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#6 介護・福祉の現場から「仕組みのシンプル化」で誰もが幸せになる働き方ー中平武志さん

こんにちは。「ワーク・ライフチャレンジ〜未来をひらく私たちの働き方〜」6話目は介護・福祉の現場で取り組むワーク・ライフバランスのエピソードをお届けします。

本日は、高知県を拠点に株式会社 幸 代表取締役として、介護・福祉サービスを提供されている中平武志(なかひらたけし)さんをお迎えしました。

🔽プロフィール
中平 武志(なかひら たけし)さん
株式会社 幸 代表取締役
活動拠点:高知県高知市

平成21年6月 高知県高知市にて株式会社 幸を設立。
平成25年3月 障がい福祉のサービス開始。
設立以来、通所介護、重心型放課後等デイサービス、児童発達支援、生活介護を事業とし、ご利用者様の自立支援と職員の働きがいを両立させることを理念に、 地域に根差した介護、福祉サービスを提供。現在、4つの事業所を運営。
令和4年11月1日「高知県ワークライフバランス推進企業」として、5部門中、全ての部門で認証を取得。
株式会社ワーク・ライフバランス コンサルタント養成講座 第52期 修了。
プライベートでは4児の父。



自己紹介

──本日お話しいただく中平さんのプロフィールをご紹介します。

前川
 中平さんは2009年、 高知県高知市にて株式会社 幸を設立以来、通所介護、重心型放課後等デイサービス、児童発達支援、生活介護を事業とし、利用者様の自立支援と職員の働きがいを両立させることを理念に、 地域に根差した介護、福祉サービスを提供されています。

ワーク・ライフバランスとの出会い

──具体的な中平さんの活動内容を、お伺いできますでしょうか。

中平さん
 ご紹介ありがとうございます。 株式会社 幸は、もともと高知県高知市大津で、介護保険の事業所としてスタートをさせていただきました。その時は、依頼があれば、全て受け入れるというスタイルで、やっておりました。ご高齢者の方だけを対象にしたつもりでしたが、気づいたら障がい者の方とか障がい児の方にも来ていただけるようになっていきました。

どんどん依頼をいただき、成長をさせていただいております。現在は4拠点で営業をさせてもらっております。ありがたいことに、生後6か月のお子さんから104歳のご利用者様まで、さまざまな方に来ていただいております。


前川
 ありがとうございます。104歳の方もいらっしゃるのですね。


製造業から、介護サービスの会社設立

──以前、製造のお仕事をされていたと伺いました。

中平さん 製造業で働いた後、転職を機に職業訓練の時に介護に出会いました。製造でモノに向き合っていたのですが、ある介護施設で目にしたのは、人ではなく製造業と同じようにモノとして扱われる利用者の方々でした。僕は、利用者の方々が安心して暮らせる社会を実現するためこの世界を変えていきたいと思いまして、経験もないまま創業をさせていただきました。


前川
 中平さんがご経験された現場が、かなり大変だったということでしょうか。


中平さん
 大変だったと思いますが、忙しければ、人がモノとして扱われていいのかと、すごく違和感を感じました。そして、「僕は絶対負けたくない」と思い、株式会社 幸を立ち上げました。

創業当時、ワーク・ライフバランスという言葉を僕は知りませんでしたが、当然サービス残業はするべきではないと思っておりました。僕自身、とても多趣味なので、自分の時間も欲しいけど、時間だけでなく、お金も必要になりますよね。

今でいうライフとワークの時間がしっかり分けられた上で、キャリアアップをしっかりできるような会社を作りたいということで、2009年に創業し、いろんな方のお世話になりました。そして給料の額を上げたいと思い、一律29万2000円という金額に設定しました。

当時、高知県の介護職の平均賃金というのが大体17万円や18万円で、初任給は大体12万円〜13万円でした。僕自身、みんなが働きやすい環境で、お給料もよくて、いいサービスが提供できる会社を作りたかったのです。

