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言葉は世界を切り分ける刃である。その意味で、言葉には暴力性が本質的に含まれる。言葉は世界を取りこぼす。

「言葉には暴力性がある」――この命題について本記事では考察したい。すなわち、人間が普段何気なく用いる言葉には本質的に暴力性が内包されているというスキャンダラスな内容を提示することが、本記事の目的である。

「言葉の暴力」というフレーズでまず想起されるのは、いじめやハラスメントであろう。けれども、私が言いたいのはそのような社会問題の一部という程度を超える、最も根本的なことなのである。(もちろん、それら社会問題が些末なものだと言っているわけではない。本記事での議論が、根底のところではつながっている。)

誰もが用いる言葉が刃であるとするならば、その扱いに気をつけなければならないのである

1. 言葉とは何か

まず、言葉とは何であるかというところから考え始めよう。ここで、言語学者鈴木孝夫の言葉を引用する。

ことばというものは、渾沌とした、連続的で切れ目のない素材の世界に、人間の見地から、人間にとって有意義と思われるしかたで、虚構の分節を与え、そして分類する働きを担っている。言語とはたえず生成し、常に流動している世界を、あたかも整然と区別された、ものやことの集合であるかのような姿の下に、人間に提示してみせる虚構性を本質的に持っているのである。

上の引用から、冒頭のテーゼ「言葉には暴力性がある」の意味が漠然と了解されるのではないだろうか。すなわち、言葉は人間が世界を理解できるように切り分けるという役割を担っているのである。

言葉の最も基本的な機能は、「AはBである」と言明することによってA=Bであると同定することである。言葉は、そのように世界の現象を固定する

本記事では世界を、生起する現象すべてとそうでもありえたという諸可能性の総体として捉える。また「世界」を、現象と諸可能性の総体である世界が言葉で固定され認識の対象となったものであると定義する。

2. ロゴス的動物

人間は、理性的存在であると言われる。理性を有することが、他の動物と人間(ホモ・サピエンス)の差異だろう。

ところで、理性(reason、Vernunft)とはそもそも何だろうか。それは、論理的に物事を考えられる能力、筋の通った仕方で推論できる能力である。

理性的に考えることは古代ギリシアの知的伝統の所産である。ギリシア語では、理性はロゴス(logos)という語で表されるが、ロゴスは他にも言葉、論理、神などの意味も表す。これらの意味を踏まえれば(簡単な仕方で捉え直せば)、言葉=理性=論理=神なのである。

この考えは、我々日本人には馴染まないように思われるので、私なりの解釈を述べれば、次のようになる。すなわち、我々人間が人間として世界を認識することができるのはロゴスを有しているからなのだ。すなわち、ロゴス的存在である人間存在のみが、「世界」を認識できる。

言葉は、世界を人間が認識できるようにさせてくれる。言葉のおかげで、論理的に、理性的に考えられる。人間を一人で思惟できる特権的存在たらしめる言葉は、神的であるとさえ言えるだろう。ロゴスがなければ、人間に「世界」は現れない

3. 学問と暴力性

学問は、ロゴス(言葉、論理)でもって世界を体系化する営みであろう。すなわち、学問においては、常に変化し続ける流動的な世界を、人間が認識可能な「世界」に加工する。諸学問はそれぞれ、固有の視点でもって世界を体系化する。

学問には、言葉の暴力性が最も表れていると言えないだろうか。なぜなら、学術的な言葉で定義した瞬間に、摑み損なわれる世界が生まれてしまうからである。定義に含まれない世界の諸現象は捨象されてしまう。一般化、普遍化が学問の基本的な態度だろう。

言葉で物事を思考する時点で、世界が縮減されていると言える。すなわち、我々は言葉を操作する限り、世界にメスを入れ続けているのだ。言葉による世界の解体。言明は、世界はこのようであると規定する。


我々は言葉を用いる時点で、豊穣な世界(それは感覚的な領域も含む)を捨象してしまうのだろう。この言葉による、世界から「世界」への<削ぎ落し>が暴力であると私は考える。

(ただ、体系化された言葉が我々の住まう現代社会を構築していることも見逃してはならない。その恩恵は計り知れないものだろう。)


思考の材料

参考文献


その他

内省


けっこうガチな感じで書きました☺️ ザ・西洋哲学という内容ですね。

言葉に対しては脳神経科学的なアプローチもとれます。「脳神経科学から言語について捉えてみた」という記事をいつか書きたいです。

普段はもうちょっとくだけた文体で記事書いています。ぜひ他の記事も読んでみてください😊

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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