眠ることは健康の大切な要素 #73 睡眠
健康とは、WHO憲章の前文の中で、次のように定義されています。
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)
また、健康を維持、増進させる上での基本的な考え方に健康の三要素があります。
それは、適度な運動の習慣化、適正な食事(栄養)への改善、メンタルヘルス対策を含めた休養(睡眠)のバランスが重要といわれております。
その意味でも、睡眠健康推進機構と日本睡眠学会が協力して、3月18日と9月3日を睡眠の日と定め、睡眠に関する正しい知識の普及と啓発に努めています。
そめそも、人間は人生の3分の1を眠って過ごすと言われます。
1日の時間が24時間なので、仮に3分の1を睡眠に割り充てるとしたら8時間に相当します。
これを生きている間にひたすら続けていくと考えると、あまりにも莫大な時間を睡眠に割り当てていて少し損な気もします。
実際、多くのモノ・情報があふれ、しかもそれに容易にアクセスできる多忙な現代人にとって睡眠に充てられる時間というのは減少傾向にあるように思います。
しかし、健康の三要素にも明確に示されている通り、睡眠時間を削ってしまうと様々な健康弊害があるのも事実です。
ある調査によると日本人の睡眠時間の平均は1日6.5時間だったのですが、睡眠時間が6時間未満の人が全体の40%を占めていました。
平均的な睡眠時間が7時間のアメリカ人と比べると明らかに日本人の睡眠不足の傾向が分かります。
睡眠不足が重なることにより食べ過ぎを抑制するレプチンというホルモンの分泌量が減り食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌が出やすくなります。 これによって睡眠時間の短い人の方は、肥満度を表すBMIの数値が高かったという調査結果もあります。
さらに、睡眠不足が続くことによって、交感神経の緊張状態が続くため高血圧になり易くなるだけでなく、うつ病やアルコール依存症や薬物依存の発症率の上昇にもつながるとさえ言われています。
そもそも、よく耳にする理想的な睡眠時間とされる8時間も含めて、人は、1日何時間くらい眠れば良いのかです。
実はその絶対的な基準は設けられておらず、睡眠時間は人それぞれというのが専門家の見解です。
あるアメリカの大規模調査では、睡眠時間が8時間を超えている人は7時間睡眠の人に比べ死亡リスクが1.3倍以上上昇するという結果がでており、眠りすぎることもまた弊害があることがわかっています。
つまり、理想的睡眠時間とされてきた8時間に対して学問的な根拠がないということが解明されています。
また、睡眠には、時間というより、質が重要なのだとも言われます。
しかし、睡眠の質といわれても具体的に何を指すのかがよく分からないかと思います。
人の睡眠にはレム睡眠(REM sleep)とノンレム睡眠というふたつの状態で構成されているそうです。
レム睡眠とは、眠っているときに眼球が素早く動く(英語でRapid Eye Movement)ことから名づけられました。
レム睡眠では、全身の筋肉が弛緩し身体自体を休める睡眠で、起床に対する準備段階の睡眠といえます。
ノンレム睡眠では、脳波活動が低下し、日中に酷使した脳を集中的に冷却し休養を取らせる睡眠です。
睡眠は、深いノンレム睡眠から始まり、90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返し出現します。
ノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返され、朝になるにつれレム睡眠の時間が徐々に増加していき、最終的に起床に至るのが睡眠のメカニズムです。
この睡眠サイクルの中で、最も深い眠りの状態が入眠後の最初の90分に訪れるノンレム睡眠です。
つまり、入眠後90分を改善することができたら大幅に睡眠の質を改善することができるかもしれません。
最近は、ショッピングセンターに行くと、睡眠専門店や専門コーナーを目にします。
質の高い睡眠を得るために、枕やマット、布団などの定番アイテムだけではなく、ヒーリングミュージック、ブランケットや耳栓、アロマディフューザーなど様々なアイテムがあります。
また、睡眠を妨げる行為や対策なども、いろいろあるようです。
例えば、眠気がないのに、無理に布団に入るのは逆効果なのだそうです。
また、就寝前にスマホなどを見ているとブルーライトが睡眠を妨げることは有名ですが、現在は、設定で弱めることも可能です。
誤った情報も含めて溢れていますので、医師などの信頼のおける情報を見極めることも大切とも言えそうです。
以上、健康の改善のためにも、一度、睡眠に関して、様々な角度から見直してみることをお勧めします。