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【美術館に行こう】絵が分からない僕は、画家のかけらを拾い集めるように美術館に行く - 『イラストで読む 印象派の画家たち(杉全美帆子)』『印象派への招待(朝日新聞出版社)』を参考にして

今日参考にした本 『イラストで読む 印象派の画家たち(杉全美帆子)』『印象派への招待(朝日新聞出版社)』

2020/01/22 作成

パリの美術館に所蔵されている約10万点のアート作品画像が無料取得、商用利用が可能に

皆さん、新年早々飛び込んできたこのニュースを見ましたか?

内容は見出しの通り。
世界に名だたる美術館が集積している芸術都市 : パリの美術館群が所蔵している10万点以上のアート作品が、無料でダウンロード、さらには商用利用や二次創作も可能になったのです!

これって、すごいことですよね。

最近こそ音楽や漫画業界では、「無料公開して広く作品を知ってもらうことで、結果的に売り上げに繋げる」というPRの手法が広がってきていますが…
まさか、その手法を歴史的価値もある西洋絵画で採用するとは…!

今日は美術館巡りをする友達募集中の僕が、このニュースに乗っかって、絵の魅力について紹介します。
特に、僕が好きな印象派を例にあげてお話ししていきます。

…ちょっと長いですが、“序・破・急”の型に整理して書いているので、目次を活用しながら読んでください。自信作です。

序.僕は絵が分からない

とは言いつつも、僕は絵が全く分かりません。
それどころか興味もありませんでした。
美術館に通い始めたのも、高校の美術の課題で仕方なくです。

なんだか、美術館巡りって“教養が必要な、高尚な趣味”ってイメージがあって敷居が高くないですか?
僕はたまに美術館に行きますが、絵が分からない人の気持ちも理解できます。
だから、思うのです。

「無料公開したところで、新しいファンって増えるの?」

確かに、これから絵を目にする機会は増えるでしょう。でも、それだけじゃ絵に興味ない人には響かないと思います。

僕は美術館巡りをする友達が欲しいのに…それでは困る。

今日は、絵に興味がない人でも「今度美術館に行こうかな?」と思ってもらえるような記事を、絵画の無料利用サービスを最大限活用して、書きたいと思います。

破.印象派絵画の魅力

…と上記のように意気込んで、覗いたParis museeのHP(↓)

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ここから絵画の検索やダウンロードができるはずですが、僕は悲しいほどに使いこなせませんでした。
大学時代、本来なら1年間勉強すれば済むフランス語の授業を、じっくり3年間勉強したはずなのに(落単)。

なので、今日の記事はサイトは使わず、僕がフランスで実際に訪れた時の写真を使っていこうと思います笑。

それでは参ります。

ー①「絵画にしかできない」を追求した技法

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(↑『散歩、日傘をさす女性(クロード・モネ)』@オルセー美術館)

この絵は『睡蓮』で知られる印象派の巨匠 : モネの作品。そして、僕が彼の絵で最も好きな連作です。
この絵には、モネの妻であるカミーユが描かれていますが、彼女の表情は不鮮明です。

モネは「人物さえも、光あふれる風景の一部」と語るほど、光の変化を追求し、変わりゆく一瞬の風景を描こうとした画家でした。
そして僕がモネの中でも、特にこの題材が好きな理由は、彼がこの絵の中で“風を表現しようとした”ところにあります。

印象派が誕生した1850年前後は、ちょうどカメラが発明された時代。
今まで絵が果たしていた役割が、写真にとって代わる中で、画家たちは“絵にしかできない表現”を模索していたのです。

色使いもパステルで素敵ですよね。
個人的には「印象派の描く風景こそ、僕たちが持っている心象風景に最も近いものなんじゃないか」と思います。

ー②画家たちのストーリーが青春ど真ん中で激アツ

今でこそ最も人気ある絵画のジャンルとなっている印象派ですが、その絵が世に出た当時の評判は、それはそれは酷いものでした。

当時、サロン(国家主催の美術展)で評価されていた絵は下のようなものです。

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(↑『ヴィーナスの誕生(アレクサンドル・カバネル)』@オルセー美術館)

神話をモチーフとし、きめ細やかな仕上げが高いテクニックの証拠でした。
印象派とは取り上げるモチーフも、技法も全く異なります。当然、彼らはサロンでは落選続き。
しかし、画家が絵で食べていくには、厳しい選考を通過してサロンに出品し、名を売る以外にありませんでした。

そんな権威重視の美術界に反発するように、1874年、志を持った若い画家が集まり第1回印象派展が開催されます。

それって、めちゃくちゃかっこよくないですか?
音楽で言えば、オーケストラがクラシックコンサートをやっているホールの横で「これが俺たちの信じる音楽だぁぁぁぁ」と叫びながら、若いバンドがロックを掻き鳴らしているようなものです。

しかし、この第1回印象派展は大失敗します。
それどころか、出品された絵は美術界に大スキャンダルを巻き起こし、批評家だけではなく市民からも尽く批判されるのです。

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(↑『印象、日の出(クロード・モネ)』@マルモッタン・モネ美術館)

こちらは、彼らが印象派と呼ばれる由来にもなったモネの作品です。
この絵は批評家に「未完成な壁紙以下の出来だ」と言われてしまいます。

さらにその2年後、第2回印象派展で出品されたルノワールの作品も、ボロカスに言われました。

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(↑習作『陽光の中の裸婦(ピエール=オーギュスト・ルノワール)』@オルセー美術館)

