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【#Real Voice 2023】 「日々の積み上げ」 3年・木原爽汰

2023年1月下旬。シャルルドゴール空港(フランス)に到着し、地に足のつかないような興奮感と不安感が混沌する複雑な感情を抱きながら、いよいよ半年間のフランスサッカー留学が始まった。

フランス留学では、サッカーを軸に、それ以外の部分(語学学校や寮生活等)でも多くの刺激を受けた。毎日が新しいことの連続で、充実した日々であったと心の底から感じている。もちろん、良いことばかりではなく、嫌な出来事もたくさん経験したが、総じてそれらの経験は自身の人生にとって財産であると肯定的に捉えたい。

さて、フランス留学のことで書きたいことはたくさんあるが、あくまでリアルボイスであることを考慮し、フランスでの印象的な体験とそこで学んだこと、そして現在の本音の部分について整理しながらブログを綴りたい。
フランス留学で多くの経験をしたなかで、わざわざこの出来事を書くかは正直かなり悩んだが、今の自身の価値観に大きな影響を及ぼしているため、あえて取り上げる(留学でなくても経験するかもしれない出来事であるが)。

フランス生活にも慣れ、チームメイトともようやくコミュニケーションが取れるようになり、充実した日々を送っていた留学4ヶ月目の練習試合の日、突然チームメイトの1人が倒れてしまった。

初めは接触の際にどこか痛めてしまったのだろうかと他のチームメイトと首を傾げていると、駆け寄ったチームメイトが半泣きの状態で、また見たこともないような焦った表情で監督の名前を大声で叫んだ。
倒れた原因は心臓発作だった。日本でも経験したことがない出来事であったので私自身も大きく動揺した。助かってくれと願ったが、その場では容体が回復せず、続報を待った。
現場の緊迫感や涙をこぼす人たち、助かることを必死で祈るチームメイト。全ての光景を今でも鮮明に覚えている。


その翌日、監督の迅速かつ適切な処置のおかげで無事一命を取り留め、会話できる状態まで回復したと連絡が入った。今では競技復帰も果たしている。

とにかく、「助かってよかった」という安堵感と共に、今ある当たり前の生活がいつ終わるかわからない恐怖感と日々の日常、サッカーをできていること自体が当たり前のことではないという「現実」が私の脳や心を支配した。

それ以降、日々の日常を大切にすることを意識しながら、特に自分は異国の地で大好きなサッカーができる喜びをこれまで以上に噛み締めながら、残りの留学生活を送った。1日も無駄にしないように、練習・試合といったチームの活動時間だけでなく、そこに至る準備の部分やリカバリーの部分にも一層こだわり続けた(もちろんそれまでも十分意識していたことであるが、上述した出来事がきっかけでより目的意識を持って取り組むようになった)。


しかし今の私はそこでの「学び」を活かせているとは言い難い。


帰国後、なかなかサッカーの部分で上手くいかず、日々もがきながらも何となく1日を過ごしてしまっているように感じる。もちろん、一生懸命練習に取り組んでいないわけではない。

ただ、
もし今日がサッカーのできる最後の日であったら、私は納得してスパイクを脱ぐことができるだろうか。それだけ濃い毎日を過ごすことができているだろうか。という問いに対して納得感を持って頷くことができない自分がいる。

フランス留学を通じて痛感させられた、フィジカルの部分や球際の部分。帰国後に感じた判断の悪さやミスの多さ。多くの課題が残る中でその弱みに心の底から向き合い、必死に改善しようと努力できているだろうか。1年生の時に書いた「自分にベクトルを向け続ける(弱みに向き合い、愚直に努力する)」ことを継続できているだろうか。

ミスや良くなかったプレーを映像で見たり、仲間からの意見を聞き入れるだけで、どこか弱みに向き合ったと錯覚している自分がいる。

納得感を持てるくらい弱みを構造化・言語化し、弱みの本質を理解し、問題解決の方向付けをする。弱みに向き合うことの重要性は高校2年生の頃の経験からも痛いほどわかっている。高校2年生の時にサッカーノートを通じて自身の弱みや課題を言語化し、監督からのフィードバックを受けて、弱みの本質を理解し、その弱みを改善しようと努力し、さらにフィードバックをもらい、さらに改善というPDCAを繰り返した。自身の弱みに向き合い、愚直に努力するというプロセスを踏んでいった中でチームの奇跡的な残留経験に関わることができ、個人としても大きく成長できた1年間であった。ある意味補助輪付きのものであったが、多くの気づきをもらった経験でもある。弱みに向き合うということは地道であり蓋をしたくなってしまうようなことであるが、それでも技術的な部分で小学生の時ほど成長が見込めない大学サッカーにおいては、本当に大切なことであり、それが「考えて」サッカーをするということでもあるのだと思う(例えば、ミスが多いのはボールを受ける前に周りを確認していないからなのかそれとも技術的な問題なのか否か。仮にボールを受ける前に周りを確認していないことが根本原因なのであれば、パス練習の際に人一倍周りの状況を確認する、間接視野でもボールコントロールできるようにするといったように)。

地道であるが、雨垂れ石を穿つというように日々地道に弱みに向き合い続け、課題を克服し、上述した出来事で学んだ「日々の日常を大切にする」ということを意識しながら1日1日を積み上げていくことが、私自身成長するための唯一の手段であると自分が1番わかっている。

1ヶ月ほど前、母校の早実(早稲田実業)が歴史上初めて全国大会への切符を手にしたが、そんな誇り高き後輩たちに負けないくらい弱みに向き合い、愚直に目の前のプレーにこだわり続け、少しずつでいいから成長し続けたい。発展途上の自分に自信を持ちたい。

ア式蹴球部での生活も残りわずかで、1年後にはプロやアマチュアリーグに行って日本でサッカーを続ける人、はたまた海外でサッカーを続ける人、サッカーとは関係なく留学する人、一般企業に就職する人、大学院に進学する人など、さまざまな選択肢が存在するが、どんな選択をしても、どんな未来が待っていようとも、ア式蹴球部での4年間がかけがえのない、人生の財産となるよう1日1日、いや、目の前の1つ1つのプレーに「拘り続けたい」。

日々厳しさを追求する連続性のその先に、大きな達成感と見たこともない景色に到達できることを信じて。


◇木原爽汰(きはらそうた)◇
学年:3年
学部:教育学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部


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