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「何を伝えるか」を考える。 フレームワークを活用したメッセージの作り方

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
今回は、以前「戦略的メッセージの構成手順」という記事を書いた際に、チラッとだけ触れた「中の人」が戦略的メッセージを考える際の思考プロセスをご紹介しようと思います。
以前の記事はこちら↓

こちらの記事の【What to Say】を深掘りしていきます。

全体像

まずは、「中の人」の思考プロセスの全体像をご覧ください。
【目的の整理】【ターゲット理解】【構成要素の検討】【企業方針との整合性】という4つのフェーズに分け、フレームワークを活用しながらメッセージの核を抽出します。その後、以前の記事で触れたようにクリエイティブ職の方と協働しながらHow to Sayへと落とし込みます。

「中の人」の思考プロセス

1.目的の整理

「メッセージを作る」という行為そのものに、何かしらの目的があるはずです。まずは、その目的を整理していきます。

As is / To be

最初に、目指すもの(目的)と現状のギャップを正しく理解するために、As is / To be分析を行います。
例えば、メッセージ作成の使用場面がウェブサイトであれば、リード獲得や売上を作ることなどが目的として挙げられると思います。リード獲得を目的とするなら、何件の獲得を目指すのかといった具合に、具体的にイメージが持てるように数値化を行います。
理想の状態をイメージできたら、現状の整理です。理想に対してどれくらい差が生じているのかを正確に把握します。

6W2H

理想の状態(目的)と現状のギャップを直視することができたら、次は仮説を立てるフェーズです。その際に、6W2H分析にかけることでギャップの原因となっているものや、阻害要因を整理することができます。

上記2つの分析を行うことで、メッセージを作成することによって解決したい課題=目的を明確にしていきます。
As is / To be分析と6W2H分析の使い方については以下の記事で紹介していますのでご参照ください。

2.ターゲット理解

さぁ、自社で取り組むべき課題や目指すべきゴール地点が見えたら、メッセージ作成の肝であるターゲットの設定と理解促進を行っていきます。
「誰に(どんな人・どんな課題を抱えている人)」を対象とするかによって、抽出されるメッセージに差異が生じます。届けたい人に、届けたい内容を適切に届けるために、このフェーズも丁寧におこなっていきます。

STP分析

このフェーズでまず行うのは、どの市場セグメントを狙うのかを明確にすることです。STP分析を活用しながら、自社が狙うターゲットセグメントを明確にしていきます。
STP分析についても、以前の記事でご紹介していますので下記ご参照ください。

ペルソナ設計

ターゲットセグメントが明確になったら、次に行うのはそのセグメントに属するユーザーの解像度を上げることです。
ここではペルソナ分析を活用してイメージを固めていきます。下記の記事でも紹介したように、STP分析から定量データを固め、二次データなどを活用しながら定性データを固めていくのがイメージしやすいと思います。

インサイトの検討

次に、ペルソナで導き出されたユーザーの心理への理解を深めます。可能であればユーザーインタビューを通して、ユーザーの悩みやニーズ・ウォンツを引き出します。
また、目的に対して(行動してもらうために)どんな阻害要因があるのかの検討も行っていきます。
ユーザーインタビューができない場合はソーシャルリスニングなどを活用しながら、ユーザーに関する情報を集めていきましょう。
ここで収集できた情報をテキストマイニングにかけるなどして、傾向を見出します。
悩みや、ニーズ・ウォンツの傾向が掴めたら、それらの情報をもとにインサイトの仮説を立てます。
インサイトについては下記の記事が参考になるので、引用してご紹介しますね。

インサイトは直訳すると「洞察」や「物事を見抜く力」などを意味します。そして、マーケティングにおけるインサイトの意味としては、「人を動かす隠れた心理」を指しています。消費者自身も気づいていない無意識の心理ですが、認識すれば行動を起こすでしょう。

無意識の状態ということで、インサイトは「潜在ニーズ」と混同されることがありますが、これは正しいとは言えません。例えば、「痩せたい」という顕在ニーズがあると仮定します。なぜ痩せたいのかさらに掘り下げると、「健康になりたい」「おしゃれな服が着たい」「自信を持ちたい」などといった理由、潜在ニーズが見えてきます。潜在ニーズは欲求があるのにそれに気付いていない状態を指し、対してインサイトはまだ欲求さえない状態を指しています。

引用記事:WOWOW COMMUNICATIONS コミュニティーマーケティング専門ブログ
「インサイト」とは?マーケティング戦略に役立つ消費者の心理

3.構成要素の検討

ここまできて、ようやくメッセージの構成要素について検討していきます。
まず、ユーザーのニーズやインサイトに基づいて訴求する便益(伝える価値)を決めます。
訴求する便益は大きく分けて「機能的価値」と「情緒的価値」に分けられます。また、訴求便益を決定するにあたり、「自社の強みを活かせるか」「競合に対する優位性を保ことができるか」と言う点を検討していきます。

