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なぜ「個性」があったほうがいいのか? J.S.ミル『自由論』から考える

どーも、うぇいです。最近、「多様性が大事!」とよく言われますよね。ここで言われている主張とは要するに、「みんなそれぞれ好きなように生きていいよね」ということだと思います。

ではなぜ、同じような生き方をするよりも「みんなそれぞれ」の生き方をしたほうがいいのでしょうか


この問題を考えることは、「個性」の重要性を考えることでもあります。

本記事では、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミル『自由論』第3章「幸福の要素としての個性」をもとに、多様性の問題個人の生き方の問題について考えていきたいと思います。


いきなり結論から述べましょう。ミルによれば、その個人のためになるし、人類全体のためにもなるから個性的に生きたほうがいいのです。

ミルは、他人に迷惑をかけない限り、みんなそれぞれ自由に生きたらいいと言います。

正直、現代日本においては割と当たり前な考え方に思えるのですが、ミルが生きていれば「まだまだこの考え方は受け入れられていない」って言うと思います。というのも、ミルは「みんなが嫌う行動や考え方でさえも、他人に迷惑をかけていないのなら排斥しちゃだめだ」と言っているからです。

単に自分やみんなが不愉快だという理由で、他人の行動を制限してはならないのです。

これ、けっこう難しいことだと思います。

率直に言って僕は、抑圧しちゃってもいいんじゃないのって思うことたくさんあるんですよ。例えば、ギャンブルとか。みなさんはどうでしょうか。

友人との会話で、「あの人はよくないよね」と文句言っちゃうことありませんか? 

TwitterのようなSNSで「その発言はよくない!」「あの行動は人としておかしい!」みたいなコメントについつい共感しちゃうことありませんか?

本能的に、抑圧したいマインドを僕らは持っているのです。(この心理的な傾向については心理学や生物学で様々な研究が行われています。)

だからこそ、気をつけなくてはなりません。もし自分が実害を受けていないのだったら、他人の発言や行動を制限しようとしてはならないのです。


なぜ、みんなが不愉快になるような意見や行動までも、寛容でいなくてはならないのでしょうか。それは、そうやってみんなが好むことへと意見や行動を画一化をしていくと、生き方が「萎縮」してしまうからです。

「画一的な生活にほとんど追い込まれてしまうと、その生活スタイルからの逸脱はすべて、不信心、不道徳、さらには醜悪で、人間の本性にそむくもの、とさえ考えられるにいたるだろう」(180頁)。

例えば、学校生活を思い起こしてみましょう。学校のクラスで「変な遊び」を思いつく人が一定数いたと思います。そのような(暴力的な反抗という形ではない)逸脱をするような生徒がいなかったクラスは、つまらないクラスだとみんなに思われていなかったでしょうか? 

他にも、グループワークについて考えてみましょう。同じような意見しか出なかったら、グループワークしている意味があまりないように思いませんか?

変人が変人らしく振舞えたり、対立意見を持つ人がきちんと発言できたりする雰囲気が醸成されていなければなりません。なぜなら、違う意見・行動や対立意見・行動があって初めて全体が豊かになる可能性があるからです。

なお、変なことをしちゃったり言っちゃって後から怒られるのは仕方ないとミルは言います(自由と責任)。ミルが言いたいのは、ある人が「これおもしろいんじゃね」って思いついたのに、他の人の反応を恐れて発言しなかったり行動を控えてしまったりするのがよくないということです。


人間が人間であると言える一つの性質は、自分の生き方を決定できることではないでしょうか。ミルは、次のようにも述べます。

「人生の設計を自分で選ぶのではなく、世間や周囲のひとびとに選んでもらうのであれば、猿のような模倣能力のほかには何の能力も必要ない(143頁)」。

自ら考えて決定するということなく既に規定された意見や行動規範に沿って生きる人生を、「あなた」が生きる必要があるのでしょうか

伝統や慣習に合わせて生きるにしても、自分で考えた結果その生き方を選んでいるかどうかが肝要です。

加えて、現在推奨されている生き方の基準である考え方や行動基準は未だ完璧ではありません。「この考え方が正しいぞ!」と言い切って他人に押し付けるようなことはなるべく控えるのが賢明でしょう。


個人の幸福のために、そして人類全体のために、多様性と個性を認めなくてはならないのです。なぜなら、人間はただプログラムに従う機械や画一化された家畜ではないのですから。


参考文献

↑僕は光文社古典新訳文庫で読みましたが、岩波文庫版もオススメです!

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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