見出し画像

戦略的メッセージの構成手順

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
マーケティングの4P(Products, Price, Place, Promotion)のうち、ウェブが担う領域の大部分はPromotionでしょう。ということは、ウェブ解析士の皆さんが日頃触れているのもPromotion領域なのではないでしょうか?
今回は、Promotionの根幹である”メッセージ”について考えてみようと思います。

戦略的メッセージ 3つの構成要素

戦略的メッセージには下記の通り3つの構成要素があります。これらの要素を選択し、組み立てることで効果的なメッセージを作ることができます。

・What to Say「何を伝えるか」
商品やサービスの魅力を、どの視点で語るかを考えます
・How to Say 「どのように伝えるか」
伝えたいメッセージをどう表現するか、を考えます
・Who Says「誰が伝えるか」
メッセージを伝える主語をどうするのか、を考えます

以下、それぞれをざっくり見ていきましょう。

What to Say「何を伝えるか」

ここが戦略的メッセージの根幹になります。「コンセプト」と言い換えることもできます。
一つの商品・サービスでも切り取る視点よって、メッセージ性も変わってきます。あらゆる視点からさまざまな可能性を検討することが重要です。
『ゼミナール マーケティング入門』という書籍で参考になる視点が掲載されているのでご紹介いたします。

①製品・サービスそのものの特徴をとらえる
(名称・便益・イメージなど)
②製品・サービスと顧客の関係をとらえる
(用途・使用シーン・ターゲットタイプなど)
③製品・サービスを提供する企業の特性をとらえる
(生産技術や企業理念・歴史など)
④他社の製品・サービスとの競争関係をとらえる
(優位性や差別性など)

日本経済新聞出版社『ゼミナール マーケティング入門』から参照

この書籍ではコカ・コーラ社のスローガンを例にしているので、特徴的なものを整理してみます。

「おいしく、さわやか」(1886年)
コカ・コーラ発売当初のスローガンです。これは①製品・サービスそのものの特徴をとらえる。という視点から考えられたものと推測できます。

「ショッピングする人の万能薬」(1907年)
「さわやかな憩いのひととき」(1929年)

これらは、②製品・サービスと顧客の関係をとらえるという視点から、利用シーンを訴求しています。また、同時に”瓶詰め技術の発達”という③製品・サービスを提供する企業の特性を踏まえて「どこでも飲める」という訴求も含まれていますね。

「ほとんどみんな最高のものが好き」(1955年)
「コークを飲むともっといい」(1963年)

この辺りは、台頭してきた競合「ペプシコーラ」を念頭に④他社の製品・サービスとの競争関係をとらえるという視点でメッセージが作られています。

さらに認知が進んだ現代では、
「Cokeのきいた人生を」(2007年)
という企業の世界観(③製品・サービスを提供する企業の特性をとらえる的視点)でのスローガンが出されるようになっています。

上記のように、同じ商品をとっても訴求されるメッセージのバリエーションが豊富なことがわかります。どの視点で、どんな訴求をするのかをここではしっかりと整理しましょう。
これに加え、「中の人」は下図のようなプロセスを経てメッセージの核を抽出します。これについて触れると、文字数がすごいことになりそうなので、また別の機会に触れるとしましょう。

「中の人」が戦略的メッセージを考える際の思考プロセス

How to Say「どう伝えるか」

戦略的メッセージの構成プロセスは大きく分けて2段階です。初めに「コンセプト形成」を行い、次いで「表現制作」となります。
What to Say「何を伝えるか」を考えるのが「コンセプト形成」にあたります。このHow to Say「どう伝えるか」では「表現制作」のフェーズであることを理解しておきましょう。
(正直、「中の人」はこのフェーズが得意ではないので触り程度の説明になってしまいます。。。)
「自動車」という製品を例にとって、考えてみましょう。
「何を伝えるか」という点において、「ターゲットは中高年層、高いステータス性、憧れるブランド」というコンセプトを抽出したとしましょう。
チラシやウェブサイトに「高いステータス性!!みんなの憧れるブランドを」みたいなキャッチコピーが載っていたとして、どうでしょう?
あまり響かないんじゃないかなぁと思います。そこで、コピーライターなどクリエイティブ領域を専門にする人が登場するわけですね。
ちなみに、上記の自動車の事例ですが、「いつかはクラウン」というイメージを持った言葉が紡がれています。

