名付けられない彼との関係性

彼と私の関係性を、名詞で表すなら何だろう。
うまくあてがえる言葉が見つからない。

名前のつけられない関係性なんて、よく言ったものだけど。友達、恋人、セフレ、知人、、どんな言葉を当てはめるのが、私たちの関係に適切なんだろう。

彼と出会ったのは街コン。
出会い目的で会っていると、お互いに良い印象があればトントンと関係が進展することも多い。年齢だってお互いアラサー。見据えてる未来もより現実に近いところにある。進展が早いに越したことない。そう思っているから、そうならない現状に歪みを感じてる。

出会いの場で出会えば、恋愛対象として好印象を抱けば関係は進む、それができなければサヨウナラ。あるいは稀に、友達として意気投合して仲良くなるパターンもあるだろう。

じゃあ彼と私は、今どこの地点にいるの?

そんなの、客観的に見たら簡単な話で。
彼と私は「友達」の認識がいちばん状況に当てはまっているだろう。彼の認識がいちばん近いのもそれだろう。
だけど私は、この関係を「恋人」に発展させたいと心のどこかで思っているから、自分の中で消化しきれない、認知の歪みが生じているのだろう。この関係性は何なのだろうって悩んでしまうのだ。

初めて二人で出掛けた日に言われた。
俺は付き合うことに固執する必要ないと思ってる。こうして二人で遊びに行けたりすれば充実してると感じる。みんな結婚するために、結婚を目標に婚活するけど、結婚は目的じゃなくて方法だと思う。相手とずっと一緒にいたいと思って、その目的を叶えるための手段が結婚でしょ、と。

そう聞いて私は、ああ、予防線を張られた、と思った。暗に、君と付き合うつもりはないよ、と言われたんだと思った。
だから、彼に対して好印象を抱いても、進展することはない。深入りしたくない。まだ私の気持ちがふわっとしているうちに引こうと思った。負け戦はしたくなかったから。

なのに毎日LINEが続いたことを良いことに、完全に気持ちが乗せられて。またノコノコと付いていって、二人で遊びに行った。

2回目の彼の車、充電使っていいよとType-Cのケーブルを渡された。前回も、ポートに刺さっていたのはType-Cのケーブルだっただろうか、と。もう一口のポートに刺さったLightningケーブルを見て思った。Androidの私のために用意したの?と都合の良い勘違いをした。
前回は遠慮して使えなかった彼のブランケットも、素直に受け取った。

その日は一緒にイルミネーションを見に行って、初めて出掛けた日と同じように、車内でたくさん話して。ああ楽しかった、と帰り際に心の底からもれたような彼の感想が、あれが演技や嘘だとは思えなくて。

ただどうしても、これは合わないと思う価値観があって。あとからLINEで言ったけど、彼にとってはなんてことないことで、これからも続けると言われた。
私はそれに対して恐怖を感じた。もうそのときには彼のことを好きになっていたけれど、仲良くしていたら自分がずっと怖さを感じることになると思ったから、私は自分の心をまもるために、それなら彼を切ろう、と。もう会うのやめると、彼に伝えた。

これで最後だから、メッセージで好きになった気持ちも伝えた。
すると電話で諭されて、まだ知り合って1か月、「もっと俺のこと知ってから決めてもいいんじゃない」と言われた。すがっているみたいだけど、俺は縁を大切にしたいし、ここで切れちゃうのはもったいない。きみの考え方とか好印象だし、二人で遊びに行ったりしたいと思うくらいには、嫌いじゃないよ、と言われた。

嫌いじゃない
なんて言ってくる男、ろくでもないに決まってる。そう思うのに、関係を切れなかった自分にいちばんうんざりする。

3回目、ランチを食べに行った。
とはいえ怖さがあったから現地集合で。お店を出たら雪が降っていた。初雪だ。
韓国ドラマでは初雪を好きな人と見ることってすごいロマンチックなのに。惨めな気持ちになった。知ってほしいと言われたけど、結局、好きだからすがっているのは切れなかった私のほうじゃん。

4回目、飲みに行った。
お酒に強い私が酔いつぶれることもなく。しっかりタクシーを見送られて帰った。
タク代が高かったことを愚痴ったら、よくないことだけど泊めてあげればよかったね、と。
付き合ってないのに泊めるのはよくないって、思う感情。私バカだから優しいと思っちゃうの。

5回目、スノボ。
全然滑れない私と上級者の彼。せっかく遠くまできたんだから滑りたいだろうに、滑れない私にイラつくこともなくずっと付き添ってくれて。掴まって大丈夫だよ、と広げられた腕に、抱き締められたくて、そんなこと考えてる自分が嫌だった。
最後に上級者コース行ってきなよと見送ったけど、人多くてつまんなかった、と1本で帰ってきた彼に、私と滑るのは楽しかったのかな?と嬉しくなった自分が最悪だった。

6回目、ディズニー。
さすがに、ここで何もないなら本当に何もない。話すことは苦じゃなくて、これまでも会っててもずっと会話続くタイプだったから、いつものようにお互い話して。何事もなく。
ディズニーで何もないなら、本当に何もないんだよね。期待したわけじゃないけど、心のどこかでいつも期待してる自分にありありと気づいて、自己嫌悪で感情が真っ黒に染まる。

彼にとって私は何なのだろう。
そんなの簡単で。彼にとって「何でもない」のだろう。

ただ一緒にいて楽しいし、自分を好きでいてくれる、居心地がそんなに悪いわけでもない、自尊心を高めてくれる相手とでも思っているのだろう。何てことないんだ。

なんてことないから。
いまが楽しいと伝えるのに、あのときの電話の1件で関係を繋いでくれたことに感謝すれば、
友達を失うことにならなくてよかったね、なんて言われるんだ。それが答えじゃん。


答えなんて出てるのに。
いまの現在地、この関係性は何なのだろう。
そうやって、私は自分の気持ちと彼の気持ちの違いから、目を背けたいだけなのかもしれない。

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