見出し画像

すぐれた教師の何が一番違うのかというと、「強み」が桁はずれに強いのだ

反響定位とは、音とその反響を利用して、さまざまな物体を発見し、位置を特定することである。物体にはね返って送信者の戻ってくる音波からは、物体の距離、大きさ、動き、速さといった情報が得られる。

脳の貴重な領域は、どれも別の機能で使えるようになっている(中略)視覚に障害のある人の中にはエコロケーション〔反響定位。音波を発し、その反響によって物体の位置などを知ること〕を使って歩きまわれるようになる人もいる(中略)エコロケーションの達人は大きなものの形や動き、位置がわかる(中略)視覚が使われないと、ほかの機能が取って代わる。脳は貴重な領域をただ遊ばせておくことはしないのだ。

本書で紹介する災難のなかには、これまで活字になったことがなかったり、ほとんど注目されたことのないものもいくつかある。

人によっては、好戦性をまったく示さずに人と能動的にかかわる態度を選び取れる者もいるのだ。それがアサーティブ(自己表明)・パーソナリティであり、きちんと自分の意思を主張できるこのパーソナリティこそ、私のもっとも健全な人格だと考えるタイプである。

すぐれた教師

すぐれた教師の何が一番違うのかというと、「強み」が桁はずれに強いのだ。

驚くことにサイコパシーが大きな問題を抱えているのは事実だが、その結果苦しむのは周りの人や社会である。

残念ながら、人は特別であると同時に普通ではいられないのである。

教科書の一つ『私たちの健康生活』(中教出版)では、優生学の創始者の一人とされるイギリスのフランシス・ゴルトン(1822ー1911、進化論のチャールズ・ダーウィンのいとこである)の肖像画まで掲載して、「優生学という学問は、遺伝の学問を基礎にして、民族の質をよくすることを研究する学問である。英国のゴルトンは1869年『遺伝的天才』を発表して、優生学の基礎をおいた。優生学はわが国でも研究されている」と解説(中略)項目の中で、「悪い遺伝によって不幸な人の生まれることは、その家庭にとっても重荷であるばかりでなく、社会にとっても困ることであるから、わが国では、1948年に優生保護法という法律を出して、社会の健康をはかるために、なるべく悪い病気のある者に手術をほどこして、その子供が生まれないようにすることが認められた」と誇らしげに述べている。それと前後して「色盲の遺伝」と題した家系図の解説がつらなる(中略)『保健体育科辞典』(恒星社厚生閣)の「色弱」の項目にも、「職業選択などの日常生活に注意するとともに、結婚などにおける優生対策が予防上大切である」という記述がある(中略)「色覚異常」が、排除のための装置として安易に利用されている(中略)遺伝学者がそのまま優生論者であったことも多い(中略)日本では1970年代まで、中学・高校の「保健」の授業で、「結婚」について、「色盲」などの「先天遺伝疾患」の持ち主が結婚し家庭を持つことには慎重であれという指導を行なっていた(中略)その根拠となった「優生保護法」は1996年まで「現役」だった(中略)娘が先天色覚異常の男と結婚しようとするなら、一族をあげて大反対する。あるいは結婚相手の身辺調査をして先天色覚異常の親類はいないか確認する。先天色覚異常の当事者たちは、ひたすら黙り込み、自制を強いられる。生まれつき劣等に生まれた者として、自らの出自を呪い、その呪いの遺伝子が娘や孫に伝わることを恐れる(中略)本当に無茶苦茶な話だが、こういったことが「社会のため、本人のため」という理由で実際に行われていた。色覚異常の当事者たちは、まさにこのような社会の中で、学校の教科書に書いてある公の指導として「不用意に結婚したり、子供を産んだりすることを避けなければならない」と言われ続けたのである。

修羅場をかいくぐっているから、洞察力がついてくる↓

人生ではつらいことも起きるが、どんなできごとにも、おもしろおかしい面はある。それを探そうと決めるだけでいい。深刻なできごとほど、楽しいことにできるはずだ(中略)もっとも大きな恐怖を感じる洞窟には、もっとも偉大な宝が眠っている。

みんな自分の持っている感覚を総動員して生きている

ぼくはブラインドサッカー(視覚障害者のサッカー)の小説を書いている関係で、全盲の知人も多いのだが、「焼肉の焼け具合? 分かるよ。だって、脂がバチバチはねなくなってくれば焼けてるから」と、本当に問題なく焼け具合を判断している人もいることも注記しておきたい(中略)みんな自分の持っている感覚を総動員して生きているわけで、1つの感覚の性能のみで全体を語るのには慎重でなければならない(中略)生物学的には様々な意味で「正常」と「異常」に分かち難い多様性が、まさに連続性をもって分布しており、それも進化の中で培われたものである可能性が高い。

デカルトの方法はサーストンやベン・アンダーウッドの方法を思わせる
視覚野は聴覚に接収される

外界から何も信号が送られてこないからといって眠っているわけではない。空いているその資産を、他の感覚や活動が利用しに来るのだ。目の見えない人の場合、視覚野は聴覚に接収される(中略)つまり音は、目の見えない人の脳内では二倍の力をもつということだ。これと逆のことも成り立つ(中略)以上のことから、「主たる感覚のどれかを失った人の脳内では、使われなくなった領域のニューロンが他の役割のためにはたらき出す」というたいへん興味深い結論が導き出された。

