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#372 シン・バーテンダー

バーテンダーという仕事の本質

「BAR」という言葉の語源は、古英語の「barre」という単語に由来し、これは「障害物」や「棒」を意味します。この単語は中世フランス語の「barre」にも関連し、同様に「棒」や「障害物」を意味していました。最初のバーは、飲み物を提供するカウンターやテーブルに取り付けられた木製のバー(棒)から名付けられました。この木製のバーは、お客様と飲み物を準備するエリアを物理的に区切るものでした。このように、バーの語源には、物理的な仕切りの意味が含まれています。
#棒

そして、バーテンダーの語源は英語の「bar(酒場)」と「tender(世話役)」の合成語だといわれています。しかし、「バーテン」という略称は、実は差別的な意味を含んでいることをご存知でしたか?「バーテン」という言葉は「バー」と「フーテン」を掛け合わせたもので、「定職を持たぬ者」という意味が含まれています。オーセンティックバーや熟練のバーテンダーにとっては、不快に感じる場合もあるため、正式に「バーテンダー」と呼ぶことが望ましいです。
#フーテン

バーテンダーとしてのキャリア

バーテンダーの仕事は、常に新しい挑戦と自己成長を求められる職業です。仕事を続ける中で、能力と責任、そして収入のバランスを考えることが求められます。しかし、多くのケースではBAR経営というのは、収入の面で割に合わないことが多いです。

バーテンダーとしてのキャリアの中で最も重要なのは、自分自身の成長を常に追い求める姿勢です。新しいカクテルを学び、技術を磨き、お客様とのコミュニケーションを深めることで、バーテンダーとしてのスキルを高めていきます。また、自分の弱点を認識し、それを克服するための努力も必要です。
#成長

BAR経営の現実

BAR経営は、客単価が最初から決まっているため、キャリアを積んでも収入はほとんど変わりません。そのため、多くの飲食オーナーは食事の繁盛店やクラブ、キャバクラの経営を選択します。若くして始めたお店ならなおさら、客単価が低いままで、10年、20年経っても変わらないことが多いです。BAR経営というのは実際、お金だけではやっていられない仕事です。
#実際には他店舗経営するケースが多い

経営の苦労と工夫

経営の苦労は多岐にわたりますが、その中でも特に重要なのは、いかにして客単価を上げるかです。例えば、季節ごとの特別メニューや、限定カクテルを提供することで、お客様の興味を引き、リピート率を上げることができます。また、店内の雰囲気を常に良く保つために、インテリアや音楽、照明にもこだわっています。これらの改善や工夫が、長期的な経営の安定につながるのです。
#常連客を増やす努力

続ける理由

では、なぜ多くのバーの経営者が事業を続けていられるのか?それは、人との出会いがお金以上に魅力的だからだと思います。もちろん、不愉快な客や理不尽な要求をしてくる客もいますが、そうした人々との出会いが自分を成長させるきっかけとなります。僕自身の経験からも、人間問題を含めた上で、飲食店で働くことが魅力的だと言えるようになったのは40歳を過ぎてからです。
#本当に最近の話し

人との出会いの価値

出会いの中で特に印象的なのは、お客様との深い絆です。常連のお客様が人生の節目にバーを訪れ、喜びや悲しみを共有する場面は数え切れません。そうした瞬間が、バーテンダーとしての喜びを感じさせてくれます。また、スタッフとの協力関係も大切で、一緒に働く仲間とともに成長していくことが、BAR経営の醍醐味だと思います。

難解な客やスタッフとの出会いは、実は自分の弱さを克服するための試練でした。自分の弱さとは、人への苦手意識や固定概念、安っぽいプライド、過剰な承認欲求などです。これらの弱さを克服することで、バーでの仕事が魅力的になりました。バーは、人間を人間らしく向上させるための学びの場であり、これからも必要な場所だと感じさせてくれます。
#これから先もなくならない

バーの一日

簡単ですが、まずはバーテンダーの仕事の一日の流れをご紹介します。

オープン前

清掃とセッティングを行います。清掃はバーにとって最も重要な仕事です。カウンター、テーブル、椅子、床、お手洗いなど、すべてをきれいにします。シェイカーやまな板、メジャーカップなども所定の位置にスタンバイします。