強みの検討

自社の強みを主観(絶対評価)と客観(相対評価)で検討します。
まず、(クロス)SWOT分析で脅威や機会に対応しうる強みは何かを検討します。これが自社主観で導き出す強みになります。
ここで導き出された強みをコア・コンピタンス分析にかけて、競合との相対的な強みを抽出します。

訴求便益の検討

前のステップで導き出した、ユーザーのインサイトやニーズ・ウォンツに対して自社のどの強みをぶつけることができるかを検討します。ここではバリュープロポジションと呼ばれるフレームワークを使用します。
ユーザーのニーズに対して、自社が提供できること、競合が提供できることを書き出します。その中から、(ニーズがある前提で)自社に提供できて、競合に提供できない価値はないかという検討を行います。

競合優位性の検討

上記で抽出された「自社だから提供できる価値」について、VRIO分析にかけることで希少性や模倣困難性を数値的に表し、競合に対して優位に立てるかを検討します。
併せて、POP(Point of Parity:これを備えてないと選んでもらえない)とPOD(Point of Difference;これを備えると選んでもらえる)を整理し、提供する便益の土台を作ります。

コンセプトの決定

ユーザーニーズに対して提供する便益が決まり、競合に対する優位性も確保できたら、いよいよコンセプト(メッセージの核)を作成します。
ターゲット – 商品サービス、理想 – 具体策という軸を交差させると、交差点に課題が見えてきます。それらをフレームワーク化した「十字フレーム」と呼ばれるものを「中の人」は活用しています。
「十字フレーム」については、下記の書籍を参考にしています。

4.整合性をとる

ここでは、これまでのステップで生み出したコンセプトが、企業の方針に則しているか、戦略としての妥当性があるかなどを検討していきます。

企業方針との整合性

まずは、上記のステップで固めたコンセプトが企業の方針ないし事業部門の方針に則っているかを評価します。
企業には、「企業理念」「社是」「ビジョン・ミッション」など呼び方は様々ですが「戦略上位概念」と呼ばれるものが存在します。「戦略上位概念」は全ての戦略に対して優位性を持ちます。法律で言うと憲法みたいなものですね。
戦略は、カスケードダウンをしていくので、末端業務中に理念などは思考の奥底に追いやられてしまうことがほとんどです。しかし、企業として向かう方向とずれてしまうと、インパクトが生まれないどころか、企業ブランドの毀損につながる可能性が高いので、コンセプトの段階で整合性をとっておくことが重要です。

抽出したコンセプトの評価

次に、戦略的メッセージが機能するか、という点を吟味していきます。
ここで参考になるのが、4つのSに対する評価です。4つのSとはSelective(選択的か)/Sufficient(十分か) /Sustainable(継続可能か) /Synchronized(自社の特徴と整合性があるか)を指します。
4つ全てが合格でなくても良いのですが、一つも当てはまらない場合、その戦略は十分に機能してくれないでしょう。
特に、「中の人」が重要視するのはSelectiveとSynchronizedです。ターゲットや伝える価値が十分に絞り込まれているか、それは自社の強みを発揮し、会社の方針に則っているか。という2点さえクリアしていれば、残り2つのSは加点方式となります。最低限この2点はクリアできるように、コンセプトの抽出をおこなっています。

まとめ

ここまで、長々と書き連ねてきましたが、最終的には、以前ご紹介したAB3C分析と言うフレームワークに落とし込みます。

引用元:https://ab3c.jp/about/

AB3C分析というフレームワークを最大限活かすために、入れ子のように複数のフレームワークを用いて細かく検討していきます。
そうすることで、より効果的な戦略的メッセージが抽出できるのではないかと考えています。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
以前書いた記事の1パートを深掘りするだけなのに、すごい文字数になってしまいました。。。
フレームワークを活用するためにフレームワークを活用するって、字面で見ても変な感じですよね。笑
でも、フレームワークが何を目的としているのか、その目的のレイヤーを理解することで、より効果的にフレームワークを活用できるのだと思っています。
「中の人」はいわゆる【アイデアマン】ではないので、こうしてフレームワークを活用しながら、思考を整理・可視化していくことでアイデアを絞り出しています。
戦略的メッセージはウェブサイトのリニューアルコンセプトやSNSの運用企画など、使用できる場面は非常に多様です。「誰に」「何を」伝えるのかを考える際のツールとして活用していだければ幸いです。

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