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豪快な食べっぷりに惚れてしまった

ねこまんまが好きだ。
あまり褒められたことではないのだろうけど。

ねこまんまとは、味噌汁をかけたごはんのこと。
しかし東では、鰹節と醤油をかけたごはんを指すことが多いらしい。
人それぞれ別のものを思い浮かべてしまっては話しづらいので、この記事だけ「味噌汁をかけたごはん」のことを「NMM」と名づけよう。

僕は、元来が雑炊好きだ。
ねこまんまを好きにならないはずがない。
あ、違う、NMMを好きにならないはずがない。

といって、いただきますの瞬間からNMMするわけではない。
ふつうに食べ進め、ごはんが残りおよそ1/3に差しかかったあたりで、おもむろにNMMする。

***

僕のNMMは、味噌汁にごはんをドボンと入れる。

しかし、逆にごはんに味噌汁をかけるのが一般的なようだ。
父もそうしていたし、ネットにもあたりまえのようにそう書いてある。
お茶漬けと同じと考えれば、たしかに味噌汁をかけるほうが自然だ。
僕もお茶漬けではお茶にごはんを入れたりはしない。

では、なぜ僕のNMMは味噌汁にごはんを入れる?

…恥ずかしいから小声で言うが、中世の下級武士にあこがれているから。
ひゃあ…言ってもた。

大河ドラマなどで、藤吉郎と名のっていた足軽時代の秀吉は、冷たそうな板の間にあぐらをかいて、椀の雑炊をサラサラズルズルとかきこむ。
上級武士は米に汁、漬物などもあったらしいが、下級武士は雑炊の椀ひとつ、以上。

その豪快な食べっぷりに惚れてしまった。
雑炊を毎日作るのは大変だけど、NMMならすぐできる。
それがいい! 毎日下級武士だ!

しかし、一般的なNMMだと、できあがりは茶碗のほうになる。
いやいや、藤吉郎は陶器の碗など贅沢品は使っていなかった。
彼らが豪快にかきこむのは木椀だ。
木椀からかきこむから下級武士なのだ。
かくて僕のNMMは、味噌汁にごはんを入れることになった。

***

コメはいつもスーパーで適当なものを5kg単位で買う。
だから、産地も銘柄もめまぐるしく変わる。

最近食べているのは、少しグレードの高い新米。
このコメ、おかずなどなくても十分においしく、ばくばく食べてしまう。
残り1/3でNMM、のはずが、ごはんがおいしすぎて止まらない。
あかん、下級武士ができへん…
いや、グレードの高い新米を食べてる時点で下級武士ちゃう…

最近は、安いコメでもおいしく炊けると謳う炊飯器も出回っている。
令和の下級武士は、肩身を狭くする一方だ。

(2022/10/22記)

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