いざやってみたら大失敗で、給料を固定し、残業代込みにしてしまったので、「お給料変わらないのなら、別に真面目に働かなくてもいいよね」という空気感が、早くから出来上がってしまいました。自分は毎日、日付が変わって、夜中1時や2時くらいまで働いているけど、みんなは17時半で帰っていく感じでした。

ありがたいことに、創業当初から数人の利用者さんがいらっしゃったのですが、「今現在、利用されている方に、ちゃんとサービスできていれば、それでいいか」というスタンスでした。そして今にも潰れそうになるということを経験し、 一度、ワーク・ライフバランスという考え方を諦めました。

大津事業所、他県内3カ所ある


ワーク・ライフバランスの取り組み

より良いサービスと職員の働き方を考える

──現在は、ワーク・ライフバランスに取り組まれていると思いますが、きっかけとなったことをお伺いしたいです。

中平さん 最初の半年で完全につまずいて、サービス残業はありませんでしたが、開業したばかりで周りの同業社にも追いつきたいという気持ちが勝り、正社員の平均残業時間は80時間を超えるという状況もありました。

そんな中でもサービスとしては、よいものが提供できていたのではないかなと思います。会社としては、本当に成長させてもらいました。結局、給料は最初の額は維持できなかったのですが、当時、介護職員の平均の月給が大体20万円から25万円と言われている中で、大体28万円ぐらいは、支払うことできました。

そこは、よかったと思いますが、その時も、早くても夜10時ぐらいまでの勤務で、10時過ぎたら僕が差し入れを買ってきて、「もうちょっと頑張ろう」と声をかけてやっておりました。


前川
 私の昔の働き方を思い出します。


中平さん
 転機が訪れたのは創業から8年目のことです。

2017年に第3子が誕生しました。ただ、 家に帰っても寝るだけで、子供と一緒に遊ぶ時間や関わる時間がなく、「これではダメだ」と思い、もう一度ワーク・ライフバランスに踏み出してみようと思いました。最初の失敗のことを振り返ってみて、このことに気づくのに大体8年ぐらいかかりました。

いいサービスをしたいという思いはずっとあって、「より良いサービスをするには、これもやろうよ。あれもやろうよ。」と、どんどん思いつきました。しかし、何か新しいことをやるために、何かをやめる、減らす、効率化するという発想がなく、残業時間も、ずっと伸び続けているという状況に気づきませんでした。

働き方改革」とか「ワーク・ライフバランス」を実現できない原因の一つに、この効率化という概念が僕は一切なかったということに、その時、気づきました。そんな時に、株式会社ワーク・ライフバランスの代表取締役の小室淑恵さんが、2019年に高知県の事業で講演に来ておりました。

新聞やニュースでは拝見していていたので、働き方改革という概念を提案された方だというのは知っておりました。働き方改革やワーク・ライフバランスというのは、単に、みんなが働きやすく、楽になり、キャリアアップを進めていくことだと思っていましたが、講演会に参加して初めて、それは勘違いだったことに気がつきました。

本当のワーク・ライフバランスは、経営戦略として、経営や数字を意識したものでした。 それを実現することにより、理想的な働き方が確立できるという内容でした。「自分が求めていたのは、これだ!」と思い、株式会社ワーク・ライフバランスのホームページを見て、コンサルティングに興味を持ちました。

他にも見てみると、 ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を見つけまして、受講料は働き方改革を進める経費としては、全然高いものではありませんでした。「もう、受講するしかない!」と思い、参加させていただいたことが、働き方改革が加速する一番最初のきっかけですね。


前川
 ありがとうございます。創業後に、働き方改革取り組まれて、その上で、やはり、難しいと思われたようですが、お子さんのことで、もう一度取り組みたいという思いから、小室淑恵さんとの出会いがあったのですね。
今、実際に取り組みをされて、成果も出されているというところが、経営者として素晴らしいなと感じました。


男性育休の体験からうまれた「属人化しない仕組み作り」

──ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を勉強されてからの、社内での取り組み内容をお伺いできたらなと思います。

