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これさえあれば、WBC優勝は間違いない

空前の盛り上がりを見せるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。

過去大会は本家アメリカがメジャー主力選手の参加を認めなかったため、そんなWBCで優勝したとて…という空気があった。
ところが今大会、アメリカは方針を転換して主力選手の参加を認めた。
2大スポーツ、アメフト・バスケに大きく水をあけられたメジャーリーグが危機感を募らせたためらしい。

加えて大谷選手などメジャーで堂々と渡り合える日本人選手の合流。
本気のアメリカを倒すことが積年の夢だった日本にとって、ついに役者が揃い舞台が整ったのだ。
僕も1次リーグの4試合、TVの前に釘づけだった。

手にはビールを握りしめて?
いや、神戸の人ならもちろん、野球カステラだろう。

え? 何? もう一度言って?
はい、何度でも言うたるで、野球カステラや!

神戸・長田の小さな手焼きの煎餅店〈八木新月堂〉。
(神戸で煎餅といえば小麦粉や卵でできた洋風煎餅を指す)
「今朝焼いたヤツやで」
「ほなこれちょうだい」

飾り気ない袋に詰められた、いろんな形のブツ。
これでは何かよく分からない。
袋から出してみよう。

おぉ! バットにボール、グラブにキャップなどなど…
たしかに野球のグッズが揃っている!
これが野球カステラだ。

神戸人にとって野球カステラはあたりまえの存在すぎて、神戸の外にどれだけ広まっているかは判断つきかねる。
というか、日本中のちびっこがこれで育ったと信じて疑わなかったが、どうもそうではないらしい。
かろうじて大阪や和歌山、広島などには伝わっているようだけど。

神戸で野球カステラが誕生したのは今から100年も前の明治時代のこと。
いわゆる一口カステラ、ベビーカステラと呼ばれる類いで、野菜の形をしたものはすでにあったが、これからは野球だ!と型を変えたらしい。
明治5年に日本に野球が伝わり、以来横浜のチームと対抗戦を開くなど野球熱が盛んだった神戸ならではの着想といえる。

神戸では開港以来、卵の風味たっぷりの瓦煎餅が名物で、市内に多くの店があったため、同材料で作れる野球カステラはまたたく間に広まったという。
最盛期には市内100軒を超す店で手焼きされたというが、型が重いこともあり、高齢化が進む今では10軒もないという。
道理で最近あまり見かけなくなっていたわけだ。

子どもの頃を思い起こしながら、野球カステラをほおばる。
しっとりとキメの細かな生地は、なんと優しい味なんだろう。
目を閉じれば舶来のワッフルの味にも思え、開港まもなく活況を呈した明治の神戸の空気さえ感じる。

これさえあれば、WBC優勝は間違いない。

(2023/3/14記)

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