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おうちフリースクールの生徒さんたちの学力 ~ゆとり~
私がおうちフリースクールを始めてから1年6ヶ月が過ぎました。
私のおうちフリースクールに通ってくれている子ども達の学力における成長においてもそろそろ傾向が見え始めてきましたので、本日は彼ら彼女らの学力状況について書きます。
1.ゆとりが子ども達を伸ばす
”ゆとり”という言葉はこの国ではいつの日からかネガティブな響きをもつワードとなってしまっていますが、それはかの教育政策における”ゆとり”の実態が、真の意味で子ども達の精神的・体力的ゆとりを生み出すものではなかったからです。
私は本来の意味での”ゆとり”そのものについては、教育においては大変重要なものであると考えています。
あくまでも私の経験だけに基づいてですが、とにかく今の学校は忙しいですね。
それも、学校運営の本分である勉学の時間の確保のために生み出される忙しさではなく、学校や教師さらには生徒に期待され、任される仕事が信じられないほど多くなっていることによる余裕のなさに支配されています
したがって、教師・生徒が一体になってその超過密スケジュールをクリアしたところで教師・生徒にもたらされるメリット(学力向上等)は一切なく、むしろ授業の質や学習時間そのものが圧迫され、誰も幸せになっていないということです。
(そういった理由で、私は保護者の方々にも、今の子ども達が通っている学校は、我々がかつて通っていた学校はまったく異なった場所になっているということをまずは理解して頂けるようお話しています。今は、「みんな通っているんだから、あなたも行くのがあたり前!」の場所ではなくなっているのです。全国で18万人もの小中学生が不登校になっている状況を見るに、不登校の原因を個々の子どもの性格性質のみに求めることには無理があると私は考えています。)
一方でとてもおもしろい独自調査結果もあって、このような状況の中でも諦めずに”余裕”を追い求めた生徒集団は、学力の伸びが大変よかった。
朝霞市の中学校で学級担任をしていたときに突然管理職の先生に呼ばれまして。
「埼玉大学の教授の方から質問調査を受けた」と。
話を伺うと、県の学力状況調査の結果、私がもっていた学級の子どもたちの中学校入学以来の学力の伸びが、その他6クラスの集団から飛びぬけているということで、学級担任である私に実態調査をしたいとのことでした。
確かに入学当初の定期試験平均点は7クラスの中でダントツ最下位で、学活で「君たち授業で何をやっているんだい」なんて言って笑い合うようなクラスでしたが、2学期くらいからグンと伸びているなという実感はありました。
それでも大学の先生が目をつけてくれるほどであったとは大変驚きましたし、嬉しいことではあったのですが、私などはどこにでもいるようなごく平凡な教員でしたし、そもそも中学校の授業は教科担当制ですので、「なぜ学力が伸びたのか」の質問に対する答えは、「子ども達が一生懸命努力したから」以外に見当たらず。
ただ、子ども達の成長に担任である私がほんの1ミリでも力添えができたことがあったとすれば「ゆとり」であったのかなと今では思います。
学級レクの機会をたくさんとったり、
たまには教師主導ではなく、子どもたちが自分に合ったペースで過ごす1時間を確保したり、
休み時間におにごっこをしたり、教室で一緒にお絵描きをしたり、
1枚の掲示物を作るのにたっぷり2時間くらい確保して、こだわりの掲示物づくりをしたり、
あとは雪が降れば必ず雪合戦をしていました(笑)
(今思えばよくやらせてもらえたなと思います。心の広い校長先生や学年主任の先生のもと、のびのびとやらせて頂けていたことに感謝しています)
超多忙のスケジュールの中、規則第一!マニュアル!一律化!の一方方向に暴走していく学校に、私は静かなる反発心を抱いていました。
我々教師にとっては数十年と続いていく中学校教員の日々ですが、子ども達にとっては”一生に一度”の3年間だから。
大人と一緒に忙殺され、わけがわからないまま貴重な3年間を過ごしてほしくない。
めいっぱい楽しい思い出を作って卒業していってほしかったのです。
このような想いが、ほんの少しでも、子ども達ののびのびとした成長につながっていたのであれば、とても嬉しいなと感じます。
前置きが長くなりましたが、このような経験・考察から、私は「子ども達の成長には”ゆとり”が大切であると考えるようになりました。
2.なぜ、子ども達の成長にゆとりが必要か
「寝る子は育つ」とはよく言われている言葉ですが、ある日私はこんな事を考えたのです。
「体は食事中ではなく睡眠中に育つというなら、学力が血となり肉になっていくタイミングって一体いつなんだろう?」と。
体の話を学力に置き換えてみますと、食事の時間=学習、授業の時間。
となると、授業で吸収した栄養がしっかりと体の中に取り込まれるようにするには、寝っ転がって消化して、牛さんだったら反すうして…というのんびりタイムが必要になってくると。