オープン~アイドルタイム

オープンしてすぐにお客さんが来るわけではないので、ボトル拭きなどいつでも中断できるボリュームの清掃をつづけます。そして簡単なフードの仕込みや、アイスピックや牛刀をつかって氷の仕込みも重要な作業となり、シェイク用、ロック用、ハイボール用など用途に応じて準備します。

ピークタイム

お客様に集中します。余計なことはせず、目の前のお客様に最高のサービスを提供します。

アイドルタイム~クローズ

片付けや発注業務を行います。店内の状況を見ながら、閉店作業を進めます。閉店時間に終わることはほとんどなく朝までコースの場合がほとんどです。
#昼夜逆転の生活

バーにはルールがない

バーには基本的な衛生面を守れば、ルールは存在しません。接客やカクテルのレシピ、価格設定なども自由です。バーの数だけ考え方があり、その自由さがバーの魅力でもあります。

接客にルールはない

バーはバーテンダー自身やお店の雰囲気が魅力です。お客さんを不快にさせない限り、接客態度は自由です。

カクテルのレシピにルールはない

有名なカクテルでも、基本をマスターした上で、自由にアレンジすることが大切です。お客さんが求めているものを提供することが最優先です。

価格設定も自由

バーごとに提供価格は異なります。同じお酒でも、店によって価格が違います。価格設定は慎重に決めるべき部分です。

自由な発想の重要性

自由な発想は、バー経営の成功に欠かせません。例えば、ある日突然、新しいカクテルのアイデアが浮かんだら、その日のうちに試作してみることもあります。お客様の反応を見ながら、改良を重ねていくことで、独自のメニューを作り上げていくのです。このように、柔軟な発想と行動が、新しい価値を生み出す源となります。
#バーのルール

バーテンダーにとって大切なこと

バーテンダーにとって大切なのは、技術、知識、ホスピタリティです。しかし、それだけではありません。

距離感(≒観察力)

カクテルメイク以外では没頭せず、常に店内を見渡し、お客様の顔や仕草を観察します。これにより、お客さんが何を求めているのかを把握し、最適なタイミングでサービスを提供することができます。

空気を読む力

お客様の利用動機や予算、真意を読み取ることが大切です。適切なタイミングでおかわりを伺うなど、細かな配慮が求められます。例えば、接待中のお客様が早く帰りたい様子を見逃さず、適切なドリンクを提案することで、快適な時間を提供します。

記憶力

リピートしてくださったお客様の好みや話した内容を覚えておくことが重要です。メモを取ることも一つの方法です。例えば、前回どんなカクテルを楽しんだかを覚えていると、お客様は特別感を感じるでしょう。

感情の理解と対応

バーテンダーは、お客様の感情を理解し、それに適切に対応することが求められます。例えば、お客様がストレスを感じている場合は、リラックスできるようなカクテルを提案することが重要です。また、元気を出したいお客様には、エナジードリンクを取り入れたカクテルを提供するなど、心理学を取り入れた方法が必要です。
#観察力は特に大事

バーテンダーの接客

バーでの接客は、一般的な接客とは少し異なります。丁寧な言葉遣いよりも、適切な言葉遣いが重要です。

丁寧な言葉遣いは重要ではない

お客様が求める接客は様々です。カッチリした接客を好む人もいれば、フランクな雰囲気を求める人もいます。その時々で適切な接客を提供することが求められます。

基本的に正直でいること

お客様の情報を漏らさないこと、知らないカクテルをオーダーされたときは正直に答えることが大切です。知らないカクテルを無理に作るよりも、正直に伝えて別の提案をすることが、お客様との信頼関係を築く鍵です。

ときには毅然と対応すること

迷惑行為には毅然と対応します。他のお客様とスタッフの安心安全を守るためです。例えば、酔っぱらって他のお客様に迷惑をかける行為があれば、冷静に対応し、安全を確保します。

信頼の構築

信頼の構築は、バーテンダーとしての成功の鍵です。一度信頼を築くと、お客様は安心してリピートしてくれるようになります。「きみのオススメだからきっとおいしい」と言ってくれるお客様がいることが、バーテンダーとしてのやりがいにつながります。
#信頼関係

