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消費者はせめて有機や無農薬に対する正しい理解を持ちたい

昨日の記事で「完全無農薬有機栽培のお茶」を飲んだと書いた。

有機と書くならわざわざ無農薬と書かなくていいのでは? と思った人もいるかもしれない。
何を隠そう、20年前の僕がそうだった。
有機栽培というのは有機肥料だけで育てる農法だから、農薬も当然使っていないに決まっている、と。

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植物が根から吸収できるのはチッ素・リン酸・カリなどの無機物だけだ。
畜糞や米ぬかなどの有機物は、微生物が分解してはじめて有用な無機物となり、これを使う農業を有機農業という。
一方で化学肥料はチッ素やリン酸などを化学的に合成して作ったもので、植物が直接吸収できるから効率がよい。

植物から見れば、有機肥料であれ化学肥料であれ、養分が摂れれば同じ。
であればと即効性のある化学肥料が多用されるようになった。
日本の農業の化学肥料使用量は世界でトップクラスだ。

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1haあたり化学肥料使用量(「Hello School 社会科」より転載)

しかし土壌から見れば、化学肥料は分解の必要がない(=微生物のエサになるものがない)から土壌中の微生物は死滅してしまう。
そんな土壌は隙間がなくなって固くなり、根が伸ばしづらい。
そこで作物を育てようとすると過剰に化学肥料を投与するしかない。

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いったん化学に頼ると化学を補い続けなければ作物を育てられなくなるのはそうした理由からだ。
つまり有機農業は、持続可能な「よい土を作る農業」と言い換えられる。

有機は何も新しい農業ではない。
30年、40年前までは畑に肥だめがあるのはふつうだった。
環境負荷を考え、そんな昔の農業に戻していく取り組みだと理解している。

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日本は農薬の使用量も世界トップクラス。
フランス、ドイツ、イギリスなどと比べると約4倍も使用している。
国産信奉の人には信じられないかもしれないが、残留農薬の基準を超えて中国に輸出できない日本の野菜もあるくらいだ。

子供たちの未来を考えれば、安心・安全な野菜を摂りたい――
このマークを目印に野菜を選んでいる人も多いはずだ。

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国の厳格な基準で認証を受けた作物にのみ表示が許される有機JASだ。
よい土を作る、使える肥料は有機肥料だけといったキーワードから、冒頭に書いたように農薬も当然使っていないと連想する人は多い。
しかしその基準によれば、農薬も化学合成でなければ使ってよい。
有機=無農薬、ではないのだ。

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肥料は環境を考えて有機に限定するのだ、農薬も天然由来に限定すればそれでいいという考え方もあるだろう。
しかし農薬は、いくらそう限定したところで、病害虫や雑草の忌避が目的である以上、環境や人体への影響は避けられない。

安心・安全な野菜が食べたければ何を選べばいいのか。
狭い国土で効率よく野菜の生産を行うためにクスリに頼るリスクはまだまだ必然ともいえる。
消費者はせめて有機や無農薬に対する正しい理解を持ちたいものである。

(2022/5/24記)

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