Varrentia | 渡井翔汰

Varrentia | HALO AT 4JOHAN

Varrentia | 渡井翔汰

Varrentia | HALO AT 4JOHAN

最近の記事

物語に取り憑かれた男

生きている実感が欲しいと、ここ最近はよく思う。自分の人生においてそれを感じる瞬間のほとんどは"音楽"を介してもたらされていた。 去年の夏頃に表舞台に立つ事を辞めようと思った。ある人は数年前「俺たちは音楽に呪われているから死ぬまで逃れられないよ」と言った。呪いかどうかはさて置き、音楽を辞める選択肢はなかった。幸いなことにいまだに音楽で飯を食べて暮らせているし、歌と音楽のない人生は考えられなかった。ただもう人前に立つ事に疲れ果ててしまった。だから音楽を携えたまま姿を消そうと思っ

    • 3年周期と原点回帰

      4月になった。大それた理由がなくとも何かをはじめることが相応しいと思わせてくれるそんな時分に、僕は30歳の誕生日を迎えて数日が経ち、"これから"を考える前に改めて今自分がどこに立っているのかを考えていた。 この"どこ"は当然場所の話ではなく、もっと抽象的な位置の話である。 今僕の人生を占めるのは音楽活動で、それは奇跡的な確率でここ10年以上変わっていない。ただその音楽活動という枠組の中身は目まぐるしく変化を遂げてきた。 音楽の授業が大嫌いで楽器も何も弾けない少年が友人の

      • "Halo at 四畳半"活動休止に纏わるすべて

        ①はじめに 『渡井翔汰→Halo at 四畳半→Varrentia』という物語を少し振り返る。  渡井翔汰という音楽家は、Halo at 四畳半というバンドとして音楽シーンに足を踏み入れた。千葉県佐倉市で産声を上げたバンドは、インディーズ時代から同世代のバンドと共に独特の歌モノバンドシーンをライヴハウス界隈に巻き起こし、その登場人物となっていた多くのバンドがメジャーシーンへ。その中で彼らはZepp DiverCityでのワンマン開催なども含め、全国にファンを広げ、ワンマンツ

        • PALE BLUE DOT

          広大な宇宙の中、たった0.12ピクセルで写る地球には何十億人もの生活があって、物語がある。数多の音楽が犇く宇宙の中から"Varrentia"を見つけ出してくれたあなたと産声をあげたい、その宇宙に飛び込んでいきたい。 Varrentiaとしてはじめてのツアーを開催します。 東名阪を巡るワンマンとツーマンのツアー。東京はワンマン公演、大阪と愛知はツーマン公演となります。正直に言うとフル尺でワンマンをするほどの曲がまだないので、7/2までに完成した曲をすべて披露するという形のラ

          もしも歌が歌えなくなったなら

          今年の1月頭に喉を壊した。それは前回の投稿でも書いた通りで、酷い炎症を起こしているわけでもなく服薬での治療で治るだろうということだった。 確かに炎症は(たぶん)治ったのだが、次のライブでも同じ症状が出た。ライブのあとは気が気ではなく、すぐにまた病院の予約を取った。診察結果は前回と同じく、処方される薬もほぼ同じ。恐らく原因はそこに無いと思ったので病院を変えて耳鼻咽喉科を受診した。 元々慢性鼻炎持ちなのでそれが悪化した可能性があるとのことだった。鼻から喉にカメラを突っ込まれた

          もしも歌が歌えなくなったなら

          喉を壊した

          新年早々喉を壊した。1月8日、今年最初のライブのリハーサルで20分ほど歌っただけで声が枯れた。日頃歌わない人には伝わりにくいかもしれないが、平常時は特殊な訓練を積んでいるので2時間のワンマンライブをやっても枯れない。それが枯れた。リハーサルを終えて共演者と会話している時に「声おかしくない?」と言われるレベルで枯れていた。 この時2つの可能性が脳裏をよぎった。ひとつは単純に喉が何か炎症を起こしたパターン、最悪はポリープ(できもの)ができた可能性。もうひとつはステージ演出のスモ

          VarrentiaとHalo at 四畳半

          ソロプロジェクト"Varrentia"(読:バレンティア)を発足し、第一弾楽曲"NEW DAWN"のMVが公開され、音源が配信リリースされた。 "Varrentia"とは"物語"を意味する"Narrative"のアナグラムである。なのでVarentiaでもValentiaでもなくVarrentiaが正しい表記。 公式的な報告はSNSでも行っているのでここまでにする。ここからは渡井翔汰個人の話。 まず、この報告は皆の目にどう映っているのだろうか。嬉しい、寂しい、様々あると

