掛け捨てグッバイ
「保険って入ってる?」
「入ってるよ、入院保険とか火災保険とか」
「そーだよね。そこら辺だよね」
「なに?そこら辺って」
「なんかさ、保険の勧誘が家に来てさ。話し聞いてみたらいい感じだったから入ってみようかなって」
「いいじゃん、どんな保険?」
「勇気の保険」
「勇気の保険?」
「そう、日常で勇気が出なくて困る時ってあるじゃん。例えば自分の意見をハッキリ言う時とか、困ってる人を率先して助ける時とか」
「まーあるよね。それがどうしたの?」
「そんな時、自分の勇気が足りなかったら不甲斐ない結果になるでしょ?」
「まーね」
「その不甲斐なさを保険で補えるんだよ」
「ごめん、全くわからん」
「わからんよなー、俺も最初は脳内ハテナだったんだけど、聞くところによると、例えば勇気が出なくて上司に自分の意見が言えなかったとしよう。
そうすると保険内対象になるから、出なかった勇気の源の70%が返ってくるわけ、その返ってきた勇気を使って、上司に意見を言う」
「ん?勇気が返ってくる?」
「そう、ふつふつと勇気が湧いてくるんだって。
すごくない?」
「すごくないよ、多分だけど騙されてるよ」
「やっぱそうだよね。騙されてるよね。わかってはいるんだけど、妙に頼りたくなっちゃってさ」
「ちなみに掛け金はいくらなの?」
「あーそれは人それぞれなんだけど、俺くらいの小心者は月1万円」
「高いって。年間12万だよ!やめておけ」
「やっぱそうだよね」
「そうだよ!胡散臭いのは危険だよ」
「わかったありがとう」
「よかったよ、踏み止まってくれて。お前すぐそういうの引っかかるからな」
「ちょっと待って電話だ」
「おっけー」
「すまんすまん、長引いちゃった」
「大丈夫だよ、仕事の電話でしょ」
「いや、違うんだ。俺勇気の保険に加入するよ」
「は?なんで?お前やめとくって言ったじゃん」
「そうなんだけど、さっき勇気保険センターから連絡があって、入会する勇気が出なかったから、勇気返しますって。そしたらなんか入会しようって勇気がふつふつと湧いてきたんだ!」
「え?怖い。っていうか入会してないのになんで?」
「実は無料お試し1週間プランだけ入ってて」
「うわ、まじか、なにそのやりくち!」
「さー!勇気りんりん!頑張ろう!」
「え、、、、、、、、、洗脳?科学?オカルト?
まったくわからん!でもあいつ活き活きしてるな。まあちゃんと効いてるだったらいいのか、、、、、、、、、、、、、。。。
いいのか!!!???」
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