中平さん まず取り組んだのは有休消化の100%達成です。せめて有休だけでも、みんなでしっかり取ろうということが、社内から出まして、まず有休を100%取るということから始めました。最初は失敗して、何名か取得できていない職員が出てしまいました。

「これではダメだ」ということで、毎月管理していくというのを、2015年から始めました。そこから有給休暇も無効になることなく、全て取得できるようになって、8年継続できております。株式会社ワーク・ライフバランスの取り組みで、男性育休100%宣言というのがあって、男性も育休を100%取ろうという宣言をさせてもらっております

初めて男性育休を取得した職員のエピソードをご紹介します。その男性職員の奥さんが、出産するということは聞いておりましたが、お子さんが生まれ、会社に報告に来た時に、育休の話も何もないまま、いきなり「明日から1年間、育休を取らせてもらいますので、よろしくお願いします。」ということになりました。女性の職員が、育休を取ったことは何度かありましたが、今思うと、男性の育休は初めてだったため、 何も準備ができておりませんでした。

翌日から、その職員は育休で出社しない中、その職員しか把握していない仕事がいっぱいあり、やりかけの書類がどこにあるかもわかりませんでした。

引き継ぎをしたのが、僕と女性の職員でした。当時、その女性職員は、小学校に進学したばかりのお子さんがいる中で、大変だったと思いますが一緒に引き継いでくれました。二人で、その職員さんのパソコンを開いて、電話をかけ、パスワードを聞いたりしました。カバンの中も、びっしりと書類が入っていたのですが、どんな書類なのか全くわかりません。

同じく、パソコンの中も、どのファイルがどこに入っているか、全くわかりませんでした。当然なのですが、育休中なので、電話をかけてもなかなか出ません。しかし、こっちは追われているわけですよ。


前川
 そうですよね。


中平さん
 「これはしんどいね」と言いながら、二人で大慌てでした。その経験があったので、 業務の担当を属人化せず、ダブルキャスト、トリプルキャストにし、誰がどのような内容の業務を行なっているかが見える体制を作っていくことが大切だと痛感しました。それは、ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座で学んだときに、重要な部分だと思っていたことでした。

今、思えば、いいきっかけでした。今では「ファイルは自分のパソコンではなく、クラウドサーバーの中のフォルダに必ず入れること。入れてなかったら、人事評価で減点しますよ。」という雰囲気が出来上がっており、守らなければいけないルールとなっております。


前川 
素晴らしいです。

中平さん そういう風に進めていくと、有休取得100%に加え、希望通りの休暇(以下、希望休)取得100%にしていこうと、取り組むことになりました。「やろう!」と宣言して、みんなで取り組みましたが、同時に起こった問題が、小さいお子さんがいらっしゃるとか、介護や看護をされている職員のみ、時間の融通が利く働き方ができてしまいました。

それ以外の職員は、全然取り組めていないという状況になってしまい、自分自身も月に2日しか休めないこともありました。まさにワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座の中で、始めに出てきたワーク・ファミリーバランスとなってしまいます。これでは、取り組みを実現することが出来ません。

希望休の取得には、ほぼ全てに対応しておりますが、「歯医者への通院のために、早く帰りたいです」とか、「子供の通院の予定があるので、この日はお休みを取りたいです」というのは、事前にわかっていることが多いので、原則として2週間以上前に希望休をGoogle フォームで申請をする仕組みにしており、どの職員が、いつ休みを取る予定か、社内誰でも見えるようになっております

休みを申請する前に、誰がいつ休暇取得予定か分かるので、重なってしまいそうな時は変更などをして、譲り合い、予定を立ててもらっております。一番課題になってくるのが、お子さんの運動会とか音楽会とかの行事が延期になったり、 休暇申請の締切日にそういう行事が入ってきたりする時で、その場合、休暇を希望していた方を、出勤させてしまうという事態が発生してしまいます。

ですので、希望休は、100%ではありませんが、95%ぐらいは取れるようになりました。この希望休も、通常、月3日までや5日までというのを、よく聞きますが、弊社は取り放題、申請し放題を実現できています。あと残業時間も、80時間だったのがみるみる減りまして、常勤の平均の残業時間が、大体12〜3時間まで、減らすことができました


