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政策から3.11を振り返る

今日で東日本大震災から9年ですね。2011年3月11日は、ちょうどオーストラリアに語学留学中でした。ホストファミリーの家から、テレビで津波の様子を観たことを覚えています。

新型肺炎の影響で追悼式がキャンセルされたりしていますが、震災を振り返る機会を逃さないようにしたいと思います。今回は、復興に関する情報を紹介しながら、考えたことを書いていきます。

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1.被災市町村の人口

被災地の特に沿岸部で、人口減少に歯止めがかかっていません。3県の人口が掲載されているサイトより、下記引用します。また、復興庁によると、避難者数は、発災直後の約47万人から2019年約5万人と減ってはきましたが、まだ避難生活を続ける方もいらっしゃいます。

・岩手県の被災12市町村の人口:
 2011年3月震災前27万2,937人⇒2020年2月推計23万2,404人(▲14.9%)
・宮城県の被災15市町の人口:
 2011年3月震災前170万8,458人⇒2020年2月推計169万7,517人(▲0.6%)
・福島県の被災8市町村の人口:
 2011年3月震災前52万2,058人⇒2020年2月49万2,767人(▲5.6%)
 *東京電力福島第一原子力発電所事故の影響が残る7町村で人口推計せず

市町村別の値を見ると、以下の通りです。

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自分のふるさとに帰りたかったが、仕事や子どもの学校などの状況により帰らないという選択をされた方もいらっしゃるでしょう。復興が進まず、スーパーや病院など、生活のインフラが整っていないため、帰れないという方もいるでしょう。

震災前の人口に戻すということは容易ではありません。復興庁によると、災害公営住宅・民間住宅等用宅地の整備は、2019年3月末時点で98%完成とのことでしたが、ハードは進んでいるとして、まちの生業=産業はどうなっているでしょうか。

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2.産業の復旧・復興の状況

復興庁によると、被災3県の製造品出荷額等は、概ね震災前の水準まで回復したようです。一方で、企業に売上の回復状況について、アンケートを取ったところ、業種毎にかなりばらつきがありました。グラフを復興庁資料より引用します。少し見にくいですが、下に行くほど年次が新しくなります。

震災直前水準以上に売上が回復しているという割合が最も高いのは建設業 (74%)、次いで運送業(62%)です。住宅や道路の整備など、ハード先行で復興が進んだことからも理解できますね。ただ、復興が進むにつれて、需要も減ってくると考えられます。

一方、最も低いのは、水産・食品加工業(30%)、次いで旅館・ホテル業 (32%)です。風評などの問題から、食品関係が遅れているのも理解できます。外国人観光客の伸びに支えられ、旅館・ホテル業は回復が進むかと思われましたが、今回の新型肺炎の影響で、再建への遅れは避けられないでしょう。

建設業や運送業以外の業種で再建が進まないと、なかなか人々の暮らしも戻っていかないと考えます。

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3.復興に向けた道のり、復興庁という組織

政府は「復興・創生期間」を2021年3月までと定めており、残り後1年となっていました。復興庁資料によると、行程表は以下の通りです。復興庁は発災より10年間の設置期限とされていたため、2021年3月末が期限となっていました。

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しかし、ハード面の復興事業の完了後も、生活支援、医療や心身のケア、コミュニティの再生などの課題を担当するよう希望する声が多くありました。

これを踏まえ、政府は3月3日の閣議で、復興庁の設置期限を10年間延長(2031年まで)、「復興庁設置法」や「福島復興再生特別措置法」など、復興に関連する5つの法律の改正案を決定した、と報道がありました。今国会で改正案の成立を目指すそうです。

復興庁が時限的組織であることの課題として、「参議院常任委員会調査室・特別調査室」の資料では、

・元々復興事業の立案から実施までを全般的に担う省庁となるはずが、事業権限を譲りたくない他省庁の抵抗で崩れ、省庁間の調整や復興交付金の配分などに業務が 限定されており、司令塔として十分に機能を果たしているか疑問視されている
・2年単位の人事異動を繰り返す霞が関で、復興庁が「被災自治体のお財布」 ではなく、本当に「復興の司令塔」になれるのか

という指摘を新聞記事から引用していますが、まさに政策立案・実行力が試されているといえます。このような指摘はありますが、復興庁には頑張っていただきたく思います。

なお、福島県については、原子力発電所の事故もあり、特殊な状況にあることから、「福島12市町村将来像提言フォローアップ会議」にて、踏み込んで将来像の検討がされています。取組みの骨子を引用します。

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スローガンはできあがっています。後は、誰がどのように担っていくのか、が大切だと思います。香港駐在前の業務では、福島の復興のご支援も微力ながらさせて頂いていたこともあり、復興が順調に進むことを祈念致します。

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政策だけだと、なかなか現場の様子が浮かんできませんね。駐在前は、私も毎月訪問をしていた時期がありました。2019年は日本を離れていたので、ほとんど関われませんでしたが、また、東北を訪れたいと思います。

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P.S. 日経に、新聞記者が見た「3.11」思い新たに、という記事があり、写真や当時の手記が生々しく紹介されていました。よかったら、こちらもご覧ください↓


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