抗がん剤のほとんどは、細胞を障害する細胞毒という性質を持っています(※第一次、二次大戦で使われたマスタードガスを小児白血病に試したもの)(中略)抗がん剤はひんぱんにDNAを複写して増殖する、がん細胞に作用します。しかし、同時に正常細胞にも少しは作用しますので、副作用を避けることはできません(中略)これに対して分子標的薬は、DNAにじかに作用することはありません。がん細胞を無限に増殖させる信号を送る物質(分子)か、信号を受ける物質(分子)に作用してブロック(阻止)します。だから正常細胞に副作用がないか、あっても少ないと考えられました。しかし、正常細胞にもがん細胞と同じ分子が少しはありますので、まったく副作用がないわけではありません(中略)分子標的薬には、約50種類の製品があり、ハーセプチンはもっとも代表的な製品のひとつ(中略)オプジーボが使われだしてから4年たった現在、効果があるのは20〜30%程度(中略)一般の抗がん剤は、20%の効果があることが証明されれば認可されるのですから、この奏効率をとくに問題にすることはないでしょう。延命効果のほうは、平均して2カ月だといわれます(中略)そもそも標準治療は、患者が副作用にたえられる最大耐用量を、休薬期間をおきながら短期間に投与して、がん細胞を死滅させようとする方法です。しかし精巣がんと、白血病や悪性リンパ腫のような血液のがんをのぞけば、この方法は有効ではありません。化学療法だけではがん細胞を根絶することはできませんし、化学療法はいずれは効かなくなる薬剤耐性という宿命をおびています。薬剤耐性が起こらなくても、患者はやがて副作用に耐えきれなくなるでしょう(※抗がん剤の問題は腸内細菌のバランス乱れること)※引用者加筆.