前川 
育休を初めて取った男性職員によって、属人化していたと気がついたところから、属人化しない仕組みを作られたことで、その上で休暇も希望通り取得できるようになり、残業時間も月平均80時間から約10時間と、減らすことができたということ、素晴らしい実績ですね。

大津事業所 職員の皆様


──シンプルに全て仕組み化できたところが、ワーク・ライフバランスと働き方改革の実現を加速させたという形ですか。

中平さん はい、属人化していた時は、自分以外の人の業務が、全然分かりませんでした。ファイルの内容や場所が、一部の職員のみしか分からないということが、頻繁に起こっておりました。

それを、きちんとみんなで把握しようということで、ルールを整備していきました。2019年は、現場のみの担当と事務も担当の職員、両方がおりました。どうしても現場優先になってしまうので、現場のみの担当職員が業務を終えた後に、事務も担当の職員がその後の事務処理を行うと、事務も担当する職員のみの残業が増えていくのです。ほんとは早く帰りたい職員でも、残業が増えていくという状況になってしまいました。

「これではいけない」ということで、事務作業もみんなでやると、方向を転換して、今は進めています。パート職員など、一部事務作業のない職員さんもいらっしゃいますが、非常勤パート職員、常勤職員に関しては、事務処理も行うということにしております。そして、全ての業務に、基本としてダブルキャスト、トリプルキャスト以上の配置をしております。


「働き方改革」を社内で加速させるコツ

──様々な取り組みを、社内で推進するにあたって、職員の皆様の反応やエピソードをお伺いしたいです。

中平さん 働き方改革、ワーク・ライフバランスの実現を進めていきたいと、皆さん感じていると思います。会社の代表として、より働きやすい会社にするためには、効率化は絶対必要というお話を先程させていただきましたが、効率化するためには、同じやり方で生産性を上げようとすると、長時間働くという方向になってしまうので、やり方を変えて効率的にする必要があると思います。

効率的なやり方に変えるための提案をすると、意外と多くの社員が「今のままのやり方が、いいです。」と言うのです。「今と同じやり方だと、今と同じ結果しか出ないから、効率化ができるような、新しいやり方に変えよう。」と話しても、「新しいやり方で、出来る方だけでやってください。」のような否定的な意見が多く出ました。組織では変化を恐れる風土が根強く、働き方改革が進みにくいという課題があります。

その時はさすがに、心折れました。先のエピソードでお話しした育休の引き継ぎを受けた女性スタッフには、当時、小学1年生のお子さんがおりましたが、その方もワーク・ライフバランスをとても意識していて、残業はしたくないと思っていました。子どもの成長を見届けたいし、キャリアアップもしていきたいと、考えている職員だったので、現場の担当から、管理する担当の職員に上がってもらいました。

いざ、その立場になった時に話していたのが、「働き方改革を進めるというのは、こんなに大変なことなのですね。」ということでした。「有休100%消化」という会社の取り組みも、「自分の管理は自己責任でしっかり行い、計画的に取得してくださいね」と何度も繰り返して伝えていたのですが、いざ、取れてないまま無効になったら、「なんで教えてくれないのですか。」と言ってくるのです。

管理を担当している職員は、職員全員が働きやすくしていきたいと思ってやっているのに、逆に批判的な声が多く上がってきてしまい、この取り組みの中止を提案されてしまいました。僕も以前、心が折れたことがあったので、頑張っていこうと励まし続けました。現在は成果につながり、止まることなく進んでおります。

働き方改革の舵を切る人は、大体否定されます。ここでスムーズにいく方法がありまして、それは人のせいにするということです。「これは、世の中の流れだから、取り組まないといけないよね。」とか「コンサルタントの方が、言っていることだから、やらないといけない。」などです。