一番大事なのは必要なときにそこにいること

お客様は、店のスタッフに用があるときに顔や手を上げます。そしてこちらを見ます。そこでお客様に「すいませーん!」と呼ばれてしまったらアウト(勝ち負けじゃないけど「呼ばせた」時点でまず負けです)。話が盛り上がっているときにおかわりを伺うのもスマートではありません。なので、お客さんが顔を上げたとき、視界にはいる場所にいればいいんです。お会計をしたいとき、アイコンタクトだけで伝えられる位置にいればいい。お手洗いの位置がわからないとかテーブルから何かを落としてしまったとか、ハプニングだってあり得る。だからそのために、顔を上げている。そのときのために、常に神経を張り詰めてお客様を観察しているんです。
#レモンハートのマスターって凄いのよ

シン・バーテンダー

これからの時代、バーテンダーの価値観や役割も変わっていくと思います。

デジタルとバーとの融合


コロナ禍を経て、オンラインの重要性が増しました。オンライン飲み会やオンラインカクテルレッスンが普及し、もてはやされましたが、これからのバーテンダーはソーシャルメディアでの発信が求められます。バーテンダーがインフルエンサーとして活躍する時代がもう来ています。個人が世界と繋がって、自分の店を持たず世界のバーを渡り歩くノマドバーテンダーも現れるかもしれません。
#ノマドバーテンダー

サステナビリティとエシカルな選択


これからは環境に優しいカクテル作りが求められます。地元の食材やオーガニック素材を使用し、プラスチックストローを廃止するなどの取り組みが進むと思います。エシカルなアルコール選びも重要になり、フェアトレードの原材料を使ったカクテルが主流になるかもしれません。最近は地元の食材を用いたクラフトビールやクラフトジンの開発も多くなってきています。

AIによるパーソナルライズされたサービス


AIを活用してお客様の好みをデータ化し、パーソナライズドなカクテルを提供するサービスが登場すると思います。お客様の心理状態に合わせたサービス提供も重要です。ストレスを感じているお客様にはリラックスできるカクテルを、元気を出したいお客様にはエナジードリンクを取り入れたカクテルを提案するなど、心理学を取り入れたパーソナライズされたサービスが求められるのではないかと思います。

多様性とインクルージョン


LGBTQ+フレンドリーなバーが増え、誰もが安心して過ごせる空間作りが求められます。バーテンダーは、多様な価値観を尊重し、誰もが居心地の良いと感じるサービスを提供することが必要です。世界中の文化を取り入れた多様な空間を提供することで、異文化交流を楽しむお客様もますます増えていくと思います。

心のケアとコミュニティの形成


バーテンダーは、お客様の心のケアを行う役割も担います。お客様が話しやすい環境を作り、時にはカウンセラーのように話を聞くことが求められます。バーはコミュニティのハブとして機能し、地域のイベントや交流の場を提供することで、コミュニティの一員としての価値を高めていきます。

想像力と創造的なアプローチ


バーの仕事には想像力が必要です。日々目にする景色の中に何を見るか、何を美しく感じるかを想像することが大切です。それは、だれの仕事や生活にも当てはまる普遍的なことです。

創造的なアプローチ

創造的なアプローチは、バーの魅力を高めるための重要な要素です。例えば、新しいカクテルのレシピを考案する際には、お客様の好みや季節感を考慮して、オリジナリティを追求します。また、店内の装飾や音楽選びにも創造性を発揮し、お客様がリラックスできる雰囲気を作り出します。このような創造的な取り組みが、バーの個性を際立たせるのです。
#シン・バーテンダー

おわりに

長文お付き合いありがとうございました。これは「シン・バーテンダー」という僕が予想するこれからのバーテンダー像です。これが正解ではないし、不正解でもありません。あくまで僕が経験し感じてきたものから予測される未来です。

バーという空間は、想像力が刺激される場所です。皆さんにとって、それぞれに楽しめるお店がきっとありますので、是非お気に入りのバーを探してみてくださいね。
#BAR


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