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お盆はしんどい、という話。

つっ……

つっっっっっっっっかれたーーーーーー!!!


……しか感想が出ないほど、疲れた。
もうダメだ。いや、私はやった。終わらせた。
大丈夫だ、もう今年のお盆は終わったのだ。

といって、別に何があった訳でもない。
何十人もの来客を応対したわけでもなければ、数十件の新盆参りをしたわけでもないのだ。

単に夫の実家……と呼ぶのかどうか、とにかく一人暮らしの義母の家に行って3時間弱滞在してきた、ただそれだけなのである。
夫は3人兄弟で、今年は夫+私と息子、義兄、義弟+子供3人、義母を入れて総勢10人だった。人数分の寿司を予約・購入して持参し、義弟一家が持参してきた飲み物や他の食料と共に食べながらしばらく喋る。ただそれだけのイベントだ。

それでも、疲れるものは疲れるのだ。
主に私のメンタルが。

今回はたまたま義弟嫁さんが欠席で、その代わりレアキャラの義兄が登場していた。私からすると不発弾が一個減った環境だったので、例年よりはいくらかマシだったはずである。

私の最も苦手とする、「背が高くてきつそうで、髪が長く、お化粧ばっちりの美人の女性」である義弟嫁さんは、直接的に私に何か危害を加えたことは一切ない。多分、ごく普通の善良な女性だと思うし義弟嫁さんに非は全くない。のだが、怖い。もう本当に怖い。
とはいえ、何とかコミュ力を振り絞って頑張れば、和やかに会話をすること自体は出来るのだ。

義母さえ余計な事を言わなければ。

義母というのが、これまた強烈な個性持ちなのだ。
毒というよりブルドーザー型。「私はお腹になんっにも溜めない人だから!あっはっは!!」と豪快に笑ってらっしゃるのは良いのだが、あくまでも本人としては悪気はないらしいのだが、もう豪快に無神経に、どこまでも自分勝手に、喋りたいことを延々喋り続ける。

自分の職場の愚痴を言っている間はまだいい。自分の血圧や首や足腰について語っているのも良い。
頼むから、お願いだから私をヨイショしようとして義弟嫁さんをディスったり、自分の自慢話をしようとして義弟嫁さん実家をディスったり、子供たちに訓戒を垂れようとして義弟嫁さん出身校をディスったりするのを止めてくれ。

義母が私をディスる分には別に良いのだ。聞き流せばいいし、正直どうとも思わない。ハイハイお義母さんまた話の方向間違えてますよーそれ私へのディスになってますからねーと思っていれば良いだけだし、何ならそのまま声に出してツッコミを入れても構わない。無神経な義母は、無神経なツッコミを受けても全く気にしないのである。反省も改善もしないが。

だが、義母はどうもこの無神経なディスを、私へのディス1:義弟嫁さんへのディス3ぐらいの割合で大放出し続けるのだ。話題にもよるとは思う……のだが、毎回このぐらいの割合がキープされているので、これは無神経なだけじゃなくて悪意があるのかもしれない。

義弟嫁さんのような「背が高く、お化粧ばっちりの、きつめの美人」というのは私にとって、ただでさえ不発弾のような存在である。
その最も恐ろしい不発弾が私のすぐ隣で、笑顔を引きつらせ、徐々に能面になっていき、やがて内側に怒りをふつふつとみなぎらせて、ギリギリ爆発を耐えながらも微妙に棘のある相槌を打ち始める――というその状況は、私の寿命を完全に縮ませに来る。
マジで心臓に悪い。ホント怖い。勘弁してくれ。っていうかお義母さん!!もうちょっと誰のディスにもならないような無難な話は出来ないのかよ!!

そして恐怖に耐えられなくなった私は、全く関係ない話題をぶち込んで義母の話を変えさせたり、大げさに義母本人をディスり返して笑いを取ってみたり、我関せずとTVを見ている夫をディスって会話に巻き込んでみたり、とあの手この手を尽くして義母のディス独壇場を阻止しようとするのだが、ひたすら喋り続ける義母に物量で負け、結局最後には洗い物や片付けを口実に台所に逃げ出してしまうわけである。
もしそのタイミングで、義弟嫁さんも巻き込んで一緒に洗い物が出来ればベストだ。子供たちの近況など、完全に無害な会話をちょっと交わして、彼女の笑顔が見られれば、私の縮んだ寿命も何とか報われる。

もうほんと、義母単体ならまだ良いのだが、いやそれも全然全く好きではないのだが、それでも義母と義弟嫁さんの組み合わせは勘弁して欲しい。
義母が70歳を超えるまで無事に社会生活を送ってきたということが信じられない。