その中で、特に効果的だった方法を紹介します。弊社が、高知県ワークライフバランス推進企業認証というのをとりまして、年次有給休暇の取得促進部門、女性の活躍推進部門、健康経営部門、次世代育成支援部門、介護支援部門と5部門ある中で、5部門全てを取得した3社目でした。認証を取るにあたり、多くの要件があります。

ワーク・ライフバランス推進企業認証の中には、働き方改革の考え方が入っておりまして、有休消化率や男性の育休取得など、細かい要件があり、それを満たさなければいけません。そういうのを利用して「この方法に、合わせていくしかないですよ。」と、僕がやっていきたかった方法を良い流れで伝わるようにしました。

すると、すごく良くなりました。認証取得に拘り、最初は「会社のルール」と言っていたのを、「高知県の資料によると、今までのやり方は認められていないようです。皆さんの意見も理解できますが、申し訳ないけど、それはできません。」と制度の内容に合わせ、説明をしました。とてもスムーズに進みました。


前川 
素晴らしいですね。


中平さん
 その時、リアルタイムで健康経営に取り組んでおりまして、ブライト500を、3年連続で取りました。これは高知県では、弊社だけです。要件には、とても細かい規定があります。

その時も、もちろん要件の内容に合わせて説明し、進めていく流れにしました。認証の取得に向けてやっていくと、認証の要件を切り口に、仕切り切り役の方も楽になります。認証を取得すると、採用力はもちろんのこと、職員に対する会社のブランドが上がります。

離職率もどんどん下がっていきます。ぜひ、このような認証や資格の取得をうまく活用されて、舵を切っていくと、すごく良いのではないかと思いました。


前川
 そうですよね。こういった認証を受けられていることも素晴らしい成果ですし、認証を受けること自体が、地域社会全体や日本全体に大きな貢献に繋がっていくのだと思います。いろんなところで取り入れて、さらに社内でも推進をしていくと、「ワーク・ライフバランスを取り入れた経営」的にも成果が出る企業が、どんどん増えていくことに繋がっていくと、本当に思いました。大変、素晴らしい取り組みだなと思います。


中平さん
 はい、ありがとうございます。


前川
 これは、試行錯誤された中の1つのポイントというか、皆さん、かなり心強いお話になるかなという風にちょっと感じましたので、ぜひ、取り入れていただきたいと思います。

高知県ワークライフバランス推進企業認証書(5部門)


日本一コストがかからないDX

──中平さん、来年2025年に働き方改革DXという書籍を、出版されると伺いましたが、ぜひお聞きしたいです。

中平さん はい、ありがとうございます。まだタイトルは仮の段階で、まだ決まっていないのですが、内容は決まっておりまして、働き方改革とDX(デジタルトランスフォーメーション) に焦点を当てたものになっております。いろいろな認証を取らせてもらいましたが、あさ出版の方から提案がありまして、出させていただくことになりました。

内容としては働き方改革の部分を、 ワーク・ライフバランスコンサルタントの視点からみた内容になっております。働き方改革というと、効率化などの冷たいイメージを持たれる方も多いと思いますが、書籍の中では、コミュニケーションやダブルキャスト、トリプルキャストの重要性を解いております。

あとは、効率化とか、時間当たり生産性とか、ワーク・ファミリーバランスではなく、職員全員を対象としたワーク・ライフバランスを実現していくというような内容になっております。DXについては、株式会社 幸の仕組みの紹介になる予定です。

例えば、有給休暇100%取得率を維持するため内容です。実は、最初は全ての職員さんの有給休暇を、毎月確認していたのですが、とても大変でした。社会保険労務士さんのソフトからCSVデーターというものを取り込んで、連携させ、誰がどれくらいのペースで有休を取らないといけないのかというのを自動化で見えるようにしました。

希望休を100%実現するための仕組みを、デジタルDXを 使って実現したことや、ダブルキャストを行なっていくには、どんな技術を使えばよいか、あとは必要な仕組みとして、テレワークのことなどです。 DXは、難しいイメージを持たれる方が多いのですが、DXの第一歩というのは、まずLINEとか身近なものからという感覚で、分かりやすい内容にさせてもらうつもりでいます。


