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最低限必要と考える美術館の役割

昨日に気になったのは「どうすれば美術館がよくなるのか」という話題。

【緩募】アートに興味のあるウェブディレクターやウェブデザイナーの方々、「日本の美術館サイトはどうすればもっと良くなるか」っていう話しません?(そして記事にしたい)
橋爪勇介|美術手帖@hashizume_y

それを受けてのウェブサイト制作者の声も。

今の美術館を取り巻く状況と、ウェブ業界を取り巻く状況を重ね合わせて考えるとスマートな解決策がすぐには見いだせないのだが、ウェブ制作者サイドの人間として簡単に思うことを取りまとめてみたい。
日本の美術館サイトはどうすればもっと良くなるか)shosira

美術館のサイトなんてやったの20年も前で、もはや記憶も曖昧ではありますが、興味自体は出る話題ではありますよね。

そもそも美術館とはなにか?

shosiraさんの記事を見るに頑張っている美術館があることを知りつつも、潤沢な予算と、体制的にトップダウンであったから実現したのであろう想像と同時に、どの美術館でも実施できる条件が揃っておらず、これを「よいもの」と定義すると、多くの美術館が空中分解するのではないかと考え込んでしまった。その思考の中で、そもそも

美術館ってなんだ?

ということが、わからなくなってきた。気になって検索する。wikiでは

美術館(びじゅつかん、英: Art museum、西: Museo de arte)とは、博物館の一種であり、美術作品を中心とした文化遺産や現代の文化的所産を収集・保存・展示し、またそれらの文化に関する教育・普及・研究を行なう施設である。(美術館とは

つまり「利用者」からすると、

収集物が展示され、文化的教育を受けることができる場所

ということか。

美術館がよくなるとは?役割とは?

その上で、最初のツイートに戻って

美術館がよくなるためには?

という話に戻って考える。「良いとはなんだ?」「いいの定義は?」と。今回この話を見たときにさまざまなリツイートなどがあって。例えば

・美術館なんてアクセス情報など基本情報があればいいのでは?
・寺社仏閣は最近よくなったけど美術館のサイトは変わっていない
・欧米のような技術をおいかけても結局お金がないのでは?
・継続的な情報提供できずにギミックに走っても意味がない
・経営的な観点で情報提供しないといけないのではないか

考えてみると、美術館の機能は、wikiでもあったように、

1.収集保存・維持していく「所蔵施設」としての役割

という観点も必要と同時に

2.展示物を見せ「文化教育を行う場所」としての役割

も持っている。本来は公共的な位置づけ。しかし、いまや維持運営のためにプロモーションや経営的視点も重要に。市町村などが投入する税金の話も含め避けることができない。つまり、

3.展示物を見せ「収益を上げれる場所」としての役割

も避けられない。議論は1〜3の観点が混ざるため「よいもの」の定義が発散している。自分なりに整理してみる。

1.所蔵施設としての美術館

ウェブサイトは必ずしも重要ではない。あくまで所蔵して、維持していくことが目的なので利用者不在でもよい。ごく最小限の情報で問題ない。
⇒掲載情報A:基本情報(情報量極小|固定情報)

2.文化教育施設としての美術館

この場合、図書館などに近い機能性が必要となる。アクセス方法と美術館の基本情報を提供すれば、最低限のノルマはクリアできる。
⇒掲載情報B:基本情報+アクセスマップ(情報量小|固定情報)

しかし、訪問前に所蔵物などをサイトで調べることができれば、ウェブ側で「教育施設の一部」として機能する。本来公開していない美術館内で管理している所蔵物の基本データを条件付けして公開するのがベストと考える。検索性などは、この付帯機能になる。
⇒サイト掲載情報C:展示物の詳細情報(情報量大|固定情報)

3.収益化施設としての美術館

収益化が目的の場合、興味がない層に対してのアプローチが重要。その場合、美術館内で管理する基本情報でなく、対象に沿った情報提供も必要となる。これが本来の「企画展」のスタートラインなのだろう。展示物のQRコード化、UXやDXなどもデザイン観点、経営観点での定常的な収益化機能となる。しかし、利用者対象と収益化モデルを設計せずに「機能優先」で実装すると損益を圧迫するリスクも存在する。
⇒サイト掲載情報D:ユーザ別展示物+α(DX/UX/PR)(情報量?|浮動情報)

貧乏な日本に最低限必要と考える美術館の役割

思いつくままに書いているので、もう少し整理がいるとは思いますが、美術館の場合、公共と文化と経営とか、感性に始まる文系的と、アーカイブ的に管理すべき理系的観点など、いくつかの軸が双方混じっているため、立場とか、自分のポジションによって、どうしてもぐちゃになってしまう。

そして、規模が結構様々であるため、「美術館がよくなる」という定義が

・低品質の美術館サイトの底上げに必要なこと?
・所蔵物の閲覧の敷居を下げるために必要なこと?
・最先端の美術館情報の提供ために必要なこと?
・エンターテイメントとしての美術館として必要なこと?

いくつか切り口があるし、美術館の立ち位置によって、進むべき道はさまざまなのだろうと思う。

けど、自分が思うのは、美術館というものは、図書館と同じで所蔵物を維持しており、所蔵品における定義情報(作品名|作者|作成年度|概要等)は固定化されている。そのためデータでは、統一化企画のテーブル情報があれば、美術館を超えて共通管理できるDB情報でしかない。

情報管理という観点でいうと、個別の施設で、個々で管理運営している事は非効率であって、なんかもったいないなと。それこそ今の時代、共通基盤があって、ぶれない情報については、そこにぶち込んでしまえば、アーカイブ的なベースはできるのにと思わずにはいられない。

欧米に比べて日本の場合、美術とか文化的な部分について、多額な寄付が常に集まるわけでもなく成功者は自分のためにしかお金を使わない。基本的に「文化的に貧乏」な側面は常にあって、それは避けられないと。

それだから駄目というわけではなく、貧乏であるが故に、工夫を凝らして文化財を維持運営していく知恵を集めていくことが必要なのではないかと。そのベースがない状態で、DXだUXだと綺麗事を言っても、数年で瓦解して、その美術品を海外に売ることありえることだと危惧しています。


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