で。義弟嫁さんが体調不良により不参加となった今回、義母はわざわざ義弟家の長女ちゃん18歳を傍らに呼び寄せ、無神経トークをし始めた。私が自分の息子に「サーモンのお寿司以外も食べなさい」とか説教するのに忙しかったので、話し相手が足りなかったのだろうと思う。
だが、その内容がどう聞いても義弟嫁さん、つまり長女ちゃんの母親とその実家のディスにしか聞こえない。

無理矢理に「次男君、すっごい背伸びたねー!!」と別話題を放り込んでも、義母は「長女ちゃん兄弟が背が高いのは義弟嫁さんの実家の家系だ」からの「高身長女性は良くない」としか聞こえないディス。義母は私と同クラスのチビだが、長女ちゃんも義弟嫁さんも高身長女性なんだからその発言は止めろよマジで。
苦し紛れに「ダメですよお義母さん、私達みたいなチビにだって良いところはあるんです、背が高い人の事をひがんじゃダメです、ひがんじゃ」と義母ディスで対抗し、長女ちゃんに向けて「専門学校大変?宿題とかやっぱり多い??そうなんだ、がんばってね!!」と無害な話題を振ったつもりが長女ちゃんに愛想笑いをさせてしまって、しかも十秒しか持たず、再び義母の「義弟嫁ちゃんは看護師で立派なんだから、長女ちゃんも頑張って立派な看護師になるんだよ!でも義弟嫁ちゃんは専門学校時代には義弟ともう付き合ってたんだけど、殆どうちに入り浸りでね(以下、寛容な母である自分ドヤ&ハタチの頃の義弟嫁さんのディス)」という独壇場が始まってしまう。

もうほんと、無理。私では義母の無神経マシンガンを止めることは出来ない。

分かってはいるのだ。義母が無神経発言を繰り返すのは私のせいではないし、義母の発言の責任を私が取る必要はなく、私がひたすら黙っていたとしても、義弟嫁や長女ちゃんが義母の事を「やっぱり嫌い」とか思いながら帰る、ただそれだけのはずである。

なのだが、どうしても耐えられない。
義母のディスに耐えている長女ちゃんに対しては、たぶん子供時代の自分を重ねてしまうのだろう、気の毒すぎて見過ごすことが出来ない。「大人として守ってあげないと」という意識が働いて、しかもそれが上手く行かずに空回りする。
義弟嫁さんがいる場合は同じ行動を、今度は「義弟嫁さんが怖い」という動機で行ってしまう。これは完全に、自分の母と義弟嫁さんを重ねてしまっている。義弟嫁さんのストレスが溜まったとしても、恐らく義弟嫁さんが毒親でなければ、義弟家の子供たちに向けられる事もないはずだ。きっと、多少義弟が文句を言われるぐらいで済むはずである。何にしても絶対に、義弟嫁さんのストレスが私に向けられることはない――そう分かっている、分かっているのにどうしても、「この後」が恐ろしくてしょうがない。

義母の実子である3兄弟――夫・義弟・義兄は揃って義母から距離を取り、あるいは義母が何を言おうと完全に無視した状態で、話を全く聞かない姿勢を貫く。これは彼らのデフォルトである。
恐らく、義母の無神経トークに対する最適な対応というのは、彼らのような「完全無視」なのだ。

だが幼少期から、母の長話を真剣に聞き続けるよう強要され、気のない相槌を打っただけで叱られてきた私には、「喋り続ける義母を無視する」事もまた恐ろしい。
赤の他人ならばともかく、肩書として「母」であるという怖さ。いかにも語調の強い話し方、声の大きさ。一言で言えば相性が最悪としか言いようがない。

最強クラスの「私は気が強く、ポジティブでサバサバしている代わりにちょっと無神経な人間です」という仮面をかぶってようやく、正面から会話を受けて立てる。そんな義母の話を「無視する」ことが出来るようになるために、私はどれだけの修練を積まねばならないのだろうか。
私が鈍感力を十分に身に着けるのが先か、満73歳の義母が亡くなるのが先か。いや、一番手っ取り早いのは会う機会をゼロにすることではなかろうか。

どうあれ、今年のお盆イベントは終わった。
たった3時間で膨大な量の精神エネルギーを消費したが、とにかく終わった。

自分の終活に興味を持ち始めたらしい義母から、「ワタリさん、近くのお寺あるでしょ!○○寺!あそこの永代供養がいくらかかるか調べておいて!今の人はネットでいくらでも調べられるでしょ!!」などと余計な用事を頼まれたが、急ぎの用事でないのは明白だし、後日LINEを送りつけるか、プリントアウトした紙を夫に持たせてしまえばいい。
とにかく、お盆は、終わった。

このささやかな幸福を噛みしめて、数日間は自分のメンタルの回復に努めようと思う。

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