前川
 なるほどですね。やっぱりDXと聞くと、すごく大きいことをしないといけないのではないかと思い、取り組めないと思い込んでしまうというところがあると思います。

🔽「働き方改革&DX入門(仮)」著者 中平 武志 2025年3月27日発売予定



──中平さんのところでは、業務効率化にあたってのツールで、スプレッドシートなどを使っていると伺いました。

中平さん 弊社のDXは、シンプルです。「簡単に行う」ということを徹底してやっております。基本的に使用しているのは、MicrosoftさんのExcelやGoogleスプレッドシートの2つです。他にも2つほど使用しておりますが、どれも無料やExcelを入れたら使えるもので、お金のかからないものを使用しております。

それが、シンプル化には、自社で改善、改良等が簡単にできる仕組みであることがとても重要なのです。例えば、介護保険の事業者なのですが、新しい仕組で記録を取るシステムを取り入れて、改善や改修が必要になった時、自分で変更できずに業者さんに依頼したら、かなり費用がかかってしまうとなると、なかなか進みません。

でも、自分たちで編集できるExcelやスプレッドシートで作ってしまえば、問題が起きても、すぐに作り直しができます。Excelをお使いの方は、既にご存知かもしれませんが、未入力のセルがあると、そこが黄色に光るようにするとか、よく漏れや間違いのある箇所があれば、漏れや間違いがあった時に色が付くようにするとかすると、職員の間での得意、不得意の差が、なくなっていきます。
DXでは、こういう部分が、特に重要だと思います。


前川
 素晴らしいですね。得意な方ではなくて、得意ではない方に合わせて、いかにシンプルで、分かりやすくするかというところを、特に肝にされている。 しかも「自社ですぐにできるDX」を、採用されているということですよね。どんな会社でも、それはすぐに取り入れていけるものとして、書籍に紹介されるということですよね。


中平さん
 はい。「日本一、コストがかからないDX」だと思っています。


前川
 「日本一コストがかからないDX」そのタイトル、すごく良いですね。


中平さん
 これ、書籍のタイトルとして出版社さんに提案してみます。


前川
 「そのタイトル、なんだろう。」と興味が湧きました。しかも、どんな企業でも使えるというところが、さらにいいですね。来年出版されるのを、本当に楽しみにお待ちしております。

では、最後に中平さんの「今日からできる!一つのアイデア」のメッセージをお願いします。

「今日からできる!一つのアイデア」

中平さん はい。僕が提案させていただくのは、「難しいことを簡単にして、 win-winの関係を作る」とさせていただきます。これを取り上げさせてもらった理由をお伝えします。

ある時、お聞きした話ですが、障がいのある方が、いろんな仕事を経験したそうです。飲食店だとメニューが覚えられなくて、他の会社に行っても、理解するということが難しいので、どの会社も無理ということで、働けるところがなかったそうです。当社は2019年頃に、パソコンが使えない方は、これからは採用しないという基準を設けましたが、その「パソコンが使えない方は採用しない」という基準は、障がいのある方を採用しなかった会社と同じだと思いました。

働き方改革を進め、生産性を上げるということにより、支援が必要な方のための財源を確保するという考え方も一部、正しいのかもしれません。計算ができなくても、身体を使うことならできるとか、記憶をすることは苦手だけど、誰にでも笑顔で対応できるとか、働き方改革を進める上で、障がいのある方たちも輝ける場所作りは、絶対に進めていかないといけません

例えば、飲食店でメニューが覚えられなくても、今だと注文をするためのタブレット端末を置いている店は増えています。それだと、メニューを覚えられなくても働ける可能性が高いですよね。僕が考えている日本の未来に、絶対必要だと思っている事は、障がいのある方などの底上げです。

日本には、賢い方がたくさんいらっしゃるので、その方達の頭脳を、そういうところで、使って欲しいです。障がいのある方も簡単に理解できるものを、定着させていくことが、絶対に重要だという思いがあります。そういう思いがあり、「難しいことを簡単にして、 win-winの関係を作る」ということをあげさせていただきました。


