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墓場珈琲店。

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現代社会における『死』をテーマとした、フィクションの短編集です。抵抗のある方はご遠慮ください。
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2020年12月の記事一覧

墓場珈琲店7。

墓場珈琲店7。

「うげぇぇ、どうしよ、これぇ…」

私は目の前にあるモノをみて、ため息をついた。
そこには、もはや骸と化した黒色の液体──すなわちチョコレートがブチまけられている。

こんなはずではなかった。

理想ではもっと上手にチョコレートを作って、今日という日を大成功させるつもりだった。
しかし、現実はそううまくはいかないもので。

チョコレートの作り方を知らぬまま、インターネットでカカオを注文。
そこから

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墓場珈琲店8。

墓場珈琲店8。

わたしは、ここ数カ月ずっと飲んでこなかったコーヒーを啜った。

いつもはミルク以外飲まないのだが、今日のわたしはブラックコーヒーの気分だった。黒い液体の温かい味が、舌に染み渡っていった。

その苦みと一緒に、脳内に記憶が溢れてゆく。
わたしはコーヒーの器を机の上に置き、目を伏せる。
悪い気分と苦い味を一緒に感じながら、さらにわたしは静かに涙を零す。

***

「なんで、延命治療なんて言うのですか

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