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やった! 来月も黒帯!

いつからこんなにも素麺が好きになったのだろう。
僕は無類の素麺好きだ。

あの清涼感。
あの喉ごし。
素麺のない夏は夏ではない。
いや、素麺のない夏はもっとも過酷な夏だ。

しかし、素麺なら何でもいいというわけではない。
いくら島原、小豆島など産地の名を謳っていたとしても、スーパーのプライベートブランドの安い素麺なら食べない方がまし。
なんだこのザラザラの麺は…とまったく受けつけない。
最低でも〈揖保乃糸〉の赤帯。

揖保乃糸とは国内1位の生産量を誇る素麺産地・兵庫の共同ブランド。
兵庫に生まれ、兵庫に育つ僕は、素麺といったらやっぱり揖保乃糸。
揖保乃糸はその等級により麺束に巻かれた帯の色が異なるのだが、赤帯は「上級」を指し、麺の太さ0.70~0.90mmのもの。
上級とはいえ、揖保乃糸の中ではもっとも下の等級だ。

その上の等級「特級」は黒帯で、麺の太さ0.65~0.70mm。
素麺は細いほど等級が上がるが、なんだ赤帯と比べて0.05mm細くなっただけかなどと侮るなかれ、この違いが食感に大きく作用する(らしい)。
選抜された熟練製造者しか作ることを許されず、使用する小麦は赤帯より上質のもの(らしい)。

(らしい)…

悲しいことに、身近なスーパーでは赤帯しか手に入らないのだ。
黒帯は親戚から送られてくるのをただ待つしかないのだが、母も鬼籍に入り父も施設に入った今、親戚からの贈り物など途絶えてしまってない。
ずっと黒帯を探し求めていた。

昨日、月に一度の通院日だった。
3月末に受けた手術から4か月弱。
耳鼻咽喉科で患部の状況を、口腔外科で装具の調整を。

2科の診察は午前、午後にまたがったため、さて合間に昼食。
僕は前から狙っていた病院内のフードコートに行った。
寿司やおにぎり、カフェなどいくつかのキッチンが並ぶなか、僕が目指したのは…

揖保乃糸専門店。
まだできて2か月も経っていない新しい店。
ここで出てくるのは、僕が渇望する黒帯だ。

ツルツルっ!
ツルツルーっ!
5口ほどで食べ終えた。
時間にして1分ほどだろうか。

うまい、のただひとこと。
ふだんうまいうまいと食べている赤帯ですらザラザラだったかもと思わせるほどの黒帯のツルツル具合。
うーん、家には赤帯がいっぱいあるのだけど…
黒帯は次の通院日のお楽しみということで。

耳鼻咽喉科で、経過が順調なので次は来年1月に来てください、と。
今からそんなこと言ったら鬼は大笑いしそうだが、半年も黒帯お預け?と僕は笑えない。
と思ったら口腔外科で、今日また少し調整したので来月また来てくださいね、とかわいい技工士さんがニコッ。
やった! 来月も黒帯!

(2023/7/21記)

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