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今を生きる全ての大人が観るべしぞよ!「コタローは1人暮らし」

昨年ネトフリで配信された「コタローは1人暮らし」アニメ
原作は津村マミさんの漫画
現在BS11でやっているのを数回観ていて、ちょっと気になっていたので一気に全話観てみました。
関ジャニの横山君主演の実写ドラマ版も、もうすぐ第2シーズンが放送されるらしいですね。

とある事情で『アパートの清水』に一人暮らしをすることになった、
さとうコタロー4歳
腰におもちゃの刀を携え、今日も一人買い物に出かける。
その大人っぽくもあり、幼くもあるコタローの賢明な生き方は、
周りの人に少しずつ影響を与えていく。
両親と過ごせるその日のために、強く生きると決心した4歳児の物語――。

アニメ公式サイトより

4歳児が一人暮らし。そして自分のことを「わらわ」と呼んだり、変な時代劇言葉を話すコタロー

最初、私は、「クレヨンしんちゃん」みたいなちょっと変わった男の子が周りの大人を巻き込んでいくドタバタコメディ的な物語なんだと思って観始めたのですが…

確かに周りの大人を巻き込んで行くし、所々でほのぼのした部分もあるにはあるんだけど、コタローの1人暮らしに至る背景がわかってくると、この物語を覆う陰鬱残酷な面に、ど~んと落ち込むし、次の話が怖くなるし、心がエグられて、自分の幼少期のフラッシュバックも重なって、涙目になり、視界がドンドンぼやけてくる…そんなアニメでした。

今を生きるすべての大人が観ておくべきアニメ

このアニメには、すべての大人が観ておくべき要素が込められています。
それは何かというと、ズバリ、幼児虐待のサインです。

エピソードが進むにつれ明かされていくコタローの背景とは、
DVとネグレクトの過去があるということなんです。
そのトラウマが、コタローのちょっと変わった行動の行動原理になっているのが各エピソードで語られます。

なぜティッシュを大事にするのかとか
なぜ品数の多い食事をするのかとか
なぜゴム手袋を宝物の展示に加えてるのかとか
(理由はアニメを観ててください)

他にも、子供の患者とは診察時間をしっかりとる歯医者さんの話。
虫歯が異常に多い子供はネグレクトされてる可能性が高いからという理由が明かされる。

この話は私自身の経験からも身につまされるエピソードでした。

私も親から歯磨きというものを教えて貰った記憶がありません。
なので虫歯に悩まされることが多かった。幸い、痛みがひどいと歯医者には連れては行ってくれていた。でも乳歯は殆ど虫歯だった気がする。自我の芽生えが早かったおかげで、永久歯に生え変わる頃には自分で歯磨きを覚えてするようになったけど、子供の甘い歯磨きだったせいで、やはり虫歯は多かった。

母親自身も口腔衛生に関して意識が低かったし、子供にそれを教えるという概念自体がない人だった。基本の読み書きも殆ど独学で幼児の時に覚えたし、子供がおやつを貰うというのも友達の家で貰って初めて知った。お小遣いやお年玉、誕生日プレゼント、クリスマスという存在も、友達の話や借りた漫画なんかで存在を知って、自分から親に主張して初めて貰えるようになった。子供心に言いたくなかったけど「○○さんの家では○○してもらってるから~」って言ってた。「よそはよそ!」とは言われるけど、食い下がって勝ち取って行った。

とにかく最低限生かしておけばいいんでしょ?という感じのスタンスだった。”甘やかしたらつけ上がる”という考えが強かった時代もあるけど、アンタなんか欲しくなかった。橋の下から拾ってきた。養育義務期間が済んだらサッサと出て行ってくれ。この辺はず~っと言われ続けていた。まあ昭和あるあるでもあるけど。

食事も美味しいものを食べさせてあげようと頑張ることはほぼ無かった。
なんかワカラン、味の無い炒めものとか、味の濃すぎる煮物、火が通り切っていない唐揚げや揚げ物、他は出来合いのものを買ってくることが8割ぐらいを占めていた。
冷蔵庫の中には年単位で賞味期限が切れたもので溢れていたし、野菜室の底にはグズグズに腐った野菜や干からびた野菜が埋もれていた。
そういうの非衛生的な環境が気持ち悪い。食べるときに連想し、それで美味しくないと言えばキレられるので、小学生高学年くらいからは自分でオムライスぐらいは作れるようになっていた。自己防衛だった。

そしてタチが悪いのは、私が我慢できずに整理や掃除すると母親の機嫌が悪くなる。ダメ親と指摘されてるようで腹立たしかったんでしょう。
それでも気持ち悪いので無視して掃除しても、1週間もかからずに、またグチャグチャにする。当てつけみたいに。

まな板も漂白なんてすることを知らないから、汚いシミがいつも付いていた。子供だということもあっただろうけど、母親の作ったご飯を食べていた期間はズ~っとお腹が緩くて苦労した。しかし家を出て自炊するようになって、全ての衛生管理もするようになると、それはピタッと治った。

3歳ぐらいの時、都会のターミナル駅に母親と二人、手を引かれて電車に乗って行ったことがある。駅に着いて、ギュウギュウの車内の皆が一斉に降車する。その人ごみの中で、母親に繋いでいた手を離され、はぐれてから一人でホームでしばらく泣いていたのを憶えている。

