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カナダでお盆のお参り
カナダ生活11年目のWakei です。
以前からずっと行きたかった場所がありました。
それはバンクーバー島のカンバーランド(Cumberland)という現在の人口4,000人弱の田舎町。
この田舎町には日系人墓地「日系の墓」があります。
この町はかつて炭鉱の町として栄え、日系人が最盛期で500人が住んでいたと言われています。私はこの「日系の墓」で、「お盆に献茶をしたい」とずっと思っていたのです。ようやく昨年、実現できました。
カナダの日系人の暗い歴史
皆さんは「バンクーバーの朝日」というカナダの日系人の野球チームの映画を観たことがありますか?
私は実はカナダに来るまで、この映画のように日系人がカナダ社会に根ざすことに苦労していたことを知りませんでした。
日本人のカナダ移民は1900年頃から本格的に始まります。日系移民の多くは私の住むカナダの西海岸側で、漁業や林業、炭鉱、農場などで働きながら、生活を安定させていきました。
ところが、1941年12月7日の真珠湾攻撃によって状況は一変。2か月後には敵国人として財産没収され、ロッキーの厳しい自然の強制収容所行きとなります。
終戦後、日系人が移動の自由が認められ、西海岸のブリテッシュコロンビア州に戻ることができたのは1949年でした。
カンバーランドの日系の墓
1942年以降、日本人がいなくなったカンバーランドには日系人の墓を管理する人がいなくなりました。
破壊され、荒れて朽ちていく日本人墓地をカンバーランドの住民で、当時子どもだったモンクリフ氏とその有志が、戦後、散らばっていた墓石を集めて整備したのが「日系の墓」なのです。
ですから、この「日系の墓」には1942年以降のものはありません。
この墓地は2008年、村の歴史遺産に指定され、記念碑には
『この墓地は、1880年代後半からカンバーランドで生活し働いていた日本人の最後の休息の地である。我々はこの墓地を、その精神的・歴史的・文化的重要性に鑑みて歴史遺産と認定し、彼らの貢献を称える。』
と記されています。
カンバーランドのこの修復された日系人のお墓は
つらい過去を経て、日系人とカナダ人の友情の証と言えるでしょう。
墓地でお参りをしていたカナダ人
私がこの墓地の着いたとき、静まりかえった林の中の墓地には誰もいないように見えました。すると一人の白人男性が墓地の方から戻って来るのが見えました。
声を掛けると、彼はここにときどき来るそうです。
「私は日本人で、ここに日本人のお墓があると
聞いていたのでお参りに来んだよ」
というと、彼は車に戻り中から
「さっき道で摘んだ花があるから、持っていくといいよ。」
と言って、ペットボトルを花瓶にして
車の中に置いてあった花をくれました。
まるでお供えの花をあつらえたかのようなペットボトルの花を
カナダ人から渡され、本当にびっくりしました。
彼も私たちがわざわざ遠方から、
この小さな墓地に来たことに驚くと同時に喜んでいました。
彼の義理の母親は日本人だったそうです。
お互いに思いがけない出来事に心が温まる想いで、
笑顔で手を振って別れました。
一人献茶
参道のような歩道を歩いていくと
ひっそりと日系の墓がありました。
私は浴衣に着替えてお墓に話しかけてみます。
そして、一人お茶を点てました。
日本的な雰囲気、思い出して喜んでもらえたかな。
今はお盆だからお参りに来たよ。
なんてね。 ほぼ自己満足ですね。
![日系の墓](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30560617/picture_pc_6ab1cfbe8d5b98f149935d6e952ca4a6.jpg?width=800)
お墓にはところどころお供えのお菓子と花が置いてありました。
人口4000人程度の片田舎の小さな墓地ですが、
誰かがお参りしているんですね。さっきの彼もその一人かな。
そして私も。
海外で暮らすということ
過去の日系人たちがそうだったように
海外では、何かのきっかけで
特定の国の出身者が嫌悪感や不信感を持たれ、
攻撃や不満の対象になることがあります。
それは戦争だけではありません。
コロナ発生当初は中国系、アジア系が差別・攻撃の対象にもなり、
私たち日本人も警戒したくらいです。
戦前・戦中・戦後をカナダで生きた日系の人たちは
まさに敵国人となり、本当に大変な思いをしたと思います。
先人達に感謝するお盆
今年の夏、私は日系カナダ人の友人に盆踊りに誘われています。
北米の日系人コミュニティーでは夏に盆踊りをするグループがあるらしく、彼女もそのメンバーです。
今年のお盆シーズンには、日系の仏教信者がバンクーバー島にある日系墓地をお参りに来るらしく、その際に「日系カナダ人と日本人で盆踊りをいっしょに踊ろう」とはりきっています。
言葉も違い、生活環境も違う日系人と日本人ですが、変わりない外見で、
文化のルーツですから、やっぱりお互い愛着があります。
お盆にお墓参りをしたり、盆踊りを踊ったり、形は変わっても、カナダでも同じ文化を愛し、継承されていることに感謝かな。
先人の皆さん、ありがとう。
さて、今年はどんな盆踊りを踊ることになるのかな?
日本も夏はお盆の準備や夏祭りや盆踊りで賑やかかもしれませんね。
楽しい夏をお過ごしください。
※タイトル家族写真はカンバーランドに住んでいた日系人家族です。戦前カンバーランドには日本人経営の写真館があったんです。
バンクーバー島のカンバーランド、カンバーランドの日系の墓、カンバーランド博物館にも行ってみてくださいね。
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