印象派らしい鮮やかな色彩ですが、当時は「腐った死体のようだ」と言われてしまいました。

『ヴィーナスの誕生』の様に“神話をテーマにした理想美”を描き、“筆跡を感じさせないほど細部まで丁寧に仕上げる”ことが評価の対象だった時代、“市民の生活や身近な風景”を描き、“まるで絵具を置くように厚く塗り重ねる”印象派の絵はお粗末なものとして人々の目に映りました。

しかし、彼らは世間の評判にもめげずに、一緒になって自分たちの信じた絵を追求していきます。
なかなか絵で食べていけず、貧しさに喘ぐ仲間がいたら、助け合うこともありました。

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(↑『小枝を持つ羊飼いの少女(カミーユ・ピサロ)』@オルセー美術館。
苦境の時代から印象派を支援し続けた画商 : デュラン=リュエルが倒産の危機に瀕した際に開かれた第7回印象派展。既に印象派展を離れ、方々で活躍していたモネやルノワール, シスレーなどが再集結し、リュエルのために惜しみなく自らの絵を差し出した。)

そして、後に彼らは美術界に革命を起こし、国に認められるほどの大成功を収めるのです。

いや、めちゃくちゃかっこよくないですか?
印象派の物語は、まるで青春群青劇のようなアツさがあるのです。

ー③画家のかけらを拾い集めるように、旅ができる

印象派絵画の特徴のひとつが“連作”という作品の形です。

パリのオランジュリー美術館には『睡蓮の間』と呼ばれる部屋がいくつも連なっています。

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(↑『睡蓮(クロード・モネ)』@オランジュリー美術館)

印象派の画家たちは、光の変化や時間の変化, 見る角度による構図の変化を追求するために、同じテーマを繰り返し描きました。
そして行き着いたのが“連作”です。

モネの『睡蓮』は200点以上に及ぶ壮大な連作。
だから、有名な美術館を巡っていると、たいてい睡蓮を見ることができます。
睡蓮が連作だと知らなかった当時の僕は、ワシントンD.C.とパリの美術館で睡蓮を見て驚き、それと同時に遠く離れた2つの街が、僕の中で繋がった気がしました。

また、睡蓮と比べると点数は少ないですが、セザンヌの『カード遊びをする人々』は5点の連作です。

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(↑『カード遊びをする人々(ポール・セザンヌ)』@オルセー美術館。
トランプを持つ腕が妙に四角いのが分かるだろう。全てのものを幾何学的に捉えようとしたセザンヌの絵は、後にピカソらが大成するキュピズムの前身となった。絵画の歴史を語る上で、セザンヌの存在は外すことができない。)

オルセー美術館の他には、ロンドンのコートールド美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館などが所蔵しています。
僕は既にこの連作を2点見ていて、次はフィラデルフィアのバーンズコレクションに行きたいと思っています。まるでスタンプラリーをする感覚です。

この様に、世界中に散らばった印象派の絵画たちは、僕の世界地図に楔を打ち続けてくれます。
そして、画家のかけらを拾い集めるように美術館を巡ることは、少なからず僕が世界を旅するモチベーションのひとつになっているのです。

急.みんな!美術館に行こう!

ところで、僕はシニャクという画家の色彩が、最も好きです。
なんとか苦労して、Paris museeのHPから1枚だけ、彼の絵をダウンロードしてきました。

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(↑『ポン・デ・ザール(ポール・シニャック)』@カルナヴァレ美術館)

シニャックは、若くして亡くなった新印象派の天才画家 : スーラの親友。
スーラの意思を継いだシニャックは、彼の点描技法を科学的に分析し、現代美術の礎を築きます。(ここにもアツい物語が!)

なので、この絵も点描で描かれています。
でもやっぱり、画像だとよく分かんねぇな。

だから、みんな!美術館に行こう!

長い時間をかけて、多くの人々を魅了してきた絵画たち。その歴史の重みは決して、画像では表せないものです。

そして今、先ほど紹介したセザンヌの連作『カード遊びをする人々』の貴重な1点が、日本に来ています!

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(↑コートールド美術館展。残念ながら上野での展示は終了したが、3月までは名古屋, その後6月までは神戸で見ることができる。)

セザンヌの他にも、キービジュアルにもなっている、印象派の父 : マネが亡くなる前年に書き上げた最高傑作『フォリー=ベルジェールのバー』や、ルノワールが第1回印象派展に出品した『桟敷席』などなど…印象派の傑作たちをたくさん見ることができます。

あと、有名なゴッホの連作『ひまわり』。

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(↑『ひまわり(フィンセント・ファン・ゴッホ)』@ロンドン ・ナショナル・ギャラリー)

世界に7点(うち1点は焼失)しかないひまわりのひとつが、なんと新宿の損保ジャパン日本興亜美術館でいつでも見れます(2/14まで休館らしいです)。

たとえ絵が分からなくても、絵には色々な楽しみ方があります。
皆さんもこの機会に、美術館巡り, 印象派巡りを始めてみてはいかがでしょうか?

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今日参考にした本

①イラストで読む 印象派の画家たち

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杉全美帆子 著
2013年 河出書房新社より

・・・

②印象派への招待

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朝日新聞出版 著
2018年 朝日新聞出版より

2つともイラストがたくさんあって、まるで資料集のように分かりやすく、印象派について知ることができます。

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