厳しい日本の安保環境を直視し適切な平和教育を進めよ|【WEDGE OPINION】いま、子どもたちに教えるべき本当の教科とは[PART2]
2月下旬の学校。北国では雪の中の登校、南国では春の訪れ。細長い日本列島各地で、卒業式の式歌のメロディーが流れる。伝統曲「仰げば尊し」「蛍の光」の他に「旅立ちの日に」なども歌われる。コロナ禍の三度目の春。各学校の合唱練習も感染防止対策を徹底して行われる。
先の大戦の際、空襲で卒業式のできなかった世代がある。後年、還暦や古稀を迎えて同窓生が集い、改めて卒業式を挙行した小学校もある。それだけ、卒業式ができなかった空白感は長く、その世代の人々の心の中に沈殿するのである。今日の〈2年生世代〉。小学校2年生、中学校2年生、高校2年生、大学2年生、社会人2年生は、卒業行事も入学や入社行事も経験しなかった人は多い。彼らが長じて、できなかった行事を追体験したいと願うのか。それとも、時間の流れの中で忘却の彼方に追いやるのかは分からない。おそらくは空襲体験世代と同様に、その世代にしか実感できぬ哀しみなのだろう。
子供版「防衛白書」が伝える
日本の置かれた安全環境
防衛省は、2021年8月14日『はじめての防衛白書 ~まるわかり!日本の防衛~』を発行した。A4版30頁の小学校高学年以上を対象にした副読本である。同書は、国の防衛の必要性、日本周辺の安全保障関係、憲法と自衛隊の関係、防衛の基本政策などについて、わかりやすく解説している。また、「宇宙・サイバー・電磁波領域」や「自由で開かれたインド太平洋」など喫緊の課題についても触れている。
同書の冒頭「国の防衛はなぜ必要なの?」で次のように述べる。
「自衛隊が多くのお金と労力をかけてどのような状況にも対処できるよう力を常に維持しているのは、他の国と戦争したいからではありません。自衛隊が……
いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。