ハーミルさん、ゴールウェイに住む!
それは「わたしの街はやっぱりゴールウェイだ」と決めて、お隣のクレア州のエニスからゴールウェイに戻ってきた翌日のことでした。
パブでつい目の前にあったピーナッツを食べてしまったことから、「僕のピーナッツを食べた」と言って話しかけてきたアイリッシュの男性と会話がはずみ、その流れで、「わたし、家を探してるの」と問いかけたの。
すると、彼は、
「You are asking this question to the right person」
(きみは正しい人にその質問をしているよ)
と言ったのでした。
どうやら、彼の家には使ってない部屋があるらしい。
酔っ払いながらも、パブで知り合ったばかりの人の家に住むのはどうなの?っていう冷静な気持ちと、アイルランドでの家さがしはかなり苦難な現実との狭間で、どうしようかな... という気持ち。
彼は言いました。
「きみの不安は分かるよ、でもせっかくだし見に来るだけでもどう?それで嫌なら遠慮なく言って。」
そこに、エニスで出会った、現地事情を色々と教えてくださるアイルランド在住歴17年の男性がたまたまゴールウェイに来ていて偶然パブの前に現れたので、そのことを話してみました。
すると、
「行っておいで!行っておいで!」
まだ当時知り合って3週間程だったにもかかわらず、親身になって心配してくれる面倒見のいい彼がそう言ってくれたのには半分驚きながらも、じゃあ、見るだけならいいか、と思い、パブを出て彼についていってみることに。
街の中心部から外れて3分程、静かな住宅街を歩いたところに、黄色いドアの小さな家がありました。
シャムロックの柄が彫られた小柄の暖炉、リビングルームからキッチンを区切る壁は上半分がガラス張りになっていて、えんじ色のタイルがポイントのキッチン、扇模様が刻まれた天井、とても可愛いアイルランド風の小さなお家でした。
部屋に行ってみると、シングルルームなのに広めのお部屋。少しくすんだ黄色に塗られた壁に、出窓から眺める景色は綺麗に手入れされた隣の家のお庭のガーデニングが見える。床のじゅうたんの模様も気に入った。
「え、なにも言うことないよ、申し分なさすぎる。で、レント(家賃)はいくら?」
わたしは尋ねると、彼は、
「僕はこの家に600ユーロしか払っていないんだ。家主と仲良くてね。だから、300ユーロでいいよ。僕が直接家主と契約してるから、デポジットも要らないよ。」
と言ったのでした。
当時の家賃相場はシングルルームのとても小さい部屋で350ユーロから。しかもこのお家はシティセンターに位置しているし、ゴールウェイで伝統音楽が楽しめる有名な老舗パブなんて徒歩3分という立地。ロケーション、値段、部屋の広さ、家の可愛さ、すべて完璧だった。この男と二人きりで住むことを除けば...。笑
わたしは言いました。
「正直に話すけど、今は突然のことに冷静になれないや。お家は本当に気に入ったし完璧だよ。だけど一回落ち着いて考えていいかな。。」
すると彼は続けて、
「もちろん。きみの気持ちは理解するよ。また明日、連絡してよ。」
と言ってその日はお別れしたのでした。
一体わたしに何が起こったの... 。冷静になりたくて、エニスに住む日本人の男性に歩きながらすぐ電話して相談しました。彼もその後心配だったようで連絡が入っていたみたい。
「どうだった?まぁきみの直感だよ」
わたしは正直少しの恐怖心さえ覚えてた。あまりにも良い話すぎて、なにか裏があるんじゃないか..。でも、現状アイルランドの家探し事情は本当に深刻で、1.2ヶ月家が見つからないなんて普通のこと。男性と二人で住むっていうのは普通の日本人女子では考えられないかもしれないけど、そんなこと言ってられないくらい家探しは大変で、男性だけが住むシェアハウスに一人女性が住むことも、欧米では結構あること。
その日は心が落ち着かない中、ホステルのベットで就寝してみるのでした....
(つづく)
読んでいただきありがとうございます! これからもわくわくする物語を綴っていけたらと思います。 続きが気になる方はぜひフォローして頂けるとうれしいです*