いつも誰かのせいにしてしまう人に知ってほしい、認知行動療法と『ポリアンナ物語』の話

その日はいやな夢を見て目覚めた。と言っても毎日のことなので特別騒ぎ立てる必要もない。3年前の出来事をきっかけに病気になったことについて「○○のせい」という考えが深層にあるらしく、そのまま言葉になって「○○のせいや!」と叫んで飛び起きた。前向きに、そういったことは考えないようにして暮らしているので、夢を通して自分の考えを知らしめられるのは苦しいものがある。

日頃は病気の治療について考えないようにしているが、鬱屈としたついで、半ばやけ気味に「線維筋痛症 ○○のせい」などとネットで検索した。ネット検索というものは得てして最初のワードから検索結果がどんどんズレていくものなので、医師による解説や医学書などの建設的なページに辿り着いた。あれこれ読んでいると慢性の痛みの治療に認知行動療法が効果的であるとの記述を多数発見。そのこと自体は一年ニ年前に散々調べ倒したので知っているのだが、改たな視点で読んでみると気付きも多い。

その中で、「いきいきリハビリノート」なる、このノートを使っている人は全員まず間違いなくいきいきしていないであろう、なんとも言えない皮肉をまとったノートの存在を知った。慢性の痛みに悩む患者向けの簡易的なワークブックで、認知行動療法に基づいた内容になっているようだ。自身の検索能力を活かして写真を発見したので目を通してみると、そもそも認知行動療法とはなんであるかについて解説してあるのだが、一例を読んでハッとした。

「約束の時間どおりに病院にきたのに、診察が始まらないという状況にあったとする。

「医師は患者を待たせるべきではない」という認知から、「この医師は患者のことを考えていない」「私はいつも良い対応をしてもらえない」などという自動思考に陥ると、怒りを抱き、医療スタッフに対して不満を訴えることで、身体的反応として「疲労感」を覚える。

一方、この状況においても認知を転換すると、「この時間を利用して普段読まない本が読める」と考えを変え、待合室の本を手に取ることに行動を変えることができる。


と、まあこんな内容で、認知を変えることで行動も良いものに変えていこう、というのが認知行動療法の考え方らしい。

これって、パレアナがやってる「喜びの遊び」と一緒やん。どんなことからでも喜べることを探すゲームと同じことやん!私は狐につままれたような気持ちになった。

パレアナとはこのブログにも何度か書いている『少女パレアナ(別タイトル: 愛少女ポリアンナ物語)』のことである。アニメにもなっているので名前だけなら知っている人も多いかもしれない。百年ほど前のアメリカの名作児童文学で、主人公のパレアナ(訳者によってポリアンナとも発音)は幼くして孤児となり、冷淡な叔母に引き取られる。彼女はどんな状況の中でも喜べることを探す「ゲーム」をして常に前向きであり続け、その純粋で前向きな人柄から周囲の人々を魅了し、薄暗い大人たちの生き方を明るい方向へと変えるきっかけとなり、やがては村中を喜びで満たしてしまう。そんなお話なんだけど、これって無意識に認知行動療法をやってたんじゃないか!パレアナは!物語の中で!

そうひらめいた瞬間、なんだか目に涙が滲んで、もう一度パレアナと一緒に喜びの遊びをやってみようと思った。

小説のあとがきによると、『少女パレアナ』の作者であるエレナ・ポーター氏は病弱な幼少期を過ごし、ただ健康の回復だけを願って生きていたそうだ。小説家になりたいだとかいう夢があったわけでもない。彼女はやがて本当に健康を手に入れ、青年期には音楽院で学び、家庭を持った後に小説家になったのだそうだから、この真実には小説ほどに奇がある。百年も前、病弱だったアメリカの少女エレナは、きっと本当に喜びの遊びをやっていたんじゃないだろうか。無意識にせよ、認知行動療法と同じことを続けた彼女は、やがて念願叶って健康になれたんじゃないだろうか。そしてその体験から物語を書き、国中の、そして百年後の極東の国に住む私にまで、生き方のなんたるかを示してくれたんじゃないだろうか。

こんなのはあくまで妄想でしかないのだけど、実際、『パレアナ』は出版当時アメリカで社会的なブームになったらしい。「pollyannaish effect(ポリアンナ効果)」とか「pollyannaish(楽天的である)」といった言葉も生まれたらしい。パレアナの「ゲーム」は本の中を飛び出して、現実の人々にまで影響をもたらしたのだ。

『少女パレアナ』は、お話自体もとても好きだけど、この裏話のようなものを発見して、なんだかとっても嬉しくなって、確かに今朝はいやな目覚めだったけど、こんな嬉しい気持ちになれるなら、これこそ喜びの遊びだわと、そのことを喜べばいいんだわと、私はそう思ったのだった。


■小説

訳者によってタイトルが異なります。私は村岡花子さんバージョンの翻訳を読みました。



■アニメ

個人的にはアニメは見たことありませんが、世界名作劇場なのでお子様や本が読みづらい方にも安心かなと思います。U-NEXTの見放題にありました。


■最後に

こういう文体の方が目を引きやすいし読む人が追体験しやすい風潮なのかなと思って、紹介文という形ではなく個人の独白っぽく書きました。何かの役に立てば嬉しいです。


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