さすがに学校でゴロゴロしてもらうわけにはいかないのですが(笑)、子どもたちが「あの授業で先生が言っていたことってこうだよねー」と意見を言い合う休み時間がしっかりと確保されていたり、窓の外の雲を眺めてぼーっとしたり、体育の授業やレクでのびのび体を動かしたり、ゆったりと自由に手先を使う作業に没頭したりという時間も学校生活の中では必要なんじゃないかなと思うのです。
インプット→アウトプットの忙しない連続だけでは疲弊してしまうのは大人も一緒。
すごく感覚的な言い方ですが、ちゃんと消化して体になじませる時間が必要だと思うのです。
私も、仕事の新しいアイディアが浮かぶのは長期休暇のぼーっとしている時間がほとんどです。
3.本題 ~THE・ゆとりフリースクールに通う生徒さん達の学力~
ようやくここからが本題です。
ゆとりだらけの我がおうちフリースクールに通う子ども達の学力は、スクールオープン1年半後、どのような様相を見せているでしょうか。
私のフリースクールでは基本、生徒さんたちには週に2回、英語・数学の授業を受けてもらっています。
英語・数学以外の教科については、自主学習の時間に取組んでもらっています。
週に2回の授業で学校の進度に追いつけるの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、ゆっくり丁寧に進めていっても、むしろ学校よりやや早いペースで学習が進んでいますね。
少人数レッスンの効率の良さってすごいなと私自身も驚きました。
学力はテストの点数だけでは測れませんが、参考までに申し上げますと、定期試験を受けに行っている生徒さんのほとんどが平均点以上をとってきています。
得意教科になってくると、80~90点台をとってきます。
テストを受けない子については数値では測れませんが、入会当初に比べて理解力、表現力を含む学力が確実に身についてきていますね。日常会話の中でも成長を感じさせられるほどです。
来室してくれている生徒さん全員がもれなく成長してくれているので、毎日の教育活動が本当に楽しいです。
たった週2回の授業で、どうしてここまで生徒さんの学力が伸びているのか。
決して私が何か特別なスキルを持っていたり、革新的な教育メソッドを実践しているわけではありません。
子ども達は、ごく普通の教師の指導のもと、ごく普通の学校の教科書と問題集を用いて、ごく普通のありふれた学習活動に取組んでいます。
ただひとつ、多くの学校さんと違うのは”時間のゆとり”これだけです。
3分程度の短い朝の会を終えたら、15分間ゆったりと朝読書の時間を過ごし、2時間の授業の合間にはこれまた15分間の休憩時間があります。
昼食の時間はゆったり40分間。
午後の自由時間は1時間20分。みんな本を読んだり、学校の課題を進めたり、イヌとたわむれたりして思い思いに過ごしています。
どの中学生も大体そうだと思うのですが、彼らは本来大変真面目でまっすぐなので、教師に強制されずとも家庭学習にも取り組んでいます。
先日生徒さんがこんなことを言いました。
「先生にもらったテキスト、家でも勝手に進めていい?」と。
「〇〇くんのテキストなんだから、もちろん好きに使っていいよ」と答えました。
彼はさらに続けました。
「今まで、家にこもってゲームばっかりやってた。でもこの前、どんなにゲームに時間を費やしてアイテム手に入れてレベルが上がっても、リアルの世界では何も役に立たないと気づいた。その時間を勉強にあてたほうが意味のある時間になると思うようになった。」
中学2年生の男の子の言葉ですよ。
普段は口数の少ない彼の力強い一言一言に、私も大変感心さえられました。
(ゲームへたっぴの私からすれば、スマブラ最強の彼が大変うらやましくもあるのですが)
意図のあるゆとりを与えれば、子ども達は「このゆとりをどうやって過ごそうか」と自分の頭で考えるようになります。
その結果、教師に強制されて何かをするよりも、ずっと中身の濃い時間を選択できるようになっていきます。
もちろん、みんながはじめからそのような選択ができるとは限りません。
疲弊して動けなくなっている子どもを見ていると、大人のほうもイライラしてくることもありますね。
でも、そんな時こそ大人のほうに忍耐が必要かなと思います。
子ども達に対して脅迫めいた否定的な言葉がけをしたり、無理やり過密なスケジュールを強いたりすると状況は良くなりません。
優しい言葉がけや励ましを続け、辛抱強く見守るという忍耐が必要だと考えています。
少し話題の幅が広がりすぎましたが、以上がフリースクールに通う子ども達の学力の実態でした。
他のスクールさんやご家庭の様子にも是非学ばせて頂きたいと思っています。
エピソード等ありましたらぜひお教えください。
※画像はNoriaki Kawanishi様の作品をお借りしました。
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