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【#Real Voice 2023】 「思慮」 3年・竹中豪

「今年はシーズン開始から調子が良くて、公式戦も安定して出場し、結果も残せてチームも1部へ復帰できて、とても飛躍できた年になりました。」

昨シーズンが終わってから今年のシーズンが開幕するまでこんなことを思いながら自主トレしていた。
去年の終盤に悔しい思いをしたからこそ、今年こそはと意気込んで気合いも十分だった。

いざ蓋を開けてみると、開始から3週間弱で人差し指の中手骨を骨折し入院。手術して全体復帰できたのが6月。そこから9月までFC(社会人リーグ)の公式戦に5試合出場していたが、9月に脾臓という臓器を練習中に損傷し救急搬送され入院。
自分の今シーズンは終了。

まさか自分でもこんなシーズンになるとは思っていなかったし、2回目の怪我をした時はサッカーの辞め時だと伝えられている気がした。実際に救急車で運ばれて病院で検査を受けた後に、先生から
「本気で今後サッカーをしないなら、引退した方がいい」と言われて、
それを隣で聞いた親は何言ってんだみたいな顔をしていたが、それとは裏腹にベットに横になりながら頷こうとしていた自分がいた。
脾臓損傷はスポーツでも特に珍しく、プレー復帰までのプロトコール(治療計画みたいなもの)は定められていないため、スポーツに詳しくない医者が「引退した方がいい」と言ったことに悪気はないことはわかっているし、もう1回同じ事が起きると脾臓が破裂してしまう可能性が高く、出血もかなりしてしまうため命の危険があるという説明も受けたので、怒りも疑問も持たなかった。


そこから入院生活が始まり、最初の1週間は痛みが激しく食事もできず、歩行も許されないためサッカーのことなんて考える暇も無かった。そこから徐々に食事も取れるようになってきて歩行の許可も降りて退院の目処が立ってきた頃、病室に最初に診断した先生とは違う先生が来て
「実際この怪我は交通事故に多くて、スポーツ中に起きる確率はかなり低いし、ここまで本気でサッカー続けてきたのなら、復帰する方向でいいんじゃない?」
と言われ
「まあ、その方向で考えてます」
と返事をし、復帰する方向に流れが定まり数日後退院したが、内心は復帰するイメージも湧かないしサッカーのことも考えたくない状態だった。

家に帰ってきてからも、人にぶつかる事が危険なので電車に乗ることや外出を極力避ける生活を送り、ア式で活動していた頃に比べて1人でこの先の事を考える時間が増えた。考えれば考えるほど、今の状態にイライラしたり就活を頑張ろうと思っても無力感に襲われて全く進まない。
サッカーなんて見ることもしなかったし、同期からのLINEもそっけない返信しか出来なかった。
そんな状態が1ヶ月半くらい続いたが、段々メンタル的にも落ちついてきて、いろんな人と話すようになり、少しずつサッカーに向き合おうと今シーズンを振り返ることにした。


「時間は何も解決しない」

1回目の怪我から復帰する前にGKコーチの内田さんと
「FCカテゴリーで結果を残して自信をつけてから関東リーグに行こう」
と話し、自分も後期リーグが始まるまでに早く結果を残してtopチームに戻らないといけないと思っていたが、復帰戦は下位に沈んでいたチームとギリギリの戦いをして2-2の引き分けで終わり、自分のプレー的には全然悪いものではないと感じていたものの試合が終わってからのコーチの評価は
「3年生が駄目。」
そもそもFCカテゴリーは上級生が少なく、3年生も4人くらいしかいなかったし、4年生も2人しかいないので、必然的にチームを引っ張っていかなければいけない立場であることは認識していたが1・2年生が多く試合に出ていた中で、「なんで3年だけダメ出しされないといけないんだよ。」と感じていた。その後の練習からは、
「まあ勝てば何も言われないだろう」
と考え、チーム全体というより自分のプレーにフォーカスしてコーチングを多くすることぐらいしかしなかった。
その後自分が出た3試合は引き分け。
他のキーパーが出たら勝って自分が出たら引き分け。
早く戻らなきゃいけないのに結果が出ない。
完全に自信を失って、失点を恐れてプレーが萎縮していきミスが増える。
最悪のサイクルにハマっていった。

この状況における悪かった点は、「勝てば何も言われないだろう」と自分の在り方を変えずに、個人のプレーに集中して「時間が経てばいずれ結果がついてくる」と思っていたことだ。
簡単に言えば、
学年が上がったからリーダーシップが勝手についてくるわけじゃないし、
学年が上がるからプレーがうまくいって試合に出られるわけでもない。
当たり前だが何もしなければ何も変わらない。
チームがうまくいかなかった時に、ちょっとやそっとの変化だけでは他者に影響を与える事はできず、自分がどれだけ当事者意識を持って「変わろう」と思い、行動するかが他者に影響を与えて、それが結果的に勝敗に関わってくることを再認識した。




「1日1日を大切にする」

ありきたりだがこれに尽きる。まさか映画館に行ってオフを満喫していた翌日に病院のベッドで点滴を繋がれて「サッカーを今後本気でしないなら引退した方がいい」と言われるなんて思ってもいなかったし、いつ何が起こるかわからないことを身に染みて感じた。

だからこそ、
大学生活ラスト1年ぐらい、
怪我のトラウマや苦しい状況が待っていても
同期と一緒に悔いなく終われるように
全力を尽くそうと思う。


◇竹中豪(たけなかつよし)◇
学年:3年
学部:人間科学部
前所属チーム:FC町田ゼルビアユース


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