4次元と5次元で見える

(※コーネル大学教授、数学者のウィリアム・)サーストンは意識的に、かつ丹念に世界を想像する能力を発達させた。訓練を重ね、2次元の映像を頭のなかで縫い合わせる努力をした結果、ついに世界を3次元で見られるようになった。しかし、これほど実りある取り組みなら、ここで止める必要はない。サーストンは同じテクニックでさらに先へ進めることに気づいた。3次元の映像を組み合わせて4次元で見る術を身につけ、4次元の映像を組み合わせて5次元で見る術を身につけた。サーストンはこのアプローチによって、3次元の場合でさえ、それまで誰にも見えなかったものが見えるようになった(中略)サーストンがいう4次元と5次元で見えるとは、どういう意味だったのだろう?(中略)偉大な物理学者、ジョン・ドルトンは、自分自身の体験から色覚異常を発見した(中略)色覚異常を説明する言葉が考案される以前にドルトンの視点から語られた話は、不条理演劇に似ている(中略)1790年、ドルトンは植物学に興味をもちはじめた。花の色を見分けるのには苦労したが、それほど深く傷つくことはなく、必要なときは助けてもらえた。ただ、花の色がピンクか青かを尋ねたときは、相手の顔に「ばかにしているのか」と言いたそうな表情が浮かんだ。ドルトンにはその理由はわからなかったが、追求したことはなかった。じつのところ、色をめぐる会話がいつも微妙に噛み合っていないことには気づいていた。ドルトンが1792年秋に驚異的な特徴を備えたゼラニウムを発見しなければ、誤解はいつまでも解けなかっただろう(中略)これが、色の知覚に関する実験研究の出発点である。この研究によって、ドルトンは色覚異常とその遺伝的特質を明らかにすることができた(中略)ドルトンの強みは並外れた推論力ではなく、何かがおかしいことを感じ、解明されるまで問題を投げ出さない能力である(中略)色覚が正常な人は真に受けない。サーストンが5次元で見えるといっても、サーストン以外の人にはなかなか信じられない(中略)本当のところサーストンに何が見えていたのかはわからないが、その数学の業績を前にすれば、私に見えないものが見えていたことは間違いない。サーストンの文章の書き方を見ると、自分に見えているものを私たちに教えようとしていることがうかがえる。彼は、それを直接見せたくてもできないことがわかっていたので、数学に取り組んだのだ。※引用者加筆.

女性には並外れた色覚が備わっている可能性がある
目がいいやつ

女性の中に、事実上の「4色覚」といえる人たちが稀にいることを、ケンブリッジ大学のモロンとニューカッスル大学のガブリエル・ジョーダンの研究グループが示している(中略)通常の3色覚よりももっと細かく色弁別する人たちがいたというものだ(中略)その一方で、4色覚の当事者は、3色覚者には同じ色に見えるものが違って見えてしまうわけだから、そういう人もまた色のコミュニケーションにおけるマイノリティになりうる(中略)人を襲う捕食者も、カモフラージュされている場合が多い(中略)例えば、狩猟採集生活をしていた頃の祖先に思いを馳せてみよう。リーダーが、狩に赴くグループを編成する際には、投槍の名手や、勢子として走ることができる者、獲物を運ぶ力自慢といった様々なことに秀でた人々に加えて、カモフラージュされた獲物や、こちらを狙う肉食獣を誰よりも早く見つけることができる「目がいいやつ」(つまり、それは今で言う色覚異常である)も一緒につれていきたいだろう(中略)2色型は、明暗を使ってものの輪郭を見分ける明度視に秀でている(中略)色覚が実はものの輪郭を見るための神経回路をそのまま流用しており、輪郭を見る能力を犠牲にしている(中略)カモフラージュしているものに対しては2色型のほうがより強い(中略)特に森の中で日が差さない暗いところに行けば行くほど、2色型が有利で、3倍近く効率がいいんです。統計的にもきちんと有意です(中略)ヒトをサーベイすると、まず2色型、眼科の言葉では2色覚が一定数存在

米国陸軍航空隊

色覚異常の雄のオマキザルは、葉や樹木の表面にいるカムフラージュした昆虫をとてもじょうずに見つけ、タンパク質を探しているときなど大手柄を立てる。このオマキザルの事例が、色覚異常の男性で観察される事例とぴったり重なる(中略)米国陸軍航空隊の軍事演習でカムフラージュした大砲を空中から特定する任務に際し、ひとりの隊員がひとつ残らず見つけ出したのに対し、ほかの隊員たちは手こずった

アメリカ兵を対象にした調査

イラク、アフガニスタンに派遣されたアメリカ兵を対象にした調査も行われている。ある調査によれば、兵士の中には、爆弾がしかけられていそうな場所を他より敏感に察知する人がいるという。 その場に少し不似合いな岩がある、ゴミが不自然に積み上げられている、といったごくわずかな手がかりを見つけだすのだ。

第一次および第二次大戦では、どちらの陣営も色覚異常の兵士を求めた。カモフラージュに惑わされずに正体を見抜くことができるからだ(中略)ハンターの一人が色覚異常なら、彼は潜んでいる肉食獣や背景に溶け込んでいる獲物を見つけるのが得意だろう(中略)実は社会はこの原理に基づいて編成されている。

エキスパートのやり方がわかれば、それを素人に直接教えられるという発想は魅力的ではありますが、実際には無理↓
人は時間がないときにも一時的に自閉症に↓
その役を演じている限り、そのアイデンティティをもちつづける↓

レオナルドの嗅覚には問題があった。その結果、腐敗臭を感じることなく解剖に集中できた。おそらく嗅覚を司る脳の隣接部位の能力が向上したのだろう↓

デカルトが最大級に偉大なのは、「私が考えた。だから私は存在する」↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?