【声優を目指した高校生の頃のお話】

声優・ナレーター有野優樹(ありのひろき)です!

今回は、僕が声優、演劇の勉強をしてきたことを体験と共ににお話ししたいと思います。


ボクは小学生の頃アニメに興味を持ち、オタクだのなんだのと言われてきました。最初は嫌でしたが、オタク仲間もいて一緒に秋葉原に行ったり、休み時間にワイワイ話すのがすごく楽しく、だんだん(慣れもあったかとしれませんが)嫌じゃなくなってきました。

中学生で初めて「進路」「仕事」を意識した時、『会社員にはなりたくなぁ』と漠然と思い、自分のやりたいことってなんだろう?考え、好きなことがやりたい!好きな事、好きな事‥アニメ。‥そうだ!アニメ!!

絵は絶望的に下手だったので書くほうではなく、喋ることを目指し最初はニコニコ動画生配信、こえ部に投稿をして声優の真似事をしてみたり、親に頭を下げ養成所に通わせてもらったりしました。


 喋りならできるだろうと思ったわけではなく、目立ちたいけど表に出るのは恥ずかしいといったジキルとハイドみたいなことを思っていたのもあり、表に顔を出さないが自分を残せる‘声優’に惹かれたのかもしれません。

イベントやラジオ、テレビに声優さんが出演しされてお話ししているのをみてみると、キラキラしていて楽しそうで、憧れのあの声優さんと早く一緒の現場を経験したいと、憧れ、期待がどんどん膨らんでいきました。
経験のない事で、中身が見えない、わからない事は美しく、未知な領域で遠足の前日のようなワクワクがいつもいつもありました。


【養成所に入り現実を】


高校生の頃、声優養成所に通い始めました。お芝居なんてやったこともなく、自分として人前に出ることですら恥ずかしいのに、何者かになって(演じて)人前に出て、セリフを言うなんてもうそれはそれは緊張という言葉では片付かないほど汗をかきました。今までの人生にはない、経験したことがないことをやらせてもらえる、できるのは楽しかったんですが、なんでしょう。期待していたものとは大きく違いました。

一言で言うと「地味」だったんです。養成所のレッスンはまず腹式呼吸(発声)練習から始まり、滑舌の訓練、体操や筋トレ、台本を一枚も使うことなく、地味でつまらない淡々とした時間が過ぎていきました。

「なんだこれ?」

これが通っていた時の素直な感想です。でも今となっては本当にやっておいてよかったと思っていますが、当時は台本を覚えて台詞の掛け合いをやったり、映像に合わせてアフレコの練習をしたりを想像していたので、なんでこんなことしなくちゃいけないんだと。

腹式呼吸もできない(声が出ない)、滑舌も悪いのにいきなり台本からやったってそりゃ練習にも何にもならない。今売れているあの人もこの人も最初はこんなことやってたのかな?そんなことを言い聞かせ週1のレッスンに励んでいました。

進路は演劇専門学校に決まっていたので、高校卒業を目処に養成所を辞めて本格的に演技を学んでいくことになりました。

声優を目指すと決めた時、最初の頃は周り(友達、家族など)の反応は冷ややかといいますか「何言ってんの?」感がありました。友達からは「今のうちサインもらっておこうかなぁ〜?(笑)」と言われたり、父親は「ちゃんと考えろよ」と一言。

就職がちゃんとした真面目な進路なのかはわかりませんが、これを「ちゃんとした」と言うのであればボクの考えはちゃんとしてなかったのかもしれません。

高校の先生からも「あーいるいる、声優やりたいとか言う子」とあしらわれるような感じで「歴史ある大学に行ったほうがいいよ」と話を聞いてもらえなかったので、専門学校のオープンキャンパスに通い詰め、口だけではなく行動で示し先生も父親も納得しました。

専門学校卒業後の現場経験は、自分の憧れのものとは全く違い、良い意味で厳しい現場もあれば、あの声優さんてこんな人だったんだ。という絶望?失望?夢を壊されたといいますか、いや気持ちになった場に遭遇してしまったこともあります。

この部分に関しては有料記事としてこの後お話ししますが、専門学生時代のレッスンとお仕事経験、卒業後声優事務所に入っていた時のお話、現場経験、事務所を辞めてフリーとしての壮絶な活動について(ここは無料)お話ししていきたいと思います。


【専門学生時代】

オープンキャンパスに通い詰めていたので、入学したときにはすでに何名かの先生、生徒とは顔見知りでした。養成所とオープンキャンパスの体験レッスンのおかげで基礎(腹式呼吸、滑舌、人前で演技をするなど)は初心者という肩書きから外れていました。

なので発声の授業では先生に「有野は腹式できてるから、わからない人は有野のお腹を触って膨らんでいる感じを見るといいよ」と言っていただけるくらいに。
半年くらい経ってある程度生徒と話すようになったとき聞きましたが、僕の評判は悪かったみたいです(笑)