また、「どう表現するか」だけでなく「どんな手段で伝えるか」という検討も必要になります。
コミュニケーション手段には下記の4類型が存在します。

・広告
「明示された広告主による、アイデア、財、サービスに関する有料の非人的な提示とプロモーション」
・セールス・プロモーション
「製品やサービスの購入を促進するための短期的な動機づけ」
(クーポンや試供品配布などが当てはまります)
・人的販売
「販売を目的として見込み客との対話を通じて行われる口頭によるプレゼンテーション」
・パブリシティ(PR活動)
「自社の製品やサービスに関連する情報を、報道機関に報道してくれるように働きかける活動」

これらを組み合わせながら、訴求したいメッセージを効率的に届ける手段を構築していきます。また、コミュニケーション手段の選択は次にあげるWho Says「誰が伝えるか」にも関わってきます。

Who Says「誰が伝えるか」

ここまでで、「伝えたい内容」と「伝える方針」が定まりました。ここでは、「そのメッセージの主語は誰ですか?」という点を検討していきます。これ、一般的な書籍ではあまり触れられることのない内容(上記の「どう伝えるか」にまとめられている内容)なのですが、「中の人」はとっても重要なことだと思っています。
例えば、社内会議で「次期は〇〇に注力した方がいいと思います」という発言、部長が言うのと新卒社員が言うのでは言葉の重みが違いますよね。
企業発信のメッセージでも同じことだと思うんです。

そこで、トリプルメディアをもとに、「誰に言わせるか」を検討していきます。

・ペイドメディア
「何らかの料金を支払って見込み客との接点を確保するためのメディア」
=いわゆる広告ですね。
・オウンドメディア
「自社が所有し、顧客への情報提供を行うメディア」
=自社サイトやSNSの自社アカウント〜商品パッケージやカタログなどまで含む)
・アーンドメディア
「信頼や評判などを獲得するメディア」
=報道機関による報道や口コミなど

コントロールのしやすさは、【オウンドメディア>ペイドメディア>>アーンドメディア】といった感じでしょうか。
主語を起点に考えると、オウンドメディアやペイドメディアは”I"(一人称)です。一方で、アーンドメディアは”They"(三人称)になります。
これらに加え、近年ではシェアードメディアという考え方がなされるようになりました。

シェアードメディア
ソーシャルメディアなどのユーザーが情報をシェアするメディアのことです。
今までアーンドメディアが担っていたSNSの分野に特化したメディアを指します。

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2022』p160より引用

このシェアードメディアの特徴はUGC(User Generated Contents=ユーザーが個人で生成したコンテンツ)です。主語で考えると、トリプルメディアでは創出することのできなかった”You"(二人称)での発信を実現しています。

どれが良い・悪いというわけではなく、かかる労力やコスト、商材特性を理解しながら選択する必要があります。

まとめ

戦略的メッセージを構成する際には、まず「何を伝えるか」という軸を定めます。その後、「どう伝えるか」というフェーズでクリエイティブに落とし込んだり、伝える手段の選択をおこなったりします。
最後に、「誰が伝えるか」というフェーズで主語を起点に発信者を設定します。
この文字数で伝えきるには少々主題が大きすぎたので、どこかで一部を切り取ってご紹介できたらなと考えています。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
実は、先週「ユニバーサル・ライティング講座」なるものを受講しまして、「文章で伝える」ということの難しさを痛感したばかりであります。で、講座を受けて初めて書く記事で何だか肩肘が張っております。
そんな裏話は置いておいて、今回お伝えしたかったのは「メッセージも思いつきで作るものではなく、プロセスがあるんだよ」ってこと。そして「誰がいうかも結構大事」ってことです。
かく言う私も、なぜ個人のメディアではなく、協会公式noteで執筆しているかというと、より多くの皆さんに届けたいから「協会公式が言う」を選択しました。
名もない一個人の発信よりも、きっと皆さんに届き、きっとお役に立てるはずだと思っています。(そうあるように努力します)


「何を伝えるか」のフェーズについては、どこかでもう少し掘り下げようと思っていますので、期待せずお待ちください。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?