しばらくしてから母親は戻ってきたけど、あの時の不安なザワザワする感じ、見知らぬ土地に取り残された恐怖は、未だに夢で経験したり、ふとした時にフラッシュバックして心が落ち着かなくなる

もう母親がいないので真相はわかりません。
育児ノイローゼだったのか、単に不可抗力で手が離れてしまったのか…。
でも再会した時に「あ~よかった~」ではなく、「何してるの!」と叱咤された。臆病でいつも母親のスカートの端を掴んでいるようだった私は、あの時、知らない大人に囲まれて怖かったのを覚えている。だから自分から手を離した記憶はない…「お前こそ子供の手を離して何してるの?」と子供心にうっすら思ったのは憶えている。

私の環境はネグレクトと認定できるものではないとは思う。
しかし、あと少し何か歯車が狂っていたら、すぐネグレクト状態に転落していたであろうボーダーラインのちょっと上ぐらいのところにはいた気がする。

そして、この愛されなかった、関心、興味を持たれなかったということが、やはり自分の自己肯定感の無さ自尊心の低さに繋がっており、ずっと燻って影を落としている。

さらに嫌になるのが、ここ最近までそんな母親のことをず~っと憎く思っていたということ。「母親なのに」という意識が私を支配していたから。つまり毒親思想

この「母親なのに」
最近話題になった本「母親になって後悔してる」でも述べられていますが、

まさしく家父長制が押し付ける母親像。それを私も自分の母親に押し付けて、それが出来なかった母親を憎んでいたんです。

でも今ならわかります。女性全員が母親になりたいわけじゃない。女性全員が母性を持つわけでもない。女性全員が子供の為、家族の為に奉仕するのが好きなわけじゃない。愛情深くて献身的な母親像、それは刷り込まれた幻想でしかないのだということを。

家父長制が掲げる理想の母親像。それに当て嵌まることを要求してくる圧力。無理して結婚して、子供を作り、何処か破綻しながら生きていき、結果子供からも憎まれる。私の母親も家父長制の犠牲者の1人だったんだと、今ならわかる。今なら彼女なりに頑張ったことを労えることも出来たかもしれない。もう無理だけど…。

結局、今現在、DVやネグレクトの幼児虐待がこれほど社会問題になってる根っこには、やはりこの日本に根強く蔓延っている家父長制度が要因の一つなのは間違いないだろう。女や子供を家に閉じ込める家父長制。どうにかもっと風通しのいい社会にしていかない限り、幼児虐待は中々無くならないのではないだろうか。

90年代、まだ日本で幼児虐待が社会問題として取り上げられることは殆どなかった時代。私は海外で少し勉強していて、興味のあるテーマを調べて発表するという課題がありました。たまたま図書館で幼児虐待についての本を見つけたので、それをテーマにする為、数冊の本を読んだ記憶があります。

読んでいて想像するのもおぞましい虐待の数々、例えば父親などからの性的虐待のせいで、肛門の筋肉が壊れて、まともな排便が出来なくなった子供の話とか…。

そういう本を読んでる時に、「ネグレクト」という言葉、概念を知って、ある意味目からウロコでした。能動的虐待ではなく、何もしないという虐待。
こういうのは日本ではまだ語られていないだけで、実はいっぱいあるのでは?実際自分の家もこの傾向があったし、そのうち社会問題化する気がして、心がザワザワしたのを憶えています。

そこから10年ぐらいして、2000年代後半ぐらいから、やはり日本でも徐々に幼児虐待、DV、そしてネグレクトも取り上げられるようになりました。

いまだに痣が見つかっていても助けられない子供のニュースが流れる中、ネグレクトまで発見するのはまだまだハードルが高い、そんな残念な社会であるのが現状なのかもしれません。

だからこそ、「コタローは1人暮らし」のようなアニメを大人こそが観て、少しでもそのサインに気が付けるようになって欲しい
何か変わった行動、言動をする子どもには、その裏に、やはりその行動原理があるはずなので。
そして何かしらのアクションを取りやすい世の中になってくれればと願うばかりです。いや、していかないといけませんね。

アニメの中で、縦線の変な瞳のコタローw。いつもはその瞳に光がない
しかし時々輝くことがある。そんな子供たちのワクワク、瞳の中の輝きを、無くさなくて済む社会をどうにか作りたい、いや、作らないと!と思わせてくれるアニメでもあります。

なので最後にもう一度。
アニメでも、原作漫画でも、横山君の実写ドラマでも良いから、

「コタローは1人暮らし」観てください!!


追記:虐待やネグレクトのサインが載っているリンクを載せておきます。

東京都の児童相談センターの幼児虐待についてのページ

芦屋市の幼児虐待についてのページ

でも、一般的なもの過ぎて、もっと「コタローは1人暮らし」で語られていたようなものまで網羅しているサイト、また見つけたら追加したいと思います。

「コタローは1人暮らし」のエピソードで、いつも服が汚れている(これはよく聞く)。知らない部屋のピンポンを何度も鳴らす。家に入れると長時間居ようとする。なんてエピソードもありました。この辺りもネグレクトのサインだったりするようです。

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