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わかおの日記10

今日は1日のスタートから最悪であった。お恥ずかしい話であるが、ぼくは未だに弟に対して、本気(マジ)でキレてしまうことがある。

本気で弟を恫喝し、時には手を出すこともいとわない。11歳も下の弟に対して、大人気ないと思われても仕方がないだろう。しかし考えてみてほしい。小学2年生のガキが自らの分をわきまえず、まるでぼくと対等の立場にいるかのような調子で、ぼくのことを侮辱してくるのである

これはなかなか腹立たしいことなのだ。多分ぼくの弟と一週間くらい一緒に生活すればわかるだろう、奴は本当に厄介なガキである。

朝ぼくが起きると、昨日見逃したテレビ番組のダイジェスト編が放送されていた。ぼくはこれ幸いと、朝食を食べながら母親とそれを見ていたのだが、我が家の小さい悪魔はそれを見逃さなかった。ぼくが母親と何かをしていることが、奴は許せないのである。

けたたましい発射音を放つ銃のおもちゃを取り出し、ランボーよろしくそれを連射しまくることで、ぼくを妨害してきた。それだけならまだしも、奴は「銃で撃って、そうちゃん(ぼくのことだ)を殺したい。そうちゃんなんか死ねばいいのに」と、かなりきつめの言葉の暴力を僕に浴びせてきたのだ。

これには兄として、いや人間として厳然たる態度で臨まなければならぬと考えたぼくは、かれの銃のおもちゃを膝蹴りで破壊した。小学3年生で辞めた空手の経験がここで活きたようである。奴はぼくという人間の尊厳を踏みにじったのだ、当然の報いである。彼自身に暴力を振るわなかったのは、兄としてのやさしさといえよう。

こうなっては弟は泣きわめくことしかできない。いい気味である。しかし奴の、自分の境遇に対する不平不満を盛り込んだ呪詛のような喚き声は相当にうるさく、それを聞いているだけでぼくは朝から気がめいってしまった。やれやれ。両親も彼を鎮めるために、かなり苦労していた。人生うまくいかないものである。

そのような精神状態のなか、気を紛らわすためにひばりが丘の図書館に行った。なかなかよい図書館であった。

午後は、あまりきっちりとした本や映画を鑑賞する気にならなかったので、借りてきたマツコ・デラックスのエッセイ「デラックスじゃない」を読んだ。彼(彼女?)はとても賢いひとなのだろうと思った。その賢さが生んでいる、様々な苦悩や葛藤は、とても文学的だと思った。

ぼくもそういったエッセイを書きたいものである。そのためには、朝から弟と喧嘩などしていてはいけないのだろう。

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