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人材価値を引き継ぐ #161 技能継承

企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動をマネジメントします。
そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。

経営資源とは、一般的にヒト、モノ、カネ、情報といわれています。
この経営資源を必要な部署や取り組みに供給するのも、インフラストラクチュアの取り組みとなります。
なかでも、筆頭の「ヒト」、つまり人事の重要性が高まっています。

従来型の人事とは、労務・法務などの制度やマニュアルなどのオペレーション業務ばかりに固執した保守的、定型的な前例主義がほとんどでした。
対して、現代では、労働力不足が深刻化していることや、それを補う意味での機械化の技術革新によって、個々の人材には、よりクリエイティブ性のある能力と発揮が求められるようになっています。
反面、従来の経営戦略では、戦略的に人事を捉える意識が低かったといえます。

故に、今後は、人材と組織の側面から変革をリードしていくには、戦略的な人的資源管理(以下、HRM:Human Resource Management)が重要視されています。
しかしながら、従来の経営戦略では、戦略的に人事を捉える意識が低かったといえます。
結果的に、労務・法務などの制度やマニュアルなどのオペレーション業務ばかりに固執した保守的、定型的な前例主義がほとんどでした。

対して、現代では、労働力不足が深刻化していることや従業員平均年齢の高齢化、さらには技能継承が問題となっています。
今後は、人材と組織の側面から変革をリードしていくHRMを要視してまいります。

HRMの課題の一つに技能継承問題があります。
問題化する要因が、そもそも技能とは、再現性の難しい能力だからと言えます。
表現を変えれば、職人技です。
このため、技能の継承には、より長い時間を必要とすることが一般的です。

技能継承問題が最初にクローズアップされたのが、主に製造業に対する「2007年問題」でした。
日本における第一次ベビーブームが起きた1947年から1949年生まれの団塊の世代が2007年から60歳定年を迎えることから発されたものでした。
その後、1971年に65 歳までの高年齢者雇用確保措置が義務化されたことによって、一旦は、技能継承問題も回避された格好でした。

しかし、結局は、問題を先送りした一時凌ぎでしかなく、更なる労働者不足も相まって、現在は、2007年当時を上回るような技能継承問題がクローズアップし出しております。

労働力不足を背景に65歳までの高齢者雇用を、再々延長する考えもあります。
しかし、技能継承の観点からすると結局は、それも先送りでしかありません。
また、そもそも技能を継承すべき若い労働力が不足しているのも問題です。

加えて、高齢の社員から技能継承を終えたら仕事を奪うのでなしに、サクセスフル・エイジングとして、継続した生きがいを提供することも忘れてはならないと考えています。

技能と混同される言葉に、技術があります。
実際に現場では、技能も技術もない一色単に捉えられることも少なくありません。
しかし、敢えて、「技能」と「技術」の区分を明確化するようにしています。

「技術」とは、図面、数式、言語などによって、客観的に共有できる形式知が主体の情報とします。
対して、「技能」とは、個人の固有の暗黙知が主体の能力であり、他人が再現することが難しいものです。

まず、優先すべきは、優れた「技術」および「技能」取得者から優先的に「技術」部分の継承を行います。
この場合の継承は、可能な限り、デジタル化に取り組みます。

その上で、残った「技能」部分の「技術」化あるいはデジタル化による継承を検討します。
そして、暗黙知であるが故に、時間を掛けて、人から人に継承しなければならない問題の「技能」部分を集中して継承するようにしています。

この考え方は、経済産業省が提唱しているコネクテッドインダストリーズ(Connected Industries)やDX(デジタルトランスフォーメーション)にもつながります。
また、手法としては、ナレッジマネジメントが有効になると考えます。

企業の未来のためにも、技能継承ですは、一刻も早い実現が求められます。
しかしながら、現実は、長期化も覚悟した課題なのかと思います。
そうなると尚のこと、シニア人材のサクセスフル・エイジングの提供も無視することはできません。
技能継承とシニア人材の健康のバランスを判断しながら推進してまいります。

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