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こうやってちゃんと包丁で削げばきれいなのか

イワシといえば、安いのに栄養豊富というイメージがある。

ところが過去には不漁が続き、築地でマグロ並みのキロ5500円(1匹換算で1200円!)で取引されたことがあるという。
ふだんはキロ200円ほどというから不漁時の高値には驚くが、それでも買い手がつくほどみんな食べたい魚ともいえる。

そんなイワシをしっかり高級魚として食べられる店がある。
神戸・三宮のイワシ専門店、その名も〈いわし屋〉だ。

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店の外でも中でも、回遊するイワシの群れが出迎えてくれる。

ほどよいライトアップが、入館料を払わないと、という気にさせる。

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イワシの本領発揮、光りものの背をキラキラさせて元気にグルグル泳ぐ。
順次捕らえられてさばかれることを思うと、少しだけ胸が痛む。

神戸で生イワシが食べられるのはこの〈いわし屋〉だけという。
それほどまでに足が早いということだ。
〈いわし屋〉はおそらく特別な仕入ルートを持っているのだろう。

一品目が出てきた。

画像3▲活イワシの造り、ハモの焼き霜造り

中骨にかなり身を残した3枚おろし、いわゆる「大名おろし」だ。
庶民の3枚おろしは包丁を腹側、背側、さらに中骨に沿って入れるが、大名の3枚おろしは腹側からの一刀で背側もおろすので身が残りやすい。
文字では分かりにくいので、イラストを作ってみた。

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イワシは骨離れがいいので、いつも家では手開きで済ませてしまう。
こうやってちゃんと包丁で削げばきれいなのか、と今さらながら。

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これはうまい!
通常の大名おろしよりさらに贅沢に、はらわたに触れずにさばいているからか生臭さもなく、脂も乗ってトゥルンといただける。
大名を超えてくるなら、もはや「将軍おろし」と呼ぶしかない。

目が透き通って美しく、瞳は一点の濁りもなくとにかく真っ黒。
さすがさっきまで元気に泳いでいただけのことはある。

刺身を平らげたところで中骨が引き取られ、骨せんべいとなって戻る。
身が多く残していた分、骨せんべいの味わいも増すというものだ。

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頭からかぶりついて、ペロリ。
いや、これはお酒が進む進む進む進む――

イワシ以外のメニューも数多くあるが、〈いわし屋〉に来たからには、イワシで押し通した。

画像6▲つみれ団子の塩焼き

画像7▲あぶりいわしのだし茶漬け

この店、お値段ちょいと高めだが、イワシ好きなら外せない。
庶民の味方をたまには高級魚として食べてみるのもいい。

(2022/2/17記)

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