できてるからって調子乗ってるとか、先生に好かれてるからなんだのと。それはオープンキャンパスに通っていたおかげで自己紹介とか相手がどんな人かの探りが必要なく、僕自身いじられキャラというのもあり、先生にいじってもらえたりしていたので、知り合いがいない状態(入学当時)の生徒からすればなんだこいつ?という感じだったみたいです。しょうがないじゃない、基礎もできてたし先生と仲良かったんだもの(笑)(嫌味ですね)


専門学生時代に経験させていただいたお仕事、最初はエキストラでした。
ドラマ、映画のエキストラから始まり初めてアルバイト以外でお金をいただきました。荷物を運んだり接客したりではなく、あそこからここまで歩いてください、カップルという設定で会話をしててくださいなど、歩いたり話をするだけでお金をいただけるという感覚はなんとも不思議なものでした。

だんだんと欲が出てきて声のお仕事がしたい、ラジオをやりたいと思うようになりエキストラの募集があってもだんだんとやらなくなってしまいました。
最初にいただいた声のお仕事はゲームアプリのキャラクターボイス。今はもう配信されていませんが、妖怪や怪物など数キャラ担当させていただきました。

収録時の事は今でも覚えています。渋谷にある見た目は普通のマンションで家に入るように一室の扉を開けると、小さなスタジオになっており1人入ったらきついくらいの小さなブースで収録しました。海外からの輸入ゲームだったので、本国の方がいらっしゃり、通訳の方から「もっとこんな感じで、あんな感じで」とディレクションを受けながら淡々とこなしていきました。

次に頂いたのは役名のないドラマCDのガヤ(その他大勢の役)。後から音声を聞いてもよく聞いたら聞こえるというくらいでほとんど誰の声なのかわからないくらい。でもとても嬉しかったです。

同期や後輩は役付きで名前のある役だし、台詞数も多い。授業では褒められていましたが、全然お仕事が決まらない。この頃は少し廃れていましたかね、気持ちが。こいつらよりもうまいのになんで決まらないんだ!!!‥と、正直思ってました(笑)できない人のよくあるパターンですね。変にお仕事を経験してしまいそこからはモンモンとする日々。みんなは続々とお仕事が決まるなか、授業でしか褒められない。授業で褒められたって仕事につながらなきゃ意味ないんだよ!そんな思いから時たま授業をサボってしまうこともありました。もうここからはどん底。

仕事が決まらないながらも授業では褒めてもらえていましたが、サボっていたせいなのか授業でも褒めて貰えることが少なくなり、ダメ出ししかされない日も。ますます廃れていきやってもやってもうまくいかない。


とあるナレーションの授業の日。この日から大きく変わりました。


いつも通り廃れた「どーせ先生も誰も自分のことなんてろくに見ちゃいない。一生懸命やったって意味ないんだ」という気持ちのまま授業を受けていました。
舞台、アフレコ、映像演技と色々やっていくうちにナレーションの面白さに惹かれ、ナレーターを中心にやっていきたいと考えていたので、ナレーションのレッスンだけは廃れることなく励んでいました。

ナレーションをやりたいという生徒も少なく、周りと差別化をはかるには周りがやっていないことをやろうと考えており、ナレーションをやりたいという気持ちからというよりも、周りが力を入れていないこと(ナレーション)だから、僕はナレーションをやるんだと決めていました。

ナレーションの授業が終わり次の授業の準備をしていたら、講師の方に
「有野くん、ちょっといい?」
と呼ばれ、先生からの呼び出し=説教、注意。として考えていた僕は
「はぁ、とうとう好きな授業、やりたいと思っていたジャンルの先生からも叱られるのか」
と思いました。

先生のところへ行くと授業では扱わなかったナレーション原稿を渡され

「これ読んでみてもらってもいい?」
『?あ、はぁ。わかりました』
読んでみる。初見ということもあり、つっかえたりなんだりしてしまい
「もう一回やってみて」
『わかりました』
読む。すると講師の方からこんなことを。


「ひじょうに惜しいと思うんですよね。声質的にはナレーションにも向いているし、僕(講師の方は男性)がやるようなナレーションもできると思うんだけど、なんの原稿でも読み方が一緒なんですよ。盛り上がるようなのと淡々としたものとが。どんな人を理想とされていますか?」

〇〇さんや、〇〇さんと答える。

「うん、読み方を聞いていると憧れているんだろうなーというのはわかる。厳しいことを言うようだけどその人たちに頼むようなナレーションは君に頼まないよ。でもそのかわり若さや勢いがあるナレーションを頼むと思うから、勢いやフレッシュさができるように研究してみて」
と。


‥あぁ。僕の声を聞いてくれている人がいたんだ。
この講師の方には学校を卒業後も相談をさせていただいたり、回数はそんな頻繁じゃないですけどお世話になっています。

そこからは人が変わったかのように「下手だから仕事がこないんだよ、だから拗ねてないでうまくなれるように頑張ろう」と気持ちを切り替え頑張りました。

その後、東京FMラジオさんでとある番組のアシスタントMCをやらせていただいたとき、CMナレーションを担当させていただいたりと(これ以降ナレーションのお仕事が決まることはありませんでしたが)少しづつ変化してきました。読みが上手くなったと言うよりも恐らく『気持ちの変化』でしょうね。
この時「読みは、その時の精神状態が出るんだ」と感じました。



