「不良」との再会:社会学者はやくざな商売

 あれは1ヶ月前のことだろうか。近所の公園でタトゥー入った上半身を裸にして、アウトドアチェアにどかっと座り肌を焼いている「不良」がいた。私は正直少し恐かったが、あいさつをしてお話をした。社会学者はとにかく変わったひとから話を聞くのが好きなものだ(たぶん)。

 「不良」と書いたが立派な大人だ。たぶん30代後半だったと思う。大阪だけでなく、神戸や四国や各地を転々として、いまは私の近所に住んでいるようだ。「不良」というのは悪い意味で使っているのではなく、とにかく破天荒なやんちゃなひとという意味で使っている。私にはできない生き方なので、尊敬している。私は大学院から20年余、同じテーマを研究し、同じひとから同じ満洲体験の話を聞き続けてきた。それだけに、「不良」の飲食店何店舗も経営していたかと思えば、さくっと畳んで四国に移住するといったさばさばした生き方には、ある種憧れてしまう。

 その「不良」と15時頃に道でばったり出会った。「先生、夕飯食べよう」と言われて断る理由もなかったので、「はい」と答えたら、18時頃に電話があった。二人で自転車で長田の「居心伝」に出て、私のおごりで飲むことになった(本当は昨日の海ぼうしに行きたかったが、まだ開店していなかった)。

 とにかくアンダーグラウンドな話ばかりで、正直ここでは書けないのがとても残念だ。でも社会学者としてリアルなことはよく分かる。神戸のモデルの子と付き合っていた話は心底羨ましかった。決して突出したハンサムではない(失礼)が、誰からも好かれる話術というか、性格をもっている。私も彼が大好きだ。

 新型コロナのせいでいまは失業中という。ぜひこの近辺でよいお仕事を見付けて、しばらく近所に住んでいてほしい。ただ、彼曰く「ここは1年だけ。今度は福岡に移る。なぜなら鹿児島に家買ってあるから」と。まさに遊牧民だ。

 一方の私は早く新型コロナが収まって、岐阜の調査対象地(農村)にまた顔を出したいと思っている。自分は彼と比べれば、農耕民に近いと思うが、それでも岐阜に行きたいと思っている時点で、遊牧民もまじっているのだろう。ただ、いまは大都市大阪から岐阜の農村にお邪魔したら、こわがられるだけなので、ぐっとこらえてやめておく。無症状感染者かも知れないし。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?