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【犬の多頭飼い】ストレスによる免疫力低下に注意⚠【獣医師監修】

みなさん、ストレスは溜まっていませんか?

わんちゃんに癒やされたい!と思って犬を買い始めた方も多いのでは?

人間も犬も動物ですから、生活環境によってストレスを感じます。

人間をはじめ、動物はストレスがかかるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが出てきます。これは普段から身体の健康を維持するために必要なホルモンです。

しかし、強いストレスが持続的にかかることで、血中のコルチゾール値が常に高い状態が続いてしまうと、免疫力の低下など様々な悪影響を及ぼします。

人では職場や家庭のストレスがコルチゾールの上昇と関係しているとされていますが、犬でも生活環境などのあらゆるストレスでコルチゾール値が上昇します。

今回は犬の多頭飼いとそのストレスによる免疫低下についてお話します。多頭飼いをされている飼い主さん、また、多頭飼いを検討している飼い主さん必見です!!

犬のストレスによる免疫低下に注意

しほ先生『今回は、新しくワンちゃんを迎え入れてから、先住犬がなんとなく元気が無くてストレスが心配、という飼い主さんがご相談にいらっしゃっています。とうの先生、よろしくお願いします。』

とうの先生『飼い主さん初めまして。獣医師のとうのです。よろしくお願いします。』

相談者『初めまして。よろしくお願いします。』

とうの先生『ワンちゃんのストレスが心配、ということですが、具体的にどういった状況なのでしょうか?』

相談者『はい。私の家には7歳のチワワが先住犬としているのですが、1週間ほど前に新しくわんこを迎え入れまして。その頃から、先住犬の方が尻尾を下げていることが多くて、なんだか元気がないように見えるんです。

新しく来た子は先住の子より体格がいいから怖がってしまっているのかな、と思うのですが、この状態が続いたらストレスで病気になってしまったりしないか不安で相談にきました。』

とうの先生『なるほど。尻尾を下げてしまっているということなので、やはり不安を感じているのでしょうね。結論から言うと、ストレス状態がずっと続くと免疫力が低下するなど、病気のリスクが上がってしまいます。』

犬のストレスと免疫力の関係

ストレスがかかるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが分泌されたり、自律神経が刺激されたりと、様々な反応が身体の中で起こります。

このストレスホルモンや自律神経の調整は身体を守るために本来必要なものですが、長く続く強いストレスは、結果的にリンパ球などの免疫細胞の働きを抑制させてしまうなど、免疫力の低下や、自己免疫疾患の発症、アレルギーを引き起こす可能性が高まると言われています。

ストレスの種類も様々で、気温の変化もストレスになりますし、人では職場や家庭などの生活環境でのストレスがコルチゾール値を上昇させると言われています。

動物も同じで、犬では暑さや騒音、激しい運動や逆にケージに入れられた時、大きな犬と対面した時などにコルチゾール値が上昇することが分かっています。

相談者『なんだか少し難しいですけど、やっぱり、ストレスは病気の原因になるということですね…』

とうの先生『そうですね。簡単に言うと「ずっと強いストレスがかかった状態だと、免疫力が落ちる。」ということです。

科学的な意味での「ストレス」とは、気持ちの問題だけではなくて、周りの環境の変化というものも含まれます。』

相談者『なるほど。でも、新しく迎えいれた子だってもう私たちの家族ですし、手放すなんて絶対にできません。どうしたらいいのでしょうか?』

とうの先生『もちろん、ストレスの原因が分かっているのであれば取り除く、というのは対処法のひとつではあります。

でも、おっしゃる通りで、先住犬の子が新しく来た子を怖がっているからという理由で手放すなんてできるわけがないですよね。となれば、慣れさせるしかないのです。』

犬のストレスへの対処法

先にもお話したとおり、「ストレス」とは精神的な問題だけではなく、気温の変化などに対する生体反応のことも含みます。

犬のストレスへの対処法は主に2つ。

  1. ストレスの原因(ストレッサー)を取り除く。

  2. ストレスの原因に慣れさせる。(脱感作)

