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それでも、家族は続く

『それでも、家族は続く』信田 さよ子 著
読了。
カウンセラーというご立場から、家族のことを様々な切り口で考えている興味深い本だった。
教師としても使えそうなカウンセリングのスキルが書いてあったし、個人的にも考えるところが多かった。
学んだことをつらつら書いていく。

・カウンセラーは、クライエントが問題視していることの再定義を試み続ける。その問題をカウンセラーとクライエントが共有できる形にする。それまで問題視していたことが膠着し行き詰まっているから相談に来ているわけなので、解決するためには、新たな言葉と再定義が必要。ただし、クライエントの問題も可能性としては認めつつ、カウンセラーによる再定義もひとつの仮説として提示する。
「〜と言うこともできますね」

・カウンセリングには受容や共感より、積極的質問と意見表明と問題に対する咀嚼力、新たな言葉で問題を再定義化・文脈化し、現実に落とし込む力が必要。

・カウンセラーは、100%クライエントの立場に立つ。相手にも理由が…とか、中立の立場を取らない。目の前の困り感をいかに解決していくかに注力する。

・親は自らの権力性を自覚し、子どもとできるだけ対等で公正な関係を結ぶ。子どもから責められた時、まず謝る。でも謝罪は3度まで。そこからは、無制限に子どもの要求を飲むのではなく、親側の限界を設定したり、これは辞めて欲しいといった要求をしたりする。
できることはする、できないことは断る、限界を伝える、約束は守る、嘘はつかない、自らの意思を冷静に伝える、子どもに感謝する。

・子どもを完全に所有したいなどと思わない。何十年も家族を維持するために、スキルを用いて役割演技とともに他者性を意識して暮らす。配偶者も子どもも他者であり、思うがままにすることはできないと認知する。

・子どもが安心して楽しくいられる家族こそ望ましい家族。子ども中心の家族こそ親の権力性を極小化できているという証。

・父と母の安定した関係性を日常的に見ることが、子どもに何より安心感を与え、現実世界への信頼感をもたらす。この世は壊れることなどなく、生きるに足りる喜びに満ちているとら感じられる。そのために、父が母を尊重する態度を示すことが肝要。

・カウンセラーは、どのような事態が発生しようとも、まずクライエントの評価できる部分を探し、それを肯定的に言語化して認める。その後に、出来なかった理由を問う。

・クライエントの抱える自己否定をどのようにして視点を変え、被害者であることを認知させていくかが大切。(例)夫が叩くのは私が至らないから…→叩くと言う事実自体がDVであり、いかなる理由があっても貴女を叩いていいことにはならない。

・「アダルトチルドレン」=「現在の自分の生きづらさが親との関係に起因すると認めた人」
親には離婚するという選択肢があるが、子どもにとって親は選択不可能。配偶者との不和による自らの情緒的ケアを強制し、責任を負わせることによって、子どもたちはその不可解さを全て、「自分という存在がこの世に生まれてきたせいだ」と理解するようになる。

・自らの支配性を親が自覚するためには、支配された当事者である子どもからの抗議や告発が必須。

・心が「痛む」ことに自分の責任はない。痛みは呼んだわけではなく、訪れるものだから。他者の痛みは剥奪したり侵入したりしてはならない。それを痛みとしてただ承認しなければならない。

・多くの依存患者は当事者意識を持たない。周りの家族が心配して相談に来るケースがしばしば。本人に当事者意識を持たせるためには「もう駄目かもしれない」と思う「底つき」という地点まで行かせなければならない。底につく前に、本人に代わって周りが何かしてあげたり先回りしてきめ細やかなケアをしたりしても、依存を助長するだけ。突き放すことも大切。

・母は自分と娘を一体化して考えがち。自分ができなかったことをさせてあげたい、のように。娘に、社会的な成功も女性的な成功も求める。娘は、母親の期待を必死になって叶えようとする。しかし、母親にしてみれば娘が成功しても失敗してもどちらでもいい。失敗しても自分の手元で支配し続けることができるから。
息子に対してはある程度、他者性を持っているので、その関係性が脆弱であることを知っていて必死に守ろうとする。だから息子の失敗に関してはかなり動揺する。



「母がいつも機嫌が悪いのは自分たちのせいだ」
「母の機嫌をとってあげないと」
「母の期待するような自分にならないと」
そんな思いが私にもある。

でも、この本を読んで、家族の問題というのは配偶者同士のディスコミュニケーションから発生するものであって、決して子どものせいではないと思えた。
親は、自らの権力性や子どもに与える影響に十分に留意しなければならない。
だいたい、子どもが親に気を遣っている状態がおかしい。
子どもには子どもの人生、配偶者には配偶者の人生がある。
家族だからって相手を所有できる訳では無い。機嫌でコントロールするのは、世間ではパワハラともいう。
親は、子どもであっても、そんなことをやってはいけない。
子どもの健やかな成長のために粉骨砕身し、配偶者を尊重しながら、協力して家族を維持することが親の役目。

責任を背負い込み、父への愚痴を子どもに言い続け、子どもの成功を自分の手柄としてプライドを保っている母。
対話もせずに上部だけのご機嫌取りをして、母や子どもからの責任逃れをした父。

そんな父と母の姿を見て、
『何か嫌なことをしたら、無視されたり拒絶されたりするんだ』
『子育ては母親が全て責任を負うもので、父には頼ったらいけないんだ』
『機嫌の悪さで相手をコントロールするものなんだ』
『親の望むような自分になることが自分の生きる価値だ』
と誤学習する子ども。

その結果、家族は機能しなくなった。



今お付き合いをしている彼と、家族になっていく上で心掛けたいことがある。
それは、彼を「頼る」「尊重する」ということ。

何でも、彼に一番に相談する。
そこで上手く彼が対応できなくても頼る。
もし、子どもができたら"父親"という役割を彼に求め続ける。
求められることで"夫"、"父"という自覚は芽生えるものだと思うから。

また、私は家事に関しては彼よりも上手くできる自負があるが、感情コントロールや物事の決定ができない。
家仕事に関しては、私が主軸となれる。
でも、家族の精神的支柱にはなれない。情緒的な面では彼のフォローが必要。
感情的になった私に対してご機嫌取りをしてほしいのではない。
冷静に私の話を聞き、課題を見つけ、道筋を示して欲しい。
私も、彼のフォローが無ければ生きていけないのだから、彼を最大限に尊重する。
傷つけたら謝るし、彼に対して感謝の気持ちを持ち続ける。
彼と他者性を保ち、子どもを育てるための最大の協力者として、手を取り合って生きていきたい。

どんな問題が起きたって、それでも、家族でいたい、という選択を取り続ける。
そんな覚悟を持って。











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