          VarrentiaとHalo at 四畳半

          BEFORE DAWNについて

          2021年6月8日、僕が9年間所属していたロックバンドHalo at 四畳半が活動を休止した。最後のワンマンライブには"Good night,Good youth"という名前を付けた。このバンドは僕の青春そのものだった。 活動休止を発表したのは今年の頭1月13日。だけど活動休止自体が確定的となったのは昨年の11月頃。あの日から僕の心の中はずっと深い深い夜の中にいるみたいだった。活動中に何度か「この先を見据えて今は前向きでいます」と発言したと思うが、あれは半分本当で半分嘘だっ

          BEFORE DAWNについて

          続・発条式短編奇譚 第一回「凸と凹」

          「凸と凹(でことぼこ)」 私は商いをしている。 この場所に店を構えてもう何年が経つだろうか。 聞くところによると世間では疫病や災害による影響で大きく経済が傾くこともあったようだが、その点私の商売にはそういった影響がほとんどなかった。そもそも直接的な影響が届くはずもないのだが。 ここは人通りが多い。私の揃えた商品達はお世辞にも美しいとは言えないものばかりで、それなのに立ち寄った人々は必ずそれらを手にして店を出て行く。こんなものを喜んで手にする気がしれないが、食いっ逸れる気配

          続・発条式短編奇譚 第一回「凸と凹」

          苦悩の裏

          近頃様々な事が目まぐるしく起こる。それは活動休止に起因するものが殆どなのだが、それに対して心が全く追いついていないように感じる。深く考える事を拒んでいるように感じるのだ。 だから裏を返せば僕自身はすこぶる元気で、僕を取り囲む環境だけが早送りの様に目の前を通り過ぎていく。人生とはそういうものなのか、とも思うことはあるけれど、そういうものだと思った瞬間に本当にそういうものになる気がしてそれすらも拒み続けている。 どのライブハウスもそうなのだけど、とくに"Sound Strea

          馬鹿を辞す

          最近敬遠し続けていた音楽理論を本腰入れて学び初めている。世の音楽家達に比べて圧倒的に出遅れているけど、それは相対的に見たらの話であって、自分の人生として見たら前例が無いのだから遅いことなんて何も無いのだ、と思うようにしている。 敬遠していたのは9割方自惚れと怠慢が占めているけど、1割くらい「理論に縛られた曲しかかけなくなるんじゃない?」と馬鹿の典型みたいなことを口走っていた。 ボイストレーニングに関しても当初同じ様に口走っていたのだが、いざ習ってみると圧倒的に成長できたの

          雨垂れ石を穿て

          2021年になった。2020年の字面の美しさが好きだったのに、例年に比べて手書きする機会が少なかった。2021年は無事に書き慣れることができるのだろうか。あけましておめでとうございます。 「年の瀬感、ないなあ」と言いながら年を越したり、新年に延々と続く特番を観たり、"あけましておめでとう"の連絡振りに"あけましておめでとう"の連絡がきたり、無駄と言えば無駄なのだけどその無駄が好きだったりする。 じんわりと好きだった瞬間でいうと、この間テレンの松本から「暇だから電話した」と

          雨垂れ石を穿て

          耳鳴りの上で鳴る

          部屋では加湿器が低く唸る音だけがしている。僕の耳には高音の耳鳴りが混ざった不協和音が絶えず聴こえている。誰がこの部屋にいても加湿器の唸り声は聴こえるが、この耳鳴りとそれらが生む不協和音は僕だけのものだ。 2020年を振り返る文章を書こうと思っていた。その行為に違和感を覚えるほど僕はまだ12月にいないような気がしている。陽が沈むに連れて刺すように冷え込んだ空気だけが12月を教えていて、それ以外のすべてがバラバラに時間を止めているように思える。 今年は世界中の人間にとって絶望

          耳鳴りの上で鳴る

          「かたちのないばけもの」

          これからここに書き起こされる物語はHalo at 四畳半が2020.10.13.に開催した生配信コンセプトワンマンライブ「かたちのないばけもの」にて公開された物語です。配信時にアニメーションで流されたものを文字におこしています。 配信のアーカイブ映像が2020.10.18.の22:00まで購入可能なので、もし視聴前に内容を知りたくないという方は視聴後にご覧ください。アーカイブ購入はこちら 「かたちのないばけもの」 第一章 20XX年XX月XX日 私が”それ”を最初に

          「かたちのないばけもの」