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【#Real Voice 2022】 「何者」 4年・中村亮介

16年間も続けてきたサッカー人生がもう少しで終了しようとしている。
何も成すことができなかったが、悔いはない。
あそこで頑張れなかったのも、勝負できなかったのも、全部自分の実力。もしもこうしていたらなんて世界は存在しない。

そんなサッカーをした16年間を少し振り返りたいと思う。
小学1年生でサッカーを始め、中学でプロになるという夢を叶えるため静岡学園に入学した。高校では試合に出ることができず、BチームとAサブを行ったりきたり。このままじゃ終われないと早稲田大学のア式蹴球部に入部するが、晩年Bチームで過ごすことになる。

ざっと自分のサッカー人生をまとめるとこんな感じ。

経歴もさることながらプレーも客観的に見て、パッとしないサッカー選手だった。結局ポジションもどこが適正なのかも分からずに終わった。

こんなサッカー人生だったけどサッカーを通じて俺は多くのものを得た。
その中でも2つ自分にとって大きなものがある。

1つ目は仲間の存在である。
少しくさい話になるかもしれない。

この16年間、多くの時間をサッカーの仲間と過ごしてきた。
大学の4年間、文句を言いながらも一緒に頑張ってきた仲間、高校時代に寮で一緒にバカしていた仲間、中高一貫で6年間一緒にいた仲間。今思えば最高に楽しかった。そんな仲間のおかげでこれまで頑張れた自分もいる。本当にありがとう。

2つ目は何者にもなれない自分を経験したことだと思う。
これは上を目指し続けてきたからこそ得ることができた感覚だと思う。

こんなに努力して上を目指して取り組んでこの程度かと、大好きなサッカーに対してもこの程度かということを、勝負の世界は自分にとことん突きつけてくれた。


十分努力してそれでも何者にもなれない自分を経験することで、もしかしたらできていたかもしれない自分を抱えて生きることがなくなる。

これは決してネガティブなことではない。

努力する際に最も怖いことは、最大限努力した結果、何者にもなれない大したことのない自分を知るのが怖いということである。

結局自分は何者にもなれない。全力で取り組んでも大したことのない人間がまず全力で取り組まないでどうする。


最後に、ここまでサッカーを続けさせてくれた家族には感謝しかない。
中学時代、朝5時半の電車に乗るために、朝4時に起きて弁当を作って、車で送り迎えをしてくれた。おかげで学校に行って朝練ができていたし、不自由なく学校生活をおくることができていた。
これはほんの1部の話に過ぎない。16年間、どんな選択をしても背中を押してくれる両親の支えがあってここまでくることができた。本当にありがとう。

来年から社会人になる。サッカーの経験がどう社会に生きてくるかは分からない。全く力にならないかもしれない。その中でも楽しく過ごすために精一杯頑張ろうと思う。


字数が足りないので最近読んだ、朝井リョウさんの作品の「正欲」という本について書いていこうと思う。

この本で重要になるテーマは多様性である。
人と違う性癖を抱えた数人の日常を描き、多様性について問いている。

これまで大学生になって多様性という言葉を耳にする機会が増えた。ア式蹴球部でもよく使われる言葉だ。1年生の時にア式蹴球部は多様性のある部員がいるという言葉を聞いて違和感を感じたのを覚えている。どちらかというと似た人間が集まっているだろと。何年間もサッカーを続けてきて、自分が選択した先にア式蹴球部があったのだから、似た人間が集まるに決まっていると。

この本ではそんな多様性をこんなふうに表現している。
「想像を絶するほど理解し難い、直視できないほどの嫌悪感を抱き距離をおきたいと感じるものにはしっかりと蓋をする、そんな人たちがよく使う言葉たち」

多様性という言葉は便利だからこそ、使い方を間違ってはいけない。自分の行動を多様性という言葉を盾にして正当化することもできるし、上記のように多様性を使って周りとの関係に蓋をすることにもなる。この本を読んでもっと多くの感情が生まれたけど、言葉にするのが難しいから、興味がある方には読んで欲しい。

笑っても泣いても後少しだ、みんながんばろう。

◇中村亮介◇
学年:4年
学部:人間科学部
前所属チーム:静岡学園高校


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