【専門学校卒業、声優事務所へ】

学内で声優事務所所属をかけた大きいオーディションが年一度ありました。大体の人が養成所に行くことが決まっており、進路が決まっていなかった僕は焦っていました。
基本的にはお声がかからないと事務所へ行けない。お金がなかった僕は養成所に通う事は考えられなく、どうにか所属をと思っていましたが、所属はよっぽどうまくないも所属としてとってもらえない。
声がかかったとしても養成所ばかりでうーん‥と思っていた時、預り所属(所属までいきませんが、所属(仮)のような状態)でとっていただけるという事務所さんがあり、入所を決めました。

学校を3月に卒業し、事務所には5月から入ることに。
2か月間があり、最初の数週間は遊んでばかりいましたが、遊び尽くしてしまった夏休みの最初の頃のような「この後なにしたらいいんだろう」という虚しい気持ちになり、焦りが出てきました。

卒業したタイミングは同じなのにすでにお仕事を始めている同期。

あれ?同期は仕事をしているのに僕は‥?

事務所が決まったからと言って浮かれている場合じゃない。舞台の授業でお世話になっていた演出家の方にTwitterで連絡をして、その演出家さんが関わっている現場見学に行かせていただけることになりました。何か勉強をしていないと取り残されてしまうという焦り。

最初は見学だけでしたが(もちろん見学でも十分勉強になりました)、そこの劇団さんのご好意で、次の公演の演出助手を担当させて頂けることになりました。出演ではないにしても学校卒業後の初めてのお仕事。ご連絡をいただきた時家にいたんですが、ガッツポーズをしたのを覚えています。勢いよくガッツポーズをしすぎて筋を痛めたのを覚えていますから。

声優事務所でレッスンがあったんですが演出助手として現場に行っていた為、ちょこちょこ欠席をしていました。
僕にとってはレッスンよりも現場のほうが勉強になることが多く、なにせお仕事なので絶対に行きたかった。
でもやはり事務所側からするとレッスンに来ていないのにオーディションやお仕事を紹介するのはちょっと‥と。
レッスンの先生と合わなかったということもあり1年で退所することに。(実際は半年で退所しましたが1年契約だったので1年間とりあえず籍だけある状態)

演出助手ではかなり勉強させていただきました。授業では見なかった厳しい先生。これは僕の連絡の仕方や現場での立ち居振る舞いが悪く、報告連絡相談が全くできていなかったこともありお芝居やお仕事もそうですが、それ以外、人間性についてかなり学ばせて頂きました。社会人としてというんでしょうか。

無事舞台も終わり演出助手としての役目も終わり一息‥。いや、長すぎる一息でした。事務所を辞めレッスンやワークショップにも通っておらずお仕事(演出助手)も終わり、やることがなくなってしまった。また「なにをしたらいいんだろう」という時間。
とりあえずネットで「声優 オーデション」「声優事務所 オーデション」などと検索をする毎日。ネットで検索した声優オーディションを受ける日々でしたが、これがまた散々たるものでした。



【お金を請求されるオーディションばかり】

ドラマCD、ラジオ番組のオーディションは検索するとたくさん出てきます。
なにがよくて悪いかわからなかった僕はとりあえず片っ端から受けていきました。
でも大体怪しいものばかり。この作品に出演させてあげる代わりにワークショップを〇万円で受けて欲しいと言われたり、過去に作った作品を勉強のために買いなさいと言われたり、特に怖かったのはその場で契約書のサインを求められること。
怖くて断ると「君の後ろに君の師匠という人がやめろ、やめろーと引き止めているのが見えるよ。騙されているんだ。何かあったら相談に乗るから。即決で決められるようにならないとダメだよ、チャンス逃すよ?」と言われたこと。


たまたまでしょうけどそれからはもう何のオーディションを受けても

・出演までには至りませんでしたがワークショップを〇〇万円払い受けていただければ、次回作出演の可能性も〜

・合格後に出演する作品を何枚買い取ってください。それら全て売れれば元を取れますし、何枚以上売ると一枚につきプラスで何円お支払いしますので〜

・ラジオに出演できますが〇〇円お支払いください、公開収録にしますのでチケット1枚につき〇円で〇枚売れば元が取れますから〜などなど。

もう嫌になっちゃいました。嫌な思い出しかないのでネット検索のオーディションはあまりオススメできません。
全部が全部こういうわけじゃないでしょうけど、なにがよくて悪い、怪しいと判断することができないので。だから受ける前にはこれでもかというくらい調べあげる。特に情報が出ない場合はやめる。

やっぱり事務所に‥そう思い声優事務所オーディションを受けるべく連絡するも、あまり前ですがどこの馬の骨かわからない若手‥とも呼べない人が受けさせてもらえることもなく。
お金がないので養成所も入れない。精神的に疲弊し切っており、どうして良いのかわからなくなり、専門学生時代にお世話になっていたナレーションを教えてくださっていた先生に連絡。ここでまた転機が起こりました。


長くなってしまったので、この記事を前編としていったん区切りたいと思います。お読みいただきありがとうございました!


【後編】



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