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ビジネスに応用される心理学効果-認知バイアスという落とし穴-

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
さて、戦略を作るステップを簡単に分類すると、「情報収集」と「情報整理」そして「意思決定」というフェーズに分解できますよね。今週はその中でも「情報収集」のフェーズにフォーカスしてみようと思います。

皆さんは、”正しい”情報収集ができていますか?
人間は認知できる量にキャパシティがあるので、知らず知らず情報を取捨選択しているそうなのです。このせいで、偏った情報のみに晒されて誤った意思決定をすることがあるんだそうですよ。
これらの歪みのことを「認知バイアス」と呼ぶそうです。と、いうことで今週は「認知バイアス」についてご紹介します。

パフォーマンス・アプレイザル

認知バイアスの中でも、ビジネス環境などの情報を評価する際に発動する認知バイアスの一種、「認知的な評価プロセス(performance appraisal)」と呼ばれるものが経営学では重視されいてます。
今回は、『世界標準の経営理論』で紹介されている、4つの代表的なパフォーマンス・アプレイザルをご紹介します。

ハロー効果

このハローは、挨拶のHelloでも、磯波を意味する波浪でもなく、「後光」という意味のhaloらしいです。
なんで後光なのかというと、商品や他者を評価する際に、細かい分析をせずに特徴的な印象にその評価が引っ張られる様を、後光に当てられる様子に例えているらしいです。
例えばですが、イケメンな人がいるとしましょう。ルックスがいいと、なんとなく「性格もいいんじゃないか」という思い込みが生じます。よって、イケメンはどんどんモテモテになっていくわけですね。(悔しい…)
この効果はCMなどでタレントを起用する際にも使われているそうです。
例えば、好感度の高いタレントを使用して、商品の好感度を上げようと画策したりといった具合です。

利用可能性バイアス

利用可能性バイアスは、記憶から情報を引っ張り出す際に「簡単に思い出せるものから優先的に引っ張り出し、それに判断を頼る」というバイアスです。中でも、以下の3つの特徴が優先的に引っ張り出されやすいそうです。

想起容易性
記憶した時のインパクトが大きい情報ほど引き出しの優先度が高まる。

検索容易性
記憶の中から即座に検索しやすい情報ほど引き出しの優先度が高まる。
例えば、「いつも使っているもの」など、経験則などが当てはまるかもしれないですね。

具体性
身近な人から聞いた具体的な情報は、普遍性・代表性がないにもかかわらず引き出しの優先度が高まる。
「あの人が言うなら」と言うバイアスのことですね。

対応バイアス

対応バイアスは「事故や事件が起きた際に、その原因が周辺環境にあるにもかかわらず、当事者の人柄・資質などに責任を帰してしまう」バイアスのことだそうです。
作業場が整頓されていないため起きた転倒事故を、本人の注意散漫と片づけてしまったり、よくありそうですよね。
職場で起きる事故の6〜7割は環境要因で起きているにもかかわらず、事故の6〜8割のケースでその責任を担当者の資質に求めているとする研究もあるそうです。

代表性バイアス

代表性バイアスとは、「典型例と類似している事象の確率を過大評価してしまう」と言うバイアスです。
例えば、やたらノリが良くて冗談を好む人に出会うと、「この人関西人かなぁ」と思ってしまうものがこれに当てはまるそうです。あるいは、ある人の評価が第一印象に引っ張られてしまうような事象もこれに当てはまるとか。
ある物事に対して、自分の中で知らずのうちに「こうあるべき」と言う姿を作り上げてしまうバイアスのことだそうです。

個人の弱みは組織で克服する

個々人が持っている認知バイアスは、一つのベクトルしか持っていません。そのため、個人で認知バイアスを乗り越えるには「自分で自覚する」しかありません。しかし、経営においては組織としての判断することができる。経営陣に多様性があることで、認知バイアスのベクトルが分かれ、それぞれがそれぞれのバイアスに気づくことができるそうです。

