Analmania

久し振りに兄と長電話をした。

まだ思いついたばかりなんだけど、と言いながら将来の話をしてくれた。
将来といっても淡い夢ではなくて
当たり前に来る何日か先のような話だった。


自分の店をもちたい。
人が家族のように集まる場所を作っていたい。

来てくれるお客をファミリーと呼んで
自分はボスって呼ばれたいと少し照れながら言うので笑ってしまった。
兄らしいと思った。

忙しない街中なんかじゃなく
少しドライブの時間が長くても
車やバイクを降りた時深く息を吸いたくなるような場所。

そこに店がある。
Tシャツとオイルが染みたリーバイス。
肩まで伸びた髪をひとつにまとめた兄がいる。

"初めてだよね?ありがとう。
今日はどこから来たの?"
聞きながら挽いたばかりの豆でコーヒーを入れる。
兄はとにかく、その人をよく知りたいらしい。
年齢は?仕事は?家族は?趣味は?

"そうだ今日は良いものを見つけてね、こんなの作ったんだよ。
よかったら食べていってくれよ"
そう言って出すのは所謂シェフの気まぐれの一品。

メニューはハンバーガーやホットドッグ
フィッシュ&チップスなんかもあれば尚良い。

ファミリーの誕生日には
ハンバーガーに立てる旗が特別仕様になる。

季節毎にファミリーがみんな集まる。
春はお花見、夏はバーベキュー
秋はスクリーンを置いて映画鑑賞会。
冬は、 何をしようか。

イベント毎にTシャツを作ってもいいね、と私が言うと
兄もすごく気に入ってくれた。

そのうちファミリーの中で

カップルが出来たり
結婚、ベイビーも増えて本当のファミリーが生まれるかもしれない。
若いアーティスト達は合同で個展をやろうとなるかもしれない。
いつも店の端っこで1人で飲んでたあの子も、みんなと笑うようになるかもしれない。

みんなで幸せになりたい。
人と人が繋がるキッカケを作りたい。

そんな話を他の誰でもなく
真っ先に私に話してくれた。
それだけでも嬉しくてたまらなかった。

それなのに、
キッチンにはお前もいて欲しい。
プロポーズにもとれる事を言われて
今まで聞いていた話が全部頭の中で
ホームビデオの映像のように再生された。


"こいつは俺の本当のファミリー!妹なんだぜ"ってきっと肩を組んで頬を寄せて笑うのだろう。

兄がパティを焦がした時
"私が作りなおすよ。
ごめんね、もう少し待ってね"
私がそう言うときっと兄は調子よく私の頭を撫でて
店の前に駐めた自分の古いアメ車をビール片手に眺めに行くのだろう。


近い将来、必ず来る日。
今はまだ想像でしかないこの私の頭の中の映像は
きっと日常になっていく。そんな気がしてならない。

だからどうかその時が来たらあなたもファミリーになって欲しい。
この記事読んでたよとこっそり教えて欲しい。
ビールを奢るから乾杯しよう。


隣の部屋からアラームが聞こえる。朝だ。
頑張ろうね、にいに。
今日の事を笑って話せる日がくるからね。


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