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フレームワークの背景を知ろう。-VRIO分析編-

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今週は、フレームワークの背景を探るシリーズ第二弾!
先週の『「何を伝えるか」を考える。』という記事の中にも出てきたVRIO分析についてご紹介します。
VRIO分析は、ウェブ解析士認定試験公式テキストでは登場しないフレームワークなのですが、差別化を検討する上で非常に有効なフレームワークです。

先週の記事

フレームワークの背景を探るシリーズ第1弾の記事

VRIO分析とは

まずは、VRIO分析の概要を理解しておきましょう。

経営資源をより詳細に評価する枠組みにVRIO分析がある。

(公社)日本マーケティング協会監修『ベーシック・マーケティング』

企業が競争優位性を保てるかどうかは、企業の保有する経営資源と、それを活用する能力にかかっているという考え方があります。(中略)その経営資源と活用能力を分析する手法が「VRIO分析」です。
(中略)「Value(経済価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の4つの切り口から、情報収集や評価、今後の方針の検討をします。

株式会社アンド『ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発送ツール70』

「中の人」の理解では、内部環境分析のひとつで、競合を定めた上で相対的に評価するツールです。簡単な使い方は下記の記事でも紹介しているので、目を通してみてください。

内部環境にフォーカスしたRBV理論

VRIO分析はリソース・ベースト・ビュー(Resource Based View)と呼ばれる経済学理論に経営学的解釈を与えて落とし込まれたフレームワークと言われています。そこでRBV理論の概要を見ていきましょう。

RBV理論とは

ファイブフォース分析編でご紹介したSCP理論が外部環境(市場構造)を重視した理論であるのに対し、RBV理論は内部環境(経営資源)を重視した理論です。

企業は常に何らかのリソース(人材・技術・知識・ブランドなど)
を投入し、そこからアウトプット(企業の製品・サービス)を生み出す。SCPはアウトプット側の構造・戦略を分析する(中略)逆に、横軸(リソース)に着目するのがRBVだ。

入山章栄『世界標準の経営理論』
()内は中の人による

もう一つの「完全競争」要因

さて、ファイブフォース分析編でご紹介した「完全競争」の要因をおさらいしてみましょう。

①たくさんの企業が競合関係にあり、どの企業も市場価格に影響を与えられない
②新規参入の妨げになる障壁が全くない
③製品は差別化されていない

この3つの要件を満たす市場は儲からないよね、だから完全独占を目指して差別化するのが大事だよね。というのがSCP理論のあらましでした。

RBVではこれに加えて、

④製品・サービスを作るための経営資源(技術・人材など)がコストなく他企業に移動できる。

という完全競争を成り立たせる4つ目の要素が重要になってきます。
どういうことかというと、「③製品は差別化されていない」=全ての製品が同質化しているとすると、企業は同じリソースを持っているはず。逆に考えると、異なるリソースを持っていて、それが他企業に移動できなければ競合は同じ製品を作ることはできない。つまり、条件③を崩し(差別化に成功し)、完全独占に近づける。というのがRBV理論の根幹にある考え方です。

RBV理論の骨子

上記した4つ目の完全競争の要因に着目したRBVは企業の「持続的な競争優位」を実現するための経営資源(リソース)の条件を下記のように言及しています。

まず、競争優位を実現するために、経営資源は価値があり(Valuable)、希少である(Rare)という、2つの条件を満たす必要があります。
そして、それらを持続可能にするために、模倣困難(Inimitable)で、代替が難しい( Non -substitutable)という更に2つの条件を満たす必要があるそうです。

模倣困難なリソースとは

RBV理論では更に、模倣困難性について「リソースひとつひとつの価値よりも、その組み合わせ方が大事である」としています。そして、組み合わされたリソースが模倣困難になる条件として下記3つを挙げています。

蓄積経緯の独自性:企業が時間をかけて組み合わせて蓄積したリソース群ほど模倣されにくい
②因果曖昧性:因果関係が複雑なリソース群ほど、「一番大事なリソース」や「価値の本質的な要因」などが分かりづらくなり、模倣されにくい
③社会的複雑性:リソースが複雑な人間関係や社会関係(企業内の人間関係や顧客・サプライヤーとの関係)に依拠するほど、他社がそのリソースを扱いづらくなる

入山章栄『世界標準の経営理論』を参考に「中の人」が要約

RBVから考えるVRIO分析

RBV理論を何となく理解したところで、VRIO分析を考えてみましょう。
単に価値・希少性・模倣困難性・組織を評価しろと言われても「評価軸がわからん」って感じですよね。特に「中の人」が難しいと感じていたのは「模倣困難性」の評価。ですが、VRIO分析の背景になっているRBV理論をそれとなく理解していると、どういう状態が模倣困難かというのがはっきりして評価軸をもてた気がします。

まとめ

RBV理論もSCP理論と同様に、「いかに完全競争の条件を崩し、完全独占に近づくか」という命題を持っており、SCP理論とはアプローチ手法が違うだけだと「中の人」は認識しています。

SCP理論は外部環境に働きかけるのに対し、RBV理論は内部環境に働きかけます。(とは言っても内部環境も相対評価を行うので外部環境ありきですが)
「RBVは実務的ではない」とも言われているようですが、個人的にVRIO分析はよく使います。その背景にあるRBV理論を知っているのと、知らないのとではフレームワークから吐き出されるアウトプットの質に違いが出るのでは。なんて思っています。

あとがき

さてさて、今週も最後まで読んでいただきありがとうございます。
そろそろネタを見つけるのに苦労するようになってきました。(笑)

今週はフレームワークの背景シリーズ(勝手にシリーズ化)第二弾でしたが、いかがでしたか?
「他人は簡単に変えられないから、自分が変わりなさい」ってよく言うじゃないですか。RBVはそれを企業に置き換えた考え方かもしれないなぁ。なんて「中の人」は思っていました。

最後に宣伝ですが、「中の人」がFlashセミナーに登場します。
ウェブ解析士のnoteを読んでくださっている方は何となく察していると思いますが、毎週必死に勉強しながら書いているんですよね。(笑)
で、そんな「中の人」が勉強している時に大事にしていることや勉強のコツなんかをお話しさせていただきます。
「こんなことが聞きたい」的なことがもしあれば、コメントしてみてください。コメントいただければ、セミナーの中で回答できるように努めます。

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