アテンション・ベースト・ビュー

こうした考え方を「アテンション・ベースト・ビュー(Attention-Based View=ABV)と言うそうです。アテンションとは「人の認知的な注意関心」を指し、「企業は人の認知の集合体」と言う前提に立つのがABVです。ABVでは「企業活動における認知バイアスは、経営者を取り巻く組織構造・人脈・メンバー編成にも強く規定される」としています。意訳すると、組織が多様性に富むならば、認知バイアスを克服することができる。ということだと「中の人」は解釈しています。

組織的な認知バイアス

しかし、そう簡単にいかないのが経営ですよね。なんと、組織になっても認知バイアスは付きまとうそうです。
特に、イングループ・バイアスというものが悪さをするんだそうですよ。
イングループ・バイアスを説明するには社会分類理論というものを理解する必要があります。
社会分類理論とは、組織の中で人が他者を無意識的にグループ分けするようになるとする理論です。大勢が集まって組織を成している場合、その一人一人の情報を正確に把握することが難しくなります。そこで、簡略的に把握するために「Aグループ」「Bグループ」のようにカテゴライズして認知する傾向があるそうです。
このグループ分けが厄介なのは、自分と同じグループに属する人を好意的に捉えるバイアスが生じることです。(相対的に自分の属さないグループを”好意的に捉えない”バイアスとも言えます)これが、イングループ・バイアスです。
例えば「女性VS男性」や「氷河期世代VSゆとり世代」など、イングループ・バイアスで生じたグループ間で軋轢が生じることで組織のパフォーマンスが上がらないといった事象を巻き起こします。

タスク型とデモグラフィー型

組織に多様性をもたらすことで、個人の認知バイアスを乗り越えられるかもしれない。けれど、組織に多様性があると組織的な認知バイアスが生じるというどっちに転んでも難しい状況ですよね。。。
これらのヒントとなるのが、多様性の型にあります。
多様性には大きく分けて、知見・能力・経験などの内面的な「タスク型」の多様性と、性別・年齢・人種などの外面的な「デモグラフィー型」の多様性があるそうです。
タスク型の多様性になると、それぞれ異なる知が組み合わさって組織パフォーマンスを上げる効果があるそうです。
一方で、デモグラフィー型の多様性は、上述したイングループ・バイアスを生じさせやすくなるため、組織パフォーマンスが停滞するのだそうです。

じゃあ、タスク型で多様性を確保すればいいのかというと、これまたそんなに簡単じゃないんですよね。多様な知見・能力・経験を得ようとすると、自ずと性別や年齢などデモグラフィーがバラけるようになります。するとどうでしょう、タスク型で多様性を確保していたが、同時にデモグラフィー型の多様性も孕んできますよね。
まぁ、そう簡単にはいかないので、「バランスをどうとっていくのか」が経営なのでしょうね。

まとめ

今週は、戦略を作る際の「情報収集」にフォーカスして、私たちは知らずのうちに認知バイアスを通して偏った情報を集めている可能性があることを記しました。
そうした、認知バイアスを克服するには、多様性のある組織である必要がある。しかし、組織に多様性があると、組織的な認知バイアスが邪魔をしてくるよ。という堂々巡りで結論のない記事になってしまいましたね。(苦笑)
しかし、重要なのは認知バイアスの存在を自覚することです。「自覚する」なんていうと精神論的になってしまいますが、認知バイアスという存在を知っていると、「正しい情報収集ができているかな?」と立ち止まって考える機会を作ることができます。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回は心理学やそれに紐づく行動経済学の範疇のお話でした。こうして考えると、ビジネスって本当に多岐に渡る知識が必要なんだなぁって思いますよね。「中の人」はマーケティングのこういった”学際的・学問横断的”な側面が大好きです。知らないことを知っていくとワクワクしますよね。
今回は本当にネタに困って、いつもと違う方向を攻めてみた結果のテーマなのですがインプットしてみて、多角的に物事を見るためには、いろんな知識を持っていなければなぁと改めて思った次第です。
記事中にも「多様性」なんてワードが出てきましたが、このnoteも記事の多様性を確保していきたいななんて思いました。
「中の人」の見識だけでは、テーマが偏りがちなので、書いてほしい・調べてほしいテーマがあればぜひコメントしていってください。

それでは、また来週お会いしましょう。

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