をつくるためにあらゆる所に設置された太陽エネルギーパネルもだ。たとえば、家やビルの屋根にのっていたり、貯水池に浮かんでいたり、果樹園を覆っていたりする。果樹園や野菜畑を覆うパネルは角度を調整することができ、真夏には植物の熱ストレスをやわらげたり、真冬にはできるだけ太陽光にあてたりできる。それに豪雨では雨よけになるし、雨水を貯めるタンクも備わっていて、必要な水と肥料をやる「点滴かん水施肥」の設備になっている。太陽エネルギー設備からは電気と温水の両方が供給される。

風や水、地熱などいろいろ組み合わせ、効率のいい蓄電池が併用されているので、電気の供給がとまる心配はない。風力設備は風通しの庭や、街灯の上に小さな風車が設置されていて、昔あった大規模な風力発電施設はほとんど見かけなくなった。山脈や海上に巨人が林立しているような風景はぞっとしたし、渡り鳥が激減したり、台風の強風で壊れて修理できなくなったりと課題も多かった。効率が高くてメンテナンスのいらない小さな風車が発明されて、安くて簡単に取り付けられて、必要な場所に必要なだけ利用できる。

水力発電はコミュニティにある水路を利用している。山地にあった大きなダムの設備は寿命を終えたので、土砂崩れや洪水を考慮した防災を兼ねて整備されている。

地熱が利用できるということは、近くに温泉が湧き出ているということだ。近所に古くから利用されている温泉があって、海で泳いだあとは海岸のすぐ脇の温泉に浸かるのが習慣になっている。もちろん無料で水着着用。地熱の力が発揮されるのは冬。自宅で温泉に入れるということもあるけど、住宅の暖房にも使われる。床暖房で足元からほんわか暖かい。

冬場の暖房には暖炉も活躍する。木材チップは、周囲の山林から切り出された木材の廃材だ。暖炉に火を入れると電灯を消してロウソクを灯す。なぜか心がほっこりする。できた炭は料理に使う。炭火で焼いたら肉も魚介もなんでもおいしい。

電源は独立型で、系統に接続しているのは大きな工場や病院、ビルだけだ。そこでも独立した電源システムが備えられていて、万一故障したときにはコミュニティ所有の大型蓄電池から送電される。

ここは理想郷じゃない。エネルギーは大量に使うほど、膨大な資源と大規模な設備が必要になる。だから賄える量だけ使う暮らしになった。無駄な利用や過剰な設備を一掃するだけでずいぶん負荷が軽くなる。太陽・風・地熱はなくならないし、利用時には温室効果ガスを排出しない。木は必要な分だけ伐採して、植林する。なくならないし汚さない。


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