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僕の天職は、声優・ナレーターなんだ!

 僕はこの“喋りのお仕事”が大好きですし、凄く楽しいです。でも、最初から楽しかったわけではありません。それは“自分の声に関してこんな事を言われ続けていたから”で‥。

【オーディションで言われた衝撃の言葉】

 演劇専門学生時代、いい声だねなんて言われたり、同級生から相談されたり、講師から生徒のお手本にされたりといい気持ちになっており、今思えば少し鼻を高くしていました。

 浮かれた気持ちのまま、とあるオーディションを受けた時のこと

 「こんなお仕事ができたら嬉しいな」

 「いい声だねなんて言われるかな」

 「売れちゃったらどうしよう」

 取らぬ狸の皮算用的な気持ちでワクワクしていました。でも、そんな夢は顔も思い出せないような男性の面接官によって打ち砕かれました。オーディションは基本的に自己紹介と、与えられた課題セリフを読みます。

 どちらも終え評価や質疑応答の時間に。さぁ、今日はどんな事を言ってもらえるのかな?なんて思っていました。しかし、言われたのは

 『んー、ありがちな声だね』

 と、いう言葉。僕の耳は良い言葉を受ける準備でいましたから、一瞬‥言葉の理解が追いつきませんでした。

 オーディションが終わり、今の自分の何を改善したらいいのか?どんな練習をしたらいいのか?もわからずどんどん時間だけが過ぎていきました。

 思い返してみると、授業で褒められる事はあってもお仕事が決まることはなく、同級生は所属事務所やお仕事が決まっていきました。お仕事に行くのに授業を休んだり、ギャランティーを貰ってどうのこうのと話をしていました。

 あれ、僕は褒められる為にこの学校に通っているんだっけ?学校を卒業したらどうするつもり?

『ありがちな声だね』

 これを言われてからだと思います。この学生気分をさっさととっぱらって本気で“仕事として”考えなくちゃいけないんだと思ったのは。でも、気づくのが遅すぎました。

 一応、オーディションで声優事務所に所属することが決まりましたが、僕の認識不足もあってか一年も経たず辞めてしまいフリーランスに。ここからです。しんどくて辞めたくてなんでこんな目にあわないといけないんだと思った日々が続いたのは。

【仕事がない、散々なフリーランス時代】

 一般公募のオーディションを受けまくりました。結果からいうと、ほとんどがお金を請求されるものばかりでした。普通演者は出演することで報酬(ギャランティー)を頂きます。しかし

 『このドラマCDに出演させてあげる代わりに、このドラマCDを〇枚を〇円で買い取れますか?もし無理なら出演は厳しいかと〜』というものばかり。

 学校と養成所に入ってなんでこんなオーディションしか受けられないんだ。一般公募のものなら誰でも受けられるじゃないか‥なんでこんな‥。

 その間にも同級生の活躍はどんどんと耳に入ってきます。どうしたらいいのかわからず、途方に暮れていました。

【仕事のチャンスになった出来事】

 お仕事はなく、オーディションではお金を請求され、誰も頼る人がいない。でも、今思うと周りのせいにしているだけで“自分自身の能力の低さ”を棚に上げていたんだと思います。

 誰よりも自分がわかっていたからこそ認めたくなかった。だから、腕を磨き始めるまで時間がかかってしまったんです。そこで、Twitterを通して、ナレーションを教えていただいていた先生に連絡をしてみました。

 こんな突然連絡されても‥と、思いましたが、お会いさせていただけることに。そこで“営業”という方法を教えて頂きました。これが僕の転機です。


 『芸能事務所に連絡をするんじゃなく、制作会社様にしないと。』

 「えっ!!」

 『芸能事務所は、所属のタレントさんにオーディションを振るし、いきなりフリーの人には相談できないよ』

 「た、たしかに‥」

 『最初のうちはほとんど相手にされないと思うけど、折れないで頑張ってみて。ちゃんとみてくれる人がいるから』

 そこからは毎日ように営業、営業、とにかく営業連絡を繰り返しました。これは2019年10月頃のお話です。

【転機後、最初のお仕事】

 2020年1月頃にとある制作会社様からご連絡をいただきました。19年10月頃に営業連絡をして以来連絡をとっていなかった会社様でした。

 内容は、YouTubeのとある音声をやってみませんか?というもの。自宅収録で6秒ほどの音声。ギャランティーは5000円でした。営業をして始めてお仕事に繋がりました。請求書の書き方もわからなかったので調べながらやり、一枚書くのに45分くらいかかったのを覚えています。

 自分の営業連絡だけでお仕事という結果が出たという喜び。ほんとうに凄く嬉しかったです。


【お仕事で、何を心がけているか?】

 先程お話をしたYouTubeの音声のお仕事。これをきっかけにポツポツとお仕事のご依頼が3か月にいっぺん、2か月にいっぺん‥とだんだん増えていきました。

 と、いっても正直今もポツポツです。定期的にお仕事があるわけではありません。でも今、今が頑張りどきだと思っています。拗ねないで与えて頂いた事を精一杯にやる。これが今の自分にできることだと思っていますし、ようやく増え始めたお仕事なんです。

 何年も前に始めたタネが今ようやく芽吹き始めた。でも、油断するとすぐに枯れてしまう弱々しい苗木。


 ナレーションのお仕事をメインにやっていきたいと考えて行動し、多くのナレーションを担当させていただけるようになりました。

 これも思い切って先生に相談できたからだと思います。そっと背中を押してくださった先生のお言葉には本当に救われました。

 お芝居、ナレーション、フリートーク、教えさせていただくお仕事。喋りのお仕事でも色々あります。僕が全てに共通して意識している事は

 『明日、自分が死ぬとしたら誰に何を言いたいか?』

 です。生活していれば文句の一つでも言いたくなる時はあるでしょう。でも、自分が死にそうな時、吸った酸素をどんな言葉に変えたいか?と考えた時、お世話になっている人に“ありがとう”と言ったり、それ素敵ですねってことを言いたいなぁと思っています。

 何もストレスや理不尽を全て我慢しろということではありません。自分なりのストレス解消方法をもって、誰かに文句を言ったり当てつけないようにしていこうってことです。



聲優・ナレーター
有野優樹(ありのひろき)

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