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星野源「喜劇」と家族とは

TV放送中のアニメーション、スパイファミリーのエンディング曲「喜劇」

今度、ボイトレで歌ってみることになり練習も兼ねて聴いてみた。
スパイがある仕事を実行するために、家族が必要ということで、孤児院から女の子を引き取り、殺し屋を生業とする女性を妻にして、三人の偽家族がともに生活をしながら、さまざまな体験をしていくというアニメーション。
漫画ですでに読まれていたそうで、私の知り合いも好きな作品と話していた。

星野源さんが、タイアップで楽曲を書くとき、いつも心掛けているのは作品に沿った内容の詞ではあっても、彼個人が考えたり、思い描くイメージ、世界観を大切にすると話していて、今回も確かにスパイを生業にしていることが伺われるフレーズがあるが、テーマの中心になっているのは、血の繋がらない者同志ではありながら、家族となって体験する生活や、過去の自分が家族によって経験させられた傷のようなものが描かれている。そして血の繋がらない者同士が家族となって初めて味わう安らぎや幸福感といったものも描かれている。

改めて聴いてみて、二番の歌詞が胸に刺さった。
私の淡い呪いが解けたのは40代だった。
心理の勉強を始めて、教育分析を受けながら、心に傷として残っているものを、ひとつずつ解いていく作業を続けていくなかで、浮上した中に、父や母が不用意に発した言葉もいくつかあった。
言われた当時は、実際にそうなんだろうという思い込みから、受け入れてはいたが、心の深いところでは傷ついていたのだ。

特に日本人は、血の繋がりや、同じ民族であるかどうかを重要視する傾向にある。例えば、今でも日本は、単一民族だと思っているひとがいる。実際は古くからアイヌ民族や琉球民族などが存在していたし、渡来人によって日本の文化、教養が育まれたことは自明であり、近代日本になって外国から移り住んで在日3世、4世となっている人がいる。

それが今でも結婚したら子供が産まれるのが当たり前、何年も夫婦二人の生活をしていると、子供はまだかなどと周囲から、心ない言葉を投げかけられる。
初めから子供を望まない、子供のいない生活をよしとする家庭であればいいけれど、子供が欲しいと思いながら恵まれない家庭には、突き刺さる言葉であることは、想像に難くない。

源さんの喜劇の詞から伝わってくるのは、血が繋がっていることや、性別とかが問題ではなくて、綺麗なものを綺麗と、美味しいものを美味しいと言い合える、共感できるそんな関係性だ。
そうした見落とされがちな、当たり前の生活、毎日のふれあい、交流こそが必要であり、とても大事なんだことだと痛感する。
深く心が通じ合うそんな関係。

私は、小さい時からよく泣く子どもだった。 理由があって泣く時もあればわけもなく泣きたくなって泣いた。
母はそんな私に泣けばいいかと思ってと言った。
別に泣けばいいと思っているだけではない。泣けば許してもらえるとか、優しくしてもらえるとか思っているだけではない。かえって泣くことで、より厳しくされることがわかっていて、涙が勝手に溢れ出るのだからしようがない。そんな時は、ただただ耐えるしかなかった。

ある時、30代の頃同じ疾患の子がTVに出てやはりよく泣く話をしてた。それを観た母が私が泣く理由がわかったと言った時、やっとわかったんだなと…

若いときはわからなかったが、今にして思うと、身体が不自由なことで、あらゆるものを我慢しなければいけない生活を強いられて、それを当たり前のように父や母から言われ、行動を制限されて、自分でもそういうものだと受け入れていたつもりだったけれど、心の中ではとてもつらく、苦しく、悲しかったのだろう。それを言葉にすることは許されない。父や母を困らせるとわかっていたから黙って耐えたのだが、やはり耐え切れず涙にすることで、発散、解消していたのかもしれない。

血が繋がっていることが家族の条件ではない。性別もそう。
血が繋がっていても、諍いの絶えない家族はいる、異性間だけが愛を育むことを許されているわけはない。
すべては個人と個人の問題であり、大切なのは、互いに愛情を掛け合い、交わし合えること、思いやりを持って生活できることなのではないだろうか。
美味しいものを美味しいねと言い合い、綺麗なものをみて綺麗だねと共感できる。そんなささやかな幸せを共有できる家庭、家族のかたちを、源さんの「喜劇」は描いているように感じた。

最後に、タイの放送局のアイコンがレインボーカラーになってたり、バンコクの知事がパレードに参加したり世界中で「プライド月間」といってLGBTQ(と他にも色々)の権利を考える月間 なのだそう。
紅白でMISIAさんがレンボーカラーの衣装を着たり、源さんが紅白でピンクの衣装を着てから、LGBTQに関心を持つようになった。

すべての人が、生きる権利を守られ、自由に生きられる社会の実現を心から願っています。


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