カレーのにおい。ほっとするにおい。　#y-09

朝起きた瞬間から、
お腹がちくちくする感じがして、
今日は打ち合わせの予定はないな。
よし、休もう。
そんな日。

ふーの予定に、予想外の胃腸炎リレーで、
私の有休の残りは少ない。

だけど、そんなこと、
知ったこっちゃない。
今まさに私は疲れている。
お腹もちくちく痛む、気がする。

休みだ、休み。
ようこそ、私の休日。

元気は出ないし、うっすら痛む私のお腹。
ニコニコなんてはできないけど、
朝ごはんの洗い物と洗濯はできる。
化粧はできないけど、寝癖は直せる。

ベランダのわさわさした野菜やハーブを眺めて、
きゅうりは黄色ですか、ナスはムラサキ。
ピーマンは白。 なんとまぁ。
あちこちに咲く花の色を声に出す。
きゅうりのツルがあっという間に物干しに届いた。

体調は35%でも、私は死にそうではない。
そして、今日は平日である。
そうだ、
市役所に行こう、銀行に行こう、農協に行こう。

戸籍を取って、口座の名字と住所を変えて、農協の個人年金を解約しよう。

私がばあさんになったとき孫にお小遣いをあげたくて、毎月1万円個人年金を積み立ててた。四年とちょっと納めて、私は52万払った。
四年とちょっと経って、私に戻ってきたのは49万だった。
あとの3万円は、ひらひら誰のものになったのか。

49万円やってきたとしても、脱毛サロンの契約はしないだろう私。
49万円が手元にやってきても、私はちっとも豊かになったとは思わなかった。満たされるどころか、お金の不安はどこまでも乾いてひりひりする。

不親切な農協からの帰り道、
(解約したいと言ったら途端に冷たくなった。言っていいなら、あなたは私に対してとても失礼ですね。と言いたかった。)
私は猛烈にスパイスカレーが作りたかった。
ちゃんと美味しいと思えるベーグルにはちょうど飽きたところ。

台所の棚を開けたときのスパイスの複雑な匂い。
溌剌としたスパイスの色をフライパンのなかでどう混ぜたら綺麗か。
生のトマトを使える夏の幸せ。
キリッと効かせる塩の加減よ。
大きく切った鶏肉のあの歯ごたえ。
バイパスを走る私はスパイスカレー欲に窒息しそうだった。

飛び込むみたいに家に入ったら、
日本の安心するカレーの匂いがした。
今夜はゆずひこのカレーだ。

これもまた、私の好きな、カレーだ。

相変わらずお腹は遠くでちくちくする。
今日は、弱った自分を抱きしめて寝る。

さよなら、私の休日。