ストレスの原因を取り除く、というのは、これができるのであれば1番の方法です。

暑いことがストレスなら暑くないように工夫すればいいですし、散歩コースに騒音のでる工事現場や大型犬のいる家など、本人にとって怖いものがあるのであれば、散歩コースを変えればいいのです。

2つ目はストレスの原因に慣れさせること。
人の精神医学界では「脱感作法」という治療法があります。(アレルギーでも使われる言葉ですが、基本的な考え方は同じです。)

恐怖や不安の原因となっているものに弱いレベルから触れさせて、徐々に強くしていくうちに慣れさせる、という方法です。もちろん、これは人の医療のお話ですが、犬のしつけではすでに使われている手段です。

徐々に慣れさせていく」という方法は環境によって異なりますので、詳しくはしほ先生に直接相談されるとよいかと思います。
(他の犬に怖がる、掃除機を怖がる、動物病院に行くと怖がる、車を怖がる、、、すべて対処方法も異なってきます)

とうの先生『相談者様の場合は、少しずつ時間をかけて新しい家族に慣れてもらうしかないですね。
先住のチワワは飼い主さんのことを信頼していますから、その飼い主さんが新しくきたわんこと触れ合っているのを見せることで、相手に対する警戒や不安感は徐々に和らいでくれるはずです。』

相談者『なるほど、やってみます。』

とうの先生『そうですね。でも、そのときに注意しないといけないのは「無理強いしないこと」と、「新しく来た子による直接的な恐怖を与えないこと」ですね。突然飛びかかったりしないよう、しつけも必要です。
先住の子の詳しいトレーニングの方法や、新しくきた子のしつけについては、しほ先生に聞いてもらうのが確実です。』

終わりに 愛犬の免疫力のしつけの関係性について

しほ先生『ストレスがこんなにも危険なものだなんて、本当に怖いですね…』

とうの先生『そうですね。「病は気から」という言葉もあながち間違いではなくて、「ストレスが体のホルモンバランスや自律神経のバランスを崩して、免疫力を下げる。」ということは科学的に証明されているのです。
そして、犬や猫や馬といった脳の発達した動物では、コルチゾールの上昇といったヒトと同じようなストレス反応が起きることがわかっています。』

しほ先生『であれば、ストレスに対処するためのトレーニングが大切になってきますね。
とうの先生が先ほどお話してくれた「徐々に慣れさせる」というトレーニングは、しつけの方法としてすでに取り入れていますよ。』

とうの先生『はい。私はストレスで起きることは説明できますが、それぞれのワンちゃんにとってのストレスに合わせた、多様なトレーニングの方法はドックトレーナーさんの協力がどうしても必要になってきます。

しほ先生、これからもよろしくお願いしますね!』

ストレスの原因は様々です。
多頭飼いだけではなく、住んでいる環境や家族構成によっても変わってきます。あなたの愛犬が元気に過ごせるアドバイスを致します。
ぜひ、愛犬の様子を聞かせてください。LINEでメッセージお待ちしております。

【参考文献】
1、川口晃太郎 他「唾液中クロモグラニンAおよびコルチゾール測定によるイヌ生理および心理ストレス受容の推定」Bulletin of School of Agriculture, Meiji University2008年(最終閲覧:2020年4月10日)

https://ci.nii.ac.jp/naid/40016024759/
2、安藤泉「イヌにおける様々な外因性ストレスの評価指標に関する研究」一般学位論文2012年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://tuat.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1417&item_no=1&attribute_id=16&file_no=2

3、永田頌史「ストレスによる免疫能の変化と脳・免疫連関」JuoEH(産業医科大学雑誌)1993年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/15/2/15_KJ00002623664/_pdf/-char/ja

4、出村博「ストレスとホルモン」日本内分泌会誌1994年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine1927/70/5/70_479/_pdf/-char/ja

5、Robert J. 他「Catecholamine-Induced Leukocytosis: Early Observations, Current Research, and Future Directions」Brain, Behavior, and Immunity1996年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159196900094?via%3Dihub

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