キリスト教徒とイスラム教徒に長年迫害されてきたヤジディ教徒は、神以外に屈服することを拒んだターウース・マラクという名前の大天使を崇めている。彼らに敵対する人々はターウース・マラクを悪魔とみなし、ヤジディ教は悪魔崇拝だと非難している。学者の意見では、この宗教はアブラハムの宗教───キリスト教、ユダヤ教、イスラム教───よりも古い起源を持ち、後代のたくさんの伝統を吸収してきたのだという。 ターウース・マラクはクジャクの姿をしているのだが、クジャクよりも東方から来た外来種の鳥で、早くも紀元前二〇〇〇年にはラリッシュから南に五〇〇マイル(約八〇〇キロ) 離れたウルへ持ち込まれていた(中略)ヤジディ教の信仰によると、聖なるクジャクがラリッシュに降り立ったのちにエデンの園のアダムに会い、太陽崇拝について説き示したのだという(中略)ニワトリは昔もいまも、いわば羽の生えたスイス・アーミーナイフで、与えられた時間と場所に応じて必要なものを提供してくれる万能動物なのだ(中略)「父はこう言いました。 『あいつら(※自分の飼育しているニワトリ)のことを好きなのは、飼いならす方法がないからだ』。 そしてこう言ったんです。『あいつらのありのままの姿が好きなんだよ───野生の姿が』 」※引用者加筆.