前川
 ありがとうございます。株式会社 幸の「ご利用者様の希望と職員の希望の両立」をコンセプトに掲げられていると思いますが、そこがwin-winの関係につながっているのだと感じました。

そこが根本的にあるので、取り組みを推進する中でも、皆さんがわかりやすく、シンプル化する、そういったお考えになっていっているのかなという風に思っておりました。軸が通っていて、その上で、自社だけでなく、それが社会にとってより良い取り組みになればいいなと思っていることを、中平さんが実現されていると感じ、とても感動しました。

職員、家族揃っての食事会の様子


違いを超えた、みんなの希望

──株式会社 幸という名前をつけられた想いを教えてください。

中平さん はい。僕は、高校を中退しております。決して、不良だったわけではなく、どちらかというと優等生でした。しかし、学校の勉強には、全然ついていけなくなっていました。そんな状況で、学校を辞めて、すごく落ち込んでいた時期がありました。

そんな時、ふと見たテレビで、障がいがあり歩けない方が出演されていました。24時間テレビだったと思います。その方が、「ヘルパーさんの付き添いで買い物ができるということが、本当に嬉しい」と、話しておりました。

僕は、普通に歩けて、普通に食べて、普通に買い物ができることに、当たり前ではないと気付き、そこに感謝できなくなっていたことに気がつきました。みんなそれぞれ、違いがあります。 利用者さんも職員も僕も含めて、弊社に関わっている方が、いろんな考え方で幸せになれる会社にしたいというのが、1番最初に感じた思いです。

高知県の介護福祉の平均月収は約24万円と言われておりますが、弊社の職員の給料は35万円を超えております。私がこの業界を目指した当初、思い描いていたワーク・ライフバランスとキャリアアップを両立する働き方を今、ほぼ実現できています。

次の展開として考えていることがあります。高知県2009年の最低賃金が600円ぐらいでした。当時600円で任せていた業務が、現時点の最低賃金952円まで上がると、それに見合ったことしか任せられないという状況が出てきています。

昔だったら600円の賃金に見合う業務しかできなかった方にも、 952円以上の内容の業務ができ、長く働き続けていける環境を作りたいというのが今の僕の夢です。障がいがある方も希望を持ち、もちろん周りで関わる僕たちにも、希望があるという会社を作っていく必要性をすごく感じております。

これは働き方改革そのものだと僕は思っています。僕の夢の1つであるワーク・ライフバランスを叶えた上で「職員の給料を上げる」という夢は既に叶えたので、次は発信していく番だなということで、本日のような機会をいただけたことに感謝しています。

前川  ありがとうございます。素晴らしいお話をたくさん聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。ぜひ皆さんに、このお話をお聞きいただけるよう、私たちも頑張っていきたいと思います。まだまだ、お伺いしたいことがたくさんあるのですが、エンディングのお時間となりました。

今後、高齢化が進み、多くの働く方が、介護と仕事を両立させる状況下で、
二つを両立させながら、充実した日々を送るために中平さんが行われている具体的な支援策などについても別の機会にぜひ伺いたいと思っています。
引き続きよろしくお願いいたします。


中平さん 
ぜひよろしくお願いします。


前川 
貴重なお時間いただきまして、ありがとうございました。


中平さん
 ありがとうございました。

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🔽似顔絵イラスト
大家 三佳
東京在住、京都造形芸術大学卒。子育てをしながら、水彩画、ドローイングを中心に人、食べ物、動物を描くイラストレーター。パッケージやポスター、グッズなど幅広い分野で活躍中。透明感のある優しいタッチで、日常の風景や人物を描く。ペーターズギャラリーコンペ2014 宮古美智代さん賞受賞など。


編集、プロデュース、インタビュー:前川美紀(ワーク・ライフチャレンジ プロジェクト代表/ブランディングディレクター)
note編集:松本美奈子(次世代こども教育コンサルタント/認定ワーク・